人間の日常生活においては、健康であることが何よりも幸せの第一条件であると言えます。それは努力なしでは保持する事はできません。定期的な健康診断を受けて、それぞれの成長過程の段階で躰全体の機能点検を行い、自己検診を繰り返すことによって病気の予防と健康の保持に役立てています。
マンションを人間に例えると柱や壁は骨格や皮膚、設備機器は臓器、配管は血管であると言えます、そしてそれらを総合チェックして、指令する脳機能を司るのが、居住者が構成する管理組合です。このことからマンションは人間と同様に日常の健康管理が不可欠であると理解できると思います。法定点検はもとより、きめ細やかな観察視並びに計画管理と保全修理がマンション建物の寿命を延命する要因となります。
最近のマンション実態調査では、住居の「中継基地点」から「終の棲み家」として意識傾向が色濃く顕れた調査結果が報告されています。これはある意味、居住者の高齢化と比例して建物本体に高齢化を求めていると考えられます。マンション管理適正化法成立時は「管理組合の支援や管理業者との関係等を規定する」法律であるといった意味合いが強く、マンション管理士に求められている業務は、ハード面(建築的な技術面)よりソフト面(法律論的な支援)が多く要請されてきました。
しかし先の調査結果のとおり居住者の意識変化により、老朽化するおそれのあるマンションが増加する事が今後も見込まれ、マンションにおける快適な居住環境の確保と良質な住宅ストックとしての維持保全のためにも、適切なマンション管理が必要であり、それらの役割がマンション管理士に求められてきたと認識しています。確かに、他の士業では専門性が追求されつつあり、その業務の分業化が顕著になっています。しかしマンション管理士の業務は分業化できません。何故なら、居住者の高齢化と建物の高齢化による言わば「限界集落マンション」は、管理不全に陥っている。若しくは、気付かず放置されている状態になって、それらが顕在化と潜在化が絡み合っており、それらを解くにはマンション管理の専門家の登壇が必要となるからです。その不静定な環境を仕分けし整理整頓する役割こそが、マンション管理士の業務になると考えているからです。しかし何故か建築に関わる技術的な諸問題が係わると、それらに対して積極的に参画してくる方が少ないと感じられるのは残念なことです。
東日本大震災以後、ますます管理組合活動の重要性と緊急時の対応能力が求められています。それ故、マンション管理に関する相談領域は拡大する一方です。法理論、技術論、会計監査、コミュニティー、個人の身の上相談へと、これら相談ジャンルを問いません。即ち、コンシェルジュ的な要素を兼ね備えることを、マンション管理士に求められていると言っても過言でありません。管理不全マンションは様々の要因により、その種別に区分されました。その負の区分から脱却する方法を、私達は真摯に向かいましょう。
一般社団法人首都圏マンション管理士会
埼玉県支部 新井 斉
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