平成31年4月26日に国土交通省から発表された「平成30年度マンション総合調査」(=5年ごと実施)で以下の結果が報告されています。
1.マンション居住の状況
①世帯主の年齢
前回調査と比較すると70歳代以上の割合が増加する一方、30歳代以下の割合が減少している。完成年次別内訳をみると、完成年次が古いマンションほど70歳代以上の割合が高くなっており、昭和54年以前のマンションの70歳代以上の割合は47.2%となっている。
②賃貸戸数割合
前回調査と比較すると、賃貸住戸のあるマンションの割合は減少しており、74.7%となっている。完成年次別内訳をみると、完成年次が古いマンションほど賃貸戸数割合が20%超のマンションの割合が高くなる傾向がある。
③空室戸数割合
25年度と30年度を比較すると、空室があるマンションの割合は37.3%に減少しており、完成年次別内訳をみると、完成年次が古いマンションほど空室があるマンションの割合が高くなる傾向がある。
④永住意識
「永住するつもりである。」は前回52.4%から過去最高の62.8%へと増加した。25年前調査31.0%の倍増となった。
2.マンション管理の状況
①長期修繕計画の作成
25年度と30年度を比較すると、長期修繕計画を作成している管理組合の割合は1.9%増加し、90.9%となっている。
②25年以上の長期修繕計画に基づき修繕積立金の額を設定している割合
計画期間25年以上の長期修繕計画に基づき修繕積立金の額を算出している管理組合の割合は、7.6%増加し、53.6%となっている。
③月/戸当たり修繕積立金の額
25年度と30年度を比較すると、月/戸当たりの修繕積立金の額、駐車場使用料等からの充当額を含む修繕積立金の総額ともに増加し、月/戸当たりの修繕積立金の額の平均は 11,243円、駐車場使用料等からの充当額を含む修繕積立金の総額の平均12,268円となっている。
④修繕積立金の積立状況
計画上の修繕積立金の積立額と現在の修繕積立金の積立額の差は、現在の積立額が計画に比べて不足しているマンションが34.8%を占めている。そのうち、不足の割合が20%超のマンションが15.5%になっている。
⑤長期修繕計画の見直し時期
長期修繕計画の見直し時期は、「5年ごとを目安に定期的に見直している」が56.3%「修繕工事実施直前に見直しを行っている」が12.5%、「修繕工事実施直後に見直しを行っている」が10.1%となっている。一方、見直しを行っていない割合は、5.7%となっている。
⑥耐震診断・耐震改修の実施状況
旧耐震基準に基づき建設されたマンションのうち耐震診断を行ったマンションは34.0%となっており、そのうち「耐震性があると判断された」割合は40.8%であった。また、「耐震性がないと判断された」マンションのうち、「耐震改修を実施する予定はない」と回答した割合は38.1%にのぼった。
⑦マンションの老朽化問題についての対策
マンションの老朽化問題についての対策の議論を行い、建替え等又は修繕・改修の方向性が出た管理組合は21.9%となっている。一方、議論は行ったが方向性が出ていない管理組合は16.6%、議論を行っていない管理組合の割合は、56.3%であった。
3.管理組合の運営等
①管理者の選任
管理者の選任状況は、87.6%が区分所有者の管理組合の代表者(理事長)であり、区分所有者以外の第三者が管理者となっているマンションは6.4%となっている。
②専門家の活用状況
専門家を活用しているマンションは41.8%であり、活用した専門家は、建築士が15.6%と最も多く、次いで弁護士が15.2%、マンション管理士が13.0%となっている。
③専門家の選任理由、選任形式
専門家を選任している理由としては、大規模修繕等の実施が43.3%と最も多く、次いで知識・ノウハウの不足が33.9%、管理費等の滞納への法的措置が32.0%となっている。また、選任形式は、単発のコンサルティング業務が61.2%と最も多く、次いで顧問業務が20.4%、外部役員の就任(理事会役員等)は4.1%であった。
④外部役員を選任する意向・理由
