マンション管理コラムColumn

管理規約

第44回:管理規約の改正にあたっての留意点について

第44回:管理規約の改正にあたっての留意点について

【設問】
私の居住しているマンションは築20年で、管理規約は平成23年版が最新版です。これから、規約委員として、管理規約の改正に取り組みますが、改正についてどのようなことに留意して進めればよろしいでしょうか?また、管理規約に規定出来ることとできない事が有りますか?

【回答団体】
・NPO埼玉マンション管理支援センター
・NPO埼管ネット

 

【NPO埼玉マンション管理支援センターの回答】
1:管理規約について

「管理規約」とは、管理組合の運営の基本となるルールです。
つまり、自分たちのマンションにおいて、区分所有者が快適な居住ができるように、建物・敷地・付属施設などを、適切に管理・運営・維持するために、管理組合の運営のルール及び区分所有者=組合員、居住者、賃借人が守るべきルールや負担すべき費用などを決めたものです。
このマンションのルールを決めるときにその基本となる法律が区分所有法(昭和37年4月施行)です。
【区分所有法の概要】
一棟の建物を区分してその各部分を所有権の目的とする場合の所有関係、その建物及び敷地等の共同管理の方法について定めた法律です。一団の土地に複数の建物が建てられている場合、いわゆる団地の権利関係についても定められています。
【マンション標準管理規約】(昭和57年旧建設省が管理規約作成指針として関係団体等に通達)
多くの住民が一棟の建物を区分所有しているマンションにおいて不可欠なマンションの維持管理や生活の基本ルール(管理規約)の標準モデルとして国土交通省が関係団体等に通知し、公表しているものです。
これを参考に、それぞれのマンションに適した独自のルールを定めることができます。
マンションの管理規約は、運営するマンション「管理組合と区分所有者」との相互の特別の約束(以降「特約」と称す。)です。また、マンション管理の「最高規範」です。
なお、この管理規約は、 マンションに居住する占有者(=賃借人)にも「マンションの共用部分の管理・使用」については、区分所有者と同じように適用されます。
2:管理規約に定めることが出来る事項について

先ほど述べたように、管理規約は、管理組合と区分所有者(管理・使用については賃借人を含む。)の特約です。しかし、特約なので、管理組合の管理・運営・維持するために何でも決めて良い訳では有りません。
管理規約を制定・改正・廃止することには、一定の制約が有ります。
管理規約に規定出来ることは、次のようなことです。
(1):区分所有法の中で「規約で定めることができる」と規定されている事項
(下記「※1」参照)
(2):区分所有法に直接規定されていない建物、敷地、付属施設の管理・使用に関する事項(下記「※2」参照)
(3):区分所有法に規定されている事項の確認的な規定(下記「※3」参照)

※1:個別的な規約事項の例
区分所有法の中で個別に「規約で定めることができる」と規定されている事項
①: (法第4条) ②: (法第5条) ③: (法第22条) ④: (法第14条)、
⑤: (法第11条、第27条ほか) ⑥: (法第15条) ⑦:(法第17条)
⑧: (法第18条) ⑨: (法第11条) ⑩: (法第19条) ⑪:(法第25条)
⑫: (法第26条) ⑬: (法第26条) ⑭: (法第26条) ⑮:(法第33条)
⑯: (法第34条) ⑰: (法第35条) ⑱: (法第35条) ⑲: (法第37条)
⑳: (法第38条) ㉑: (法第39条) ㉒: (法第41条) ㉓:(法第45条)
㉔: (法第49条) ㉕: (法第49条) ㉖: (法第52条) ㉗:(法第56条)
㉙: (法第61条) ㉚: (法第62条)

※2:一般的な規約事項の例

(1):区分所有法の中で直接(具体的な)規定がされていない建物、敷地、付属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項
(2):管理組合の業務運営や理事会の通常業務の大半は、一般的な規約事項として規定されています。

< 建物等の管理に関する事項>
①: 管理組合の業務に関する定め
②: 管理組合の業務の委託等に関する定め
③: マンション管理士など専門知識を有する者の知見の活用に関する定め
④: 管理組合の会計に関する定め
⑤: 管理組合の役員や理事会に関する定め
⑥: その他、建物等を維持管理していくために必要または有益な事項に関する定め

<建物等の使用に関する事項>
①: 専有部分の使用方法(用途・ ぺツト・ 楽器の演奏)の制限等に関する定め
②: 敷地・共用部分の専用使用権や対価に関する定め
③: その他、建物等の使用に関して必要または有益な事項の定め

