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TOP : 第99回 「理事会で理事長解任可能」最高裁判決に想う
 投稿日時: 2018-10-10 (22 ヒット)
 昨年(2017年)12月18日、最高裁が「理事会で理事長職を解任可能」とのマンション管理組合の運営上、重要な判決を出したことは、ご承知のとおりです。

 区分所有法の第25条第1項は、「区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によつて、管理者を選任し、又は解任することができる。」と規定しております。

 また、国土交通省の「マンション標準管理規約」(以下「標準規約」という。)は、第35条第2項で「理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する」、第3項で「理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事のうちから、理事会で選任する」と規定しております。

 区分所有法では、管理者(≒理事長)の解任について規定しておりますが、標準規約では理事長の解任には触れておりません。

 
訴訟になったマンションの管理規約は標準規約に準拠しておりますが、今回、最高裁は「理事長を理事の互選で選んでいるので、理事会の決議で理事長職を解任できる」という判決を出しました。この判決は、当然であるとの見解が一般的のようですが、「いったん選任された理事長職を理事会決議で解任することを予定されてはいないのでこの理事会決議を無効」とした地裁及び高裁の判決を支持する見解もあります。
 また、最高裁が、原審が認定した総会・理事会の無効判断について法令違反を認め、理事会手続の瑕疵の有無などについての審理を高裁に差し戻したこともあり、その審理結果が待たれます。

 この判決の詳細については、(公財)マン管センターの『月刊マンション管理センター通信』2018年2月号及び2018年3月号等に掲載されているので、そちらをご参照ください。

【事例紹介】
 私の住むマンション管理組合(団地)の管理規約及び10年くらい前に起きた理事長解任紛争を紹介し、皆様のマンションの今後の管理運営の参考に供したいと思います。
 先ずは、当団地の管理規約ですが、理事長の選任は、標準規約とは異なり、理事の互選ではなく、団地総会で選任することになっています。これは、理事長は対内外的に管理組合を代表することから、理事の互選で決める会計や修繕等の担当理事とは役割が大きく異なること、又理事長は区分所有者を始めとする全居住者に周知することが必要不可欠との考えによるものです。
 総会の議案書及び議事録は全戸配布に対し、理事会の議事録は掲示のみのため、全組合員等への周知が難しいことを考慮してのことでもあります。
 どのように管理規約で規定するかは、それぞれの管理組合の事情により決めることですが、マンションの売主が標準規約に準じて作成した原始規約を、購入者全員が無批判に承認の署名・捺印をしており、その後も見直しがほとんど行われていないのが実態ですので、これまでも、これからも標準規約に準じていることによるトラブルは少なくないように思います。標準規約の功罪については、別の機会にお話したいと思いますが、これまでの大きなトラブルとしては、駐車場の専用使用権、開口部の共用部分化、専有部分と共用部分の一体化改修工事、コミュニティ条項や理事会による理事長解任等があり、今後は監事の臨時総会招集権の問題がクローズアップされてくることでしょう。
 次に、当団地の理事長解任紛争ですが、理事会において、ある理事(建物施設担当)から、理事長の独断専横は許し難いとして、理事長解任の緊急動議が出されました。その理事会を傍聴していた方から私の自宅に電話があり、理事長解任の緊急動議が提出、採択されて、審議の結果、休憩後に採決に入ることになったが、このままでは理事長が解任されてしまうので、理事会に至急来て欲しいとのことで、急遽傍聴に加わりました。
 副理事長を議長として、理事会が再開され、議長は、冒頭、傍聴者の発言を禁ずることを宣告されたのですが、私は元理事長として、敢えて発言を求め、「ご承知のように、理事長は、管理規約に基づき総会で選任しており、理事長職を解くためには総会決議が必要ですが、早急に決議するために、理事会の業務規定に、「その他理事会が必要と認めた事項の審議、決定」とあるのを拡大解釈して、理事会で理事長の解任決議をすることは明らかに規約違反です。採決を強行すれば、理事長から規約違反と名誉棄損で訴えられ、損害賠償を請求されることになるでしょう。その覚悟がないのであれば、拙速に採決を急ぐことなく、日を改めて慎重に審議するように。」と要望しました。
 その結果、議論の末に、1週間後に臨時理事会を開催して再審議することになり、その臨時理事会では、大多数の賛同により、「副理事長が理事長を十二分に補佐すること。」で決着しました。
 しかし、訴訟になることは避けられたものの、事はこれで終わらず、動議を出した理事とその動議に積極的に賛同した2名の理事が辞任届を提出し、その後も理事会内の紛糾は、理事長が交代するその年度末まで続きました。
 この紛争から学んだことは、マンションの管理組合の運営上、大事なことは、管理規約の規定の解釈や訴訟による勝ち負けではなく、理事長解任の緊急動議が何故出されたのか、その原因を明らかにし、管理組合運営に活かすことです。
組合員同士の紛争は長年にわたる感情問題が根底にあり、真の解決のためには、紛争の根源を解消する必要がありますが、極めて難しいことです。
 即ち、この事件の概要は、団地内の歩道の全面改修工事を巡り、民主的に住民説明会を開催して住民の意向を十分聞いて改修工事の仕様・費用及び工事時期を決めて行いたい“少数”の理事長派と、住民説明会は行うが聞きおくだけでよく、仕様・費用及び時期は専門委員会と管理会社に全て任せればよいと強力に主張する理事長解任動議を出した“少数”の理事派との1年に亘る争いでした。そして、こういった争いでは、大多数の理事が声の大きい方に引っ張られてしまうのです。
 しかし、年度が変わり、当該の理事長も理事も任期が終わった、理事長派の副理事長が次期理事長になり、住民の意向を十分反映した歩道の改修工事が無事遂行されました。ということになり、結果よければ全て良しと言いたいところですが、この両派の考え方の違いによる確執は団地開設時から度々表面化し、訴訟にまでは至らないものの無益な紛争を繰り返し、水面下では今も続いており、いつの日にかまた別の形で再燃することでしょう。
 この確執(紛争)の解消には、訴訟は役に立たないように思います。なぜなら、裁判は原告の訴え(争点)に対してのみに判断を下すだけですので、紛争の根源を解消することにはなりません。原告が訴えていないところは判断の対象にならないことを念頭において、裁判についての新聞記事等の見出しや概要から即断するのではなく、判決文の全体に目を通して十分理解した上で、活用することが必要です。
 マンション内における紛争の真の解決策を模索していますが、現時点では、「民主的な運営よりも、目立ちたくない・嫌われたくない」と考え、標準規約にあるから、管理会社等は専門家だからと強弁する一部の強烈な存在に安易に加担する大多数の組合員の意識改革が不可欠です。管理組合が取り組むべき課題を提案する場合には、多数決による迅速化よりも、お互いの考え方の差異を認め、少数意見を尊重し、オープンに、民主的な組合運営を行うと共に「説明責任を果たすこと」が重要と考えています。

NPO埼玉マンション管理支援センター 金子吉人

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