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管理組合運営
管理組合運営 : 第10回:マンションの賠償責任保険について
 投稿日時: 2010-01-27 (5546 ヒット)

 入居しているマンションの管理規約には、「区分所有者は、共用部分等に関し、管理組合が火災保険その他の損害保険を締結することを承認する。」と規定されています。ところが、私たちの管理組合では火災保険だけでなく、個人賠償責任も管理組合で契約しています。個人賠償責任保険は区分所有者個人の日常生活における賠償責任を補償するものであり、共用部分等に関し損害保険を締結するものではないため、管理組合が個人賠償責任保険を締結することは規約違反にならないでしょうか。

 また、水漏れ事故が発生し、保険会社から被害者に直接保険金が支払われましたが、実際には被害者は修理をしていません。

 管理規約には「理事長は、前項の契約に基づく保険金額の請求及び受領について、区分所有者を代理する。」と規定されています。従って、保険金は管理組合が受領し、必要な修理金額を管理組合が被害者に支払うべきではないでしょうか。被害額の評価は誰がするのか、保険金の請求方法は被害者が直接保険会社と交渉することはできるのか、修理をしなくとも保険金を受領することはできるのか等賠償保険について教えてください。

■ 一般社団法人埼玉県マンション管理士会の回答
■ 
一般社団法人首都圏マンション管理士会埼玉県支部の回答


【一般社団法人埼玉県マンション管理士会の回答】
 管理組合が契約する損害保険には火災保険の他、施設賠償責任保険、個人賠償責任保険等があります。火災保険については、区分所有者が専有部分の保険に共用部分も含めて個別に契約することもできますが、それぞれが個別に契約すると建物の評価や保険金の受領等で問題があり被災した共用部分等の補修に支障をきたします。そこで、管理組合が一括して契約することにしたものです。又、施設賠償責任保険は共用部分等の所有・使用・管理に起因する賠償事故を補償する保険です。これに対して、個人賠償責任保険は日本国内における個人の日常生活に起因する賠償事故を補償する保険であり、共用部分等とは関係のない保険です。そこで、管理組合が管理費で個人賠償責任保険を契約することが規約違反にならないかという疑問が生じます。


 マンションで生活するといろいろなトラブルが生じます。特に多いのが水漏れ事故です。水漏れ事故のうち共用部分で生じた水漏れ事故は施設賠償責任保険の対象ですが、専有部分で生じた水漏れ事故は個人賠償責任保険の対象になります。専有部分で生じた水漏れ事故で個人賠償責任保険に入っていなかった場合には、当事者の話し合いで解決することになりますが、大変面倒であり、うまく解決できないと人間関係がおかしなことにもなりかねません。そこで、マンションで安心して生活するためには個人賠償責任保険に入ることは必要不可欠です。この場合、管理組合で契約しないで個人で契約することも可能ですが、全員が契約する保証もないため管理組合が一括して契約することにしたと解することが可能でしょう。管理費で契約することは、区分所有者の共同の利益を増進し、良好な住環境を確保することを目的とした支出であり、居住者間のコミュニティ形成に要する費用と解することもできます。


 専有部分で生じた水漏れ事故の場合、加害者である個人が賠償しなければなりませんが、個人賠償責任保険に入っていれば加害者に代わって保険会社が被害者に賠償金を支払ってくれます。被害額の算定は当事者の話し合いで決めるのが原則ですが、実際の被害額より多い金額を決めても保険会社の被害額査定の範囲しか支払いの対象になりませんので保険会社とよく話し合って決めるべきです。又、賠償金が多大になる場合や当事者の話し合いで解決できない場合には直接保険会社に入ってもらい解決するとよいでしょう。又、被害者の方から直接保険会社と交渉することも可能です。いずれにしろ、事故が起きた場合にはすぐに保険会社に連絡して適切な対応をとるべきです。


 ここで問題となるのが、管理規約に「理事長は、前項の契約に基づく保険金額の請求及び受領について、区分所有者を代理する。」と規定されていることです。管理組合が保険料を支払っているのであるから、保険金は管理組合が受領し、必要な修理金額を管理組合が被害者に支払うべきであり、保険会社が被害者に直接支払うのはおかしいのではないかという疑問です。


個人賠償責任保険の被保険者は区分所有者であるため、管理組合が保険料を支払っていても保険金を受領できるということにはなりません。又、この規定は共用部分等の補修を円滑に進めるために規定されたものであり、火災保険の保険金請求の場合に適用され、共用部分等の補修と関係のない個人賠償責任保険には適用されないと解すべきです。