※3 区分所有法で定めている特別決議の「区分所有者および議決権 」の決議要件は、強行規定で、これと異なる規約は無効となり、区分所有法の規定が適用されることになります。

<区分所有法に特別多数決議が必要と規定されているものの例>

①:(法第31条1項) ②: (第17条1項)③: (第47条1項)及び法第55条2項)
④:(法第58条1項) ⑤:(法第59条1項)
⑥:(法第60条1項) ⑦:(法第61条5項)⑧:(法第62条1項)⑨:(法第68条1項)
⑩:(法第69条5項、7項、法第70条1項)

(注記):(第17条但し書)の「共用部分の変更は、規約で区分所有者の過半数でもよいとされているから」強行規定ではありません。

3: 管理規約に定めても効力が無い事項

管理規約に規定しても効力がないものとしては次のことが考えられます。

(1):管理規約のうち、区分所有法の規定に違反している規約は無効となります。無効となると「区分所有法」の規定が適用されることになります。

例えば、「組合員の権利を奪うような規定」は、 区分所有者間の利害の衡平が図られていない。「法第30条3項」に違反しているので、無効となります。

(2):区分所有法の規定で、「規約に別段の定めをする」ことを認めている規定以外は、原則として強行規定ですから、これらの規定が優先し、違反している管理規約は無効となります。

(3): 管理規約に、一般的な強行規定である、「公序良俗に違反している行為(民法第90条)」や「基本的人権に反する規定」をするとその管理規約は、無効となります。

①:公序良俗に反する規定(民法第90条、第91条)
②:経済の基本秩序に反する行為、暴利行為、自由競争の原理に反する行為など
③:家族の基本的秩序に反する行為
④: 個人の尊厳、男女平等に反する行為
⑤:犯罪に係わる金品を与える行為

(注記)
無効となった管理規約には、区分所有法が適用され、区分所有法に規定がないと、判例、民法などが適用される。

(4):建物又はその敷地若しくは付属施設の管理又は使用のいずれにも該当しない定め

4:管理規約と一般的な細則などについて
管理規約は、「マンションの憲法」と言われていて「基本的なルール」を決めたものですが、具体的なルールや手続きの細部などは、使用細則、別紙・別表、様式などで定めることが出来ます。
しかし、これらの使用細則なども管理規約と同様に、区分所有法等の法令に違反・抵触しないように定めることが必要です。

5:標準管理規約の改正経緯
(1):標準管理規約と区分所有法は、次のように改正されてきております。
法律の整備 標準管理規約の改正
S37年4月 区分所有法の制定
S57年5月 中高層共同住宅標準管理規約の通達
S58年12月 区分所有法の改正
H9年2月 中高層共同住宅標準管理規約の改正
H14年12月 区分所有法の改正
H16年1月 中高層共同住宅標準管理規約の改正
「マンション標準管理規約」へ名称を変更
H23年7月 マンション標準管理規約の改正
H28年3月 マンション標準管理規約の改正
H29年8月 住宅新法 民泊の追加
H29年11月 民泊特区の追加

(2):ご相談内容から見ると、平成23年7月の標準管理規約の改正分までは、盛り込んで有ると思われますので、その後平成28年3月の改正分及び平成29年9月及びの11月の民泊関係の追加について、貴マンションに関係のある部分を取りこんで改正することをお薦め致します。
(これらの改正は、標準管理規約「単棟型」だけでなく、「団地型」及び「複合用途型」についても適用されます。)

(3):平成28年3月の標準管理規約の改正項目
①  外部の専門家の活用(第35条~第41条 別添1など)
②  駐車場の使用方法(第15条関係コメント)
③  専有部分等の修繕等(第17条、第21条、第22条、別添2など)
④  暴力団等の排除規定(第19条の2、第36条の2など)
⑤  災害等の場合の管理組合の意思決定(第21条、第54条など)
⑥  緊急時の理事等の立入り(第23条コメント関係)
⑦ コミュニティ条項等の再整理(第27条、第32条)
⑧  議決権割合の価値割合基準(第46条関係コメント)
⑨  理事会の代理出席 (第53条関係コメント)
⑩  管理費等の滞納に対する措置(第64条、別添4など)
⑪  役員の欠格条項  (第36条の2)
⑫  理事長の定期的な理事会への報告義務(第38条4項)
⑬  監事を筆頭に非常に重くなった役員の責務(第41条など)
⑭  マンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律
(平成26 年法律第80号) の施行等に伴う改正、宇句の修正等
⑮  民泊などに関する追加
平成29年8月30日(2017年)の住宅新法に伴う民泊の追加、
平成29年11月2日(2017年)の民泊特区の追加
(4):最後に、マンションの管理規約、各種の使用細則、別表・様式などは、区分所有法・標準管理規約を参考にして、それぞれのマンションの特性に合わせて制定し、その時々の経済・社会の変化に合わせて改正・追加・削除することをお薦め致します。
また、マンション管理士等の専門的知識を有する者のアドバイスを得ることも考えられます。