外部役員の選任意向は、検討している又は将来必要となれば検討したい意向をもつ管理組合が28.3%となった。必要がないので検討しないが44.2%、分からない24.8%であった。検討理由は、区分所有者の高齢化が37.6%、次いで役員のなり手不足が36.5%であった。
⑤大規模災害への対応状況
25年度と30年度を比較すると、30年度で「定期的に防災訓練を実施している」、及び「災害時の避難場所を周知している」と回答した管理組合は、25年度よりも5%以上増加している。また、30年度で「特に何もしていない」と回答した管理組合は23.4%であり、25年度よりも6%近く減少している。
⑥トラブルの発生状況
25年度と30年度を比較すると、特にトラブルがないマンションは23.2%に減少しており何らかのトラブルを抱えているマンションが増えている。発生したトラブルについては、居住者間のマナーをめぐるトラブルが55.9%と最も多く、次いで建物の不具合に係るトラブルが 31.1%、費用負担に係るトラブルが25.5%となっている。
⑦居住者間のマナーをめぐるトラブルの具体的な内容
30年度は、生活音が38.0%と最も多く、次いで違法駐車・違法駐輪が28.1%、ペット飼育が18.1%となっている。
⑧管理費等の滞納戸数割合
平成25年度と30年度を比較すると、管理費等の滞納が発生しているマンションの割合は減少しており、滞納が発生していないマンションは62.7%となっている。また、完成年次別に見た滞納戸数割合は、築年数が深いほど滞納が発生しているマンションの割合が高くなる傾向がある。
⑨トラブルの処理方法
30年度は、管理組合内で話し合ったが58.9%最も多く、次いでマンション管理業者に相談したが46.5%、当事者間で話し合った19.4%となっている。
以上のマンションの居住の状況、管理の状況、管理組合の運営に関する23項目の調査結果をグラフ化し、理解し易くした資料をセミナーのレジュメとしました。
添付資料とし掲載しましたのでご利用ください。
NPO法人 埼玉マンション管理支援センター
◆【添付資料】 「平成30年度マンション総合調査結果からみたマンションの居住と管理の現状」 国土交通省 住宅局 平成31年4月26日公表
初めて分譲マンションを購入して住まわれた方。はじめて理事を引き受けられた方などを対象に、マンション管理の基本的なもの及びマンション管理に関して、区分所有の役割と重要性について、説明してまいります。
マンションを購入して区分所有者になると、自動的に管理組合の一員となり、マンションを所有している限り、勝手に組合から抜け出ることはできません。管理組合とは、区分所有法により定められております。
区分所有法(第3条)、「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び付属施設の管理を行うための団体を構成し、集会を開き、規約を定め、及び管理者(理事長)を置くことができる。」とのことが法律により定められております。
マンションの管理は管理組合が行いますが、組合員全員で行うには時間的なロスも多く、非現実的です。そこで組合員の代表者が、日常の業務を行います。この代表者の集まりが理事会(役員会)です。
理事会では、管理組合を代表して、収支予算案の作成、建物・設備の管理、長期修繕計画の立案と実行などを行いますが、それらの実務は管理会社に委託している管理組合がほとんどです。理事会の仕事は、管理会社がこれらの管理業務を適正に行っているか、チェックすることが中心です。「手抜き工事はないか」「費用は高くないか」「組合員からの不満はないか」などを厳しい目でチェックします。
理事会では、日常的なトラブルから年間の収支まで、さまざまな事案が話し合われます。もし理事会が長期間開かれないと、資産の管理や管理費・修繕積立金の未納などの重要事項も、長い間チェックできなくなります。また、住民からのクレームが出たときには素早く対応する必要があるので、できれば1か月に1回、年に10回以上は理事会を開くことが望まれます。
