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第15回:あるマンションでの管理費横領事件

 そのマンションは20数戸の小規模なマンションです。毎年5名の居住者
が輪番で理事会の役員を担当することになっており、その輪番表は総会で承
認されていました。総人数が少ないため数年に1度役員の順番が回ってきます
が、役員の担当決めについて、妙な慣習がありました。それは、「過去に理
事長または会計担当を経験したことのある役員は、再度引き受けなくてもよ
い」というものです。それだけこれらの役割は大変だとの認識があったよう
です。
 ある年、役員交替時期を迎えましたが、その慣習により経験者が理事長と
会計担当の引き受けを拒みました。その結果、居住1年足らずの主婦が仕方な
く理事長を務めることになり、居住暦の長い甲が会計担当を務めることにな
りました。
 マンション居住を始めたばかりである理事長は管理組合のことは何も分か
らず、自称「会計の専門家」の甲にまかせっきりでした。誰の目もないこと
をいいことに、甲は、「会計処理の円滑化のため」と称して管理組合名義の
銀行預金口座のキャッシュカードを作り、好き勝手なことを始めました。監
事担当役員は、普段は何かと面倒見のよい甲を疑わず、関係書類・預金通帳
の確認を行いませんでした。
 次年度役員になる予定だった乙は、事前準備のために管理組合や理事会に
ついて勉強していく中で、現理事会の運営や会計処理がずさんであることに
気づきました。乙はそのことを理事会に再三指摘しましたが、改善される様
子はありませんでした。
 年度が明けて役員になると、乙は監事を引受けました。そして、会計内容
を細かく調べ、ついに甲が管理費を横領していたことをつきとめました。
 事件が表沙汰になると、甲は横領を認めましたが、「返済する気持ちはあ
るが現実的に返す金がない」などと開き直っていました。しかし、家の所有
が同居する息子との共有であることに着目し、「息子ともども横領で訴える」
と理事会が伝えると、さすがの甲も狼狽しました。結局、息子と二人で総会
の場で全組合員に謝罪するとともに、息子を連帯保証人として横領金を管理
組合に返済していくことになりました。返済は現在も滞りなく続いていると
のことです。

また、この事件を契機に管理組合も変わりました。理事会の諮問機関とし

て事務改善委員会が設置され、会計監査の厳格化や役員輪番制の見直し、そ
して「妙な慣習」の撤廃などについて真剣に検討しているそうです。
 マンション管理組合が適切に運営されるためには、やはり、無関心や人任
せ、曖昧さは禁物です。あなたのマンションには「妙な慣習」はありません
か?
  
 
       NPO日本住宅管理組合協議会 埼玉県支部長 柿沼英雄
                                      (08/03/14)



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