従って、保険会社が保険金額を直接被害者に支払っても何ら問題はなく、被害者は保険金額を受領した以上どう使おうと自由であり、受け取った保険金額で修理しても修理しなくてもいいということになります。
 


【一般社団法人首都圏マンション管理士会埼玉県支部の回答】
1.管理組合が個人賠償責任特約を締結することができるか 

 管理組合向けのマンション総合保険には、専有部分の保険を特約として付保する保険商品が用意されています。保険会社により多少の違いはありますが、概ね、(1)水漏れ原因調査費用、(2)個人賠償責任保険、(3)施設賠償責任保険(専有部分用)などが含まれます。これらをマンション総合保険の特約として管理組合が一括契約すれば、各区分所有者は被害者となっても加害者となっても安心なので、この保険の採用が増加しています。

 このような特約を、管理組合が締結することができるかとのご質問ですが、多くのマンションにおいて、特約部分についても管理組合が保険契約者とされ、管理費からその部分の保険料も支払われていることから、「規約の定めまたは総会の決議があれば可能である」との立場によって運用されているのが一般的であるものと思われます。

 確かに、区分所有法は、共用部分の損害保険と違い専有部分の損害保険については定めを置かず、また、個人賠償責任保険は、区分所有者個人の賠償責任の補償を目的とするものであるため、管理組合が個人賠償責任特約を締結することはできないようにも思われます。

 しかしながら、専有部分からの漏水事故を想定していただくとおわかりいただけますように、専有部分を原因とする事故によって、共用部分等に損害が及び、区分所有者間のトラブルに発展するといった事態も十分想定できます。

 そうすると、ご質問のような特約は、専有部分を原因とする事故により建物等に生じた損害の迅速・円滑な回復と、これを巡る区分所有者間のトラブルの防止をも目的とするものといえるため、規約で定めることができる建物等の管理又は使用に関する区分所有者間の事項にあたると考えることもできそうです(上記の運用は、こうした考え方にもとづくものと推察されます)。

 また、個人賠償特約を管理組合として包括的に加入することについて、区分所有法は規約の形式で定めることを要求していませんので、総会決議によることも可能と考えられます。


2.保険金の請求・受領は誰がするのか

 保険金の請求は、保険約款において、保険契約者または被保険者(保険による補償を受ける者)の通知によるものと定められているのが一般的ですので、保険契約者である管理組合、または被保険者である損害賠償責任を負う者(約款にその範囲が定められています)がすることになります。


保険金の受領については、被保険者が受領権者となりますので、個人賠償責任特約については、損害賠償責任を負う者が保険金の支払いを請求できるということになります(その指示及び了解のもとで、直接被害者や業者に支払われることもあります)。なお、約款に損害賠償請求権者が直接保険金を請求できる旨が規定されている場合には、被害者が保険金の支払いを保険会社に直接請求できます。

 保険契約者である管理組合が保険金を受領する場合もあるようですが、管理組合は、あくまでも法律・規約等に従い区分所有者を代理するにすぎないため、受領権者からの保険金払い渡し請求を拒むことはできませんので、ご注意ください。


3.被害額の評価の方法

 被害額の評価は、損害保険契約締結時の契約内容に従って定められた算定方法に従って評価されることから、理事長又は被害者本人が提出した請求書及び添付資料を下に保険会社が評価します。

 一般に、保険金額の多少により現地調査までするか、書面の審査のみによるのかが異なります。


4.損害の回復に使わない場合でも保険金を受領できるのか


結論から申し上げますと、損害の回復に使わない場合でも保険金を受領できるということになります。


 これは、契約で定められた事故を金銭的に評価して、保険金を支払うというのが保険契約ですので、保険会社が、契約で定められた事故の発生とそれに対する適正額であると認定して保険金を支払った以上、被害者が、それを損害の回復に使うかどうかは法律上問題とならないからです。

 マンション総合保険の個人賠償責任特約部分の保険料が、管理費から支払われている場合に、被害者が保険金を受け取った後にそれを損害の回復に使わないのは不当ではないか、問題視される場合がありますが、管理組合としては「損害を受けている人は誰か」という基準にしたがって処理すれば足り、保険金が実際に損害の回復に使われたかといったことまで、追及する必要はないということになります。
 



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