「管理規約」は管理組合の組合員が、快適にかつ安全に生活するために、お互いに守ることを約束したルールです。一般には国土交通省が公表している「マンション標準管理規約」をベースにし、それぞれのマンションの事情などを加味して、作成されたり改正されたりします。
内容は、「区分所有法」という法律を核にして、建物の共有部分・専有部分の範囲、費用の負担、管理組合の業務、理事の役割や職務などを定めたものです。マンションの管理や運営を行う上で守らなければならない基本的な約束事です。理事会は、管理規約をもとに、区分所有者の要望や苦情などに対処します。
「使用細則」は、管理規約に基づいて決められる。共同生活をおくるうえでの細かいルールです。暮らしやすい環境をつくり、お互いに迷惑をかけず、トラブルにならないよう防ぐもので、規約を補う役割があります。ごみの分別やペット飼育、放置自転車などについて、マンションの事情により細かく決められています。
管理規約と使用細則は、区分所有者だけでなく、同居人や賃借人も守らなければならない義務となっています。
総会の開催(区分所有法34条)
普通決議(事案例)
・前年度の会計報告と事業報告の承認
・今年度の収支予算案と事業計画の承認
・大規模修繕工事の施工
・管理費・修繕積立金の決定
・管理委託契約の更新
・今年度の役員選任などがあります。
特別決議(事案例)
・管理規約の設定、変更及び廃止
・管理組合法人の設立及び解散
・共用部分の敷地や付属施設の変更
・共同の利益に反する行為に対する専有部分の使用禁止、区分所有権の競売、専有部分の引き渡し請求
・建て替え決議などがあります。
管理費と修繕積立金
管理費とは、マンションの日常の管理に使われる費用で、共用部分の水道光熱や諸設備の保守・点検費用などです。管理会社に管理を委託している場合は、管理委託費も含まれます。
修繕積立金は、分譲マンション独自の積立金で、建物の老朽化を防ぐために外壁表面の塗装や防水などの大規模修繕工事を行うための積立金です。建物の規模にもよりますが、大規模修繕工事は数千万円から数億円かかることもあり、一度に支払うと負担が大きくなるために、費用を積み立てることを目的としています。
マンション管理に関する法律
・区分所有法
・マンション管理適正化法
・マンション建替円滑化法
・宅地建物取引業法
・住宅品質確保推進法
・建築基準法 など
マンション管理に関して必要な、基本的な知識を説明して参りました。皆様が住まわれているマンションは大事な生活の場であり、貴重な財産です。その割には日頃の仕事や生活に追われて、管理や運営を「他人任せ」にしがちです。マンションの運営は、委託している管理会社や特定の区分所有者にお任せするのではなく、自己の生活や財産は自らが守という意識を持って、マンションの管理運営を行うことが大切です。あなたやあなたの家族が暮らすマンションを守るため、このセミナー「マンションライフを快適に」がお役立ちになれば幸いです。
一般社団法人埼玉県マンション管理士会
その施策として民泊サービスの法整備、宿泊施設不足の解消及び多様なニーズに合わせた宿泊施設の提供を推進していくことが盛り込まれています。
民泊サービスの法整備として、平成30年6月15日に、居住用マンションなどでの民泊サービスを提供する「住宅宿泊事業法」が施行されました。
大規模修繕工事の失敗事例から学ぶ
本資料は平成30年10月27日 川口総合文化センターで行われましたマンション管理基礎セミナーの第二部「大規模修繕工事の失敗事例から学ぶ」で配布されたものです。
【平成23年4月 国土交通省 マンションの修繕積立金に関するガイドライン】(ページ1)
一般的な長期修繕計画はマンションの修繕積立金に関するガイドラインに基づき計画期間は分譲当初は築30年まで、5年後からは25年間以上とし、修繕積立金は段階増額方式が採用されています。しかし、現実をみれば年収の横ばい、年金減額、消費税増税などにより実質手取りは減少している最中、区分所有者は修繕積立金の段階増額を容易に受け入れることは難しいです。
給排水設備の劣化診断
給排水設備は、皆さんの生活に欠かせない設備です。
近年、高経年マンションが増える中で、大規模修繕工事と同様、給排水設備の改修工事の需要も多くなっています。