NPO 埼玉マンション管理支援センター

 

【NPO埼管ネットの回答】
1 築20 年のマンションで規約改正が行われたのは、平成23年度が最後と言う事ですから、10 年前に規約を改正し、それ以降は行われていないと言う事で宜しいでしょうか。この間に、法律の改正もあり、これに合わせ一部改正はしているものと思われます。
令和元年には「住宅宿泊事業法」が改正になり、これに伴い、多くの分譲マンション管理組合は「区分所有者」に「宿泊事業」や「ウイークリィ」単位での貸室、「シェアルーム」の禁止を規約改正し盛り込まれたことと思います。

2 分譲マンションにおける管理規約は、管理組合にとっての「最高自治規範」であるので、実態に応じて適切且つ必要に応じて改正を行う事が大切です。「規約」は法改正があったり、社会情勢の変化に伴い、時代に適応した見直しを計画的に、建物に居住する方々の良好なコミュニティ形成を図り、住まいのルールを守るために改正することになります。

3 規約改正に付き、管理組合が留意すべき事項
分譲マンションに関する法律では、「建物の区分所有等に関する法律」及び「マンョンの管理の適正化の推進に関する法律」があります。
これは、各区分所有者等(入居者)が共同生活を送る上で、多様な価値観を持った区分所有者間の意思決定の在り方、利用形態の混在による権利、義務関係等、その事情を総合的に考慮し、利害の均衡を図る上で規律を明確にし、共同の利益を守るために規約改定に当たり、留意点として法律に沿ったものでなければなりません。

4 管理組合運営では「規約」を補足する「使用細則」も併設されていると思われます。
折角「規約」改正をするのでしたら、付帯設備としての「細則」改定も時代に合わせた
利用方法も考えて行かなければなりません。
例えば、機械式駐車場等、建築当時は、全機契約があり、駐車場収入もありましたが、近年になり、時代の変化により、車離れ社会となり、空きスペースも増えてくることにより、使用細則を改定し、電気自動車仕様に見直した管理組合もあります。

5 最近多い規約改正事例
(1)ペット(小動物)飼育の禁止の管理組合が、規約改正し、条件付きで「飼育可」に
変更する事例
(2)ベランダでの喫煙を「禁煙」とする事例
(3)役員のなり手不足による定員減、年数の長期化(1年→2年)に改定する事例
(4)役員の選任に関して「現に建物に居住する区分所有者」→単なる「区分所有者」とする事例
(5) コロナ禍により、総会・理事会開催について、「web会議システム」条項を盛り込んだ」事例があります。

6 「規約に規定出来ること、出来ない事があるのか、」の問いに関しては、法令に制限されているものは、規約に設ける事は出来ません。

7 区分所有法上「規約で定める」若しくは「規約で減ずる事が出来る」及び「ただし、規
約に別段の定めがあるときは、この限りでない。」とあった場合は法律に照らし合わせ、規約に定める事が出来ます。
区分所有法第30 条には「建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。」とあります。

8 居住に関しての、建物施設の利用、管理に関しての権利、義務に係わるマンションの資産価値の保全、向上がもたらされる事項について、問題となっている部分があったなら、法律と整合性を諮りながら、社会的背景も考慮し、規約改正されるべきです。
具体例として、管理組合に納入しなければならない項目として、1 管理費 2 修繕積立金、とある事項を、1 管理費、2 修繕積立金3 駐車場維持管理費、と改正することにより、出納口座、保管口座、保管口座2 を駐車場出納とすれば、経理区分も明朗になり、将来的に修繕計画の策定費用として「時期繰越金」に組み入れることが出来ます。

9 改正には、最終的に組合員の合意形成が必要になってきますので、予め、アンケー
ト調査→素案作成→説明会の流れで総会に於いて成立と言う手順になります。
なお、国土交通省より管理組合向けに「マンション標準管理規約」 も発行されていますので、これに照らし合わせ、どの様な処を改正すれば組合運営が効果的に進められるか、などが理解できると思いますので参考にして下さい。
以上

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