マンション管理コラムColumn

管理組合運営

第53回:機械式駐車場の運営

第53回:機械式駐車場の運営

【設問】

機械式駐車場を設置しているマンションは数多くありますが、そのほとんどが駐車場収入を管理費会計に計上していて、駐車場維持費以外の費用に流用しています。

マンションによっては、駐車場収入の30%以上を流用しています。車両の大型化や居住者の高齢化などで空区画が増えており、駐車場収入の減少に拍車がかかっています。近隣の貸駐車場の相場もあり値上げもままなりません。このまま推移すると将来の建替え費用がありません。

機械式駐車場の耐用年数は20~25年とされており、建替え費用は1台当り約100~150万円を要します。つまり建て替工事費用は、大規模修繕工事に匹敵するということです。これが「機械式駐車場は金食い虫」と言われる所以です。

委託している管理会社は、駐車場収入の流用について、把握していますが管理費の不足は管理委託費の値下げ要求を怖れているのか前向きに対応していません。また建て替えは20~25年後であることからこの問題を先送りしているようです。

令和5年4月改定された国交省が発表しました「長期修繕計画作成ガイドライン」によれば、1台当りの修繕費は3段(ピット2段