一般的に大規模修繕工事は、築年数若しくは前回工事からの経過年数を基に修繕工事の計画を立て、個々のマンション事情に合わせて工事を実施しているものが多いと思われます。給排水設備は建物によって、使用している管材料、水質、施工品質、配管環境、その他により劣化速度が異なります。
長命化によって長く保たせてもいずれ終末を迎えます。いずれにしても、その時までに大切なのはビジョンを持ち、マンションをどのようにすべきなのか、ありたい姿はどのようなものなのかについて、みんなで決めておくことが大事です。
~ご存知ですか?マンションに暮らす"リスク"と"保険"の大切さ~
昨今、耐震偽装が忘れ去られようとしていた矢先に、大手不動産会社が都心で販売した億ションが入居直前になって、構造上の欠陥が内部告発により発覚し全戸解約となり、また横浜の団地では杭の施工偽装で1棟が傾き、全棟建替えとなるなどマンション購入のリスクがマスコミで取り上げられると共に、マンションにおける居住者と建物の“2つの老い”のリスクを基調とする「2020年問題」や「2025年問題」がクローズアップされています。
マンションの防災対策
(副題:管理組合の取組方)
地震調査研究推進新本部の発表によると2014年から30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる地域で首都圏は高い確率になっています。地震発生の正確な予測は難しいのが現状ですが、地震に対する心構えとある程度の防災備品を揃えておくことは、マンションの住民、ならびに地域の住民にとっては大事なことです。
平成25年度マンション総合調査から
=進む「二つの老い」とマンション管理の新たな課題=
この総合調査は国土交通省が、マンション管理適正化への今までの施策の検証と今後への対応のための基礎的資料収集を目的に約5年毎に実施するもので、今回で7回目となる。
大規模修繕工事の失敗に学ぶ
本資料は平成26年11月29日 川口総合文化センターで行われましたマンション管理基礎セミナーの第二部「大規模修繕工事の失敗に学ぶ」で配布されたレジュメです。
セミナーは国土交通省が5年ごとに行うマンション総合調査の結果の中から、直近の平成25年4月発表の資料「建物問題」を取り上げ、その原因と対策について行いました。以下はその概要となります。(マンション総合調査結果は国土交通省のHPに掲載されています。)
第1回目の大規模修繕次第で、トータルコストはこんなに削減できる
第1回目の大規模修繕⼯事を如何に賢く⾏うことにより、2回目以降の⼯事費を削減し、マンションの生涯修繕コストを大幅に削減する方法をご提案。
マンションの管理組合における高齢化対策
最新の発表によれば、65歳以上の高齢者は日本人の4人に1人の割合となって、今、マンションは、“二つの老い”という現実に向き合わなければなりません。一つは建物や設備の経年であり、もう一つは、居住者の高齢化です。
マンション管理をこうして見直す
1.区分所有法及び管理規約の理解を!
マンションを購入した人は全員、区分所有法第3条により管理を行う組織(管理組合)に自動的に所属することになります。そして法第3条では、その組織は、建物とその敷地及び付属施設の管理を行うための団体と目的は限定的に規定されています。
高齢者が安心して住めるマンションを考える
平成24 年11 月10 日( 土)に所沢市役所で行われた、埼玉県住宅課主催「マンション管理基礎セミナー」のテーマ1「高齢者が安心して住めるマンションを考える」のビジュアル資料(PowerPoint ファイル)とレジュメ(Word ファイル)を合体したものです。
大規模修繕工事の失敗に学ぶ
大規模修繕工事を失敗したと思う複数の管理組合の調査をすると、つくられたものの失敗は工事業者または設計コンサルタント(管理会社他)によりますが、主因は管理組合(理事会や修繕委員会)の大規模修繕工事を計画予算(長期修繕計画の算出額)内で賄いたいという要望にあるようです。
管理組合役員のための手引き
知っておきたいマンション管理5つのポイント
マンションは何年もつか?
長期修繕計画における資金不足の対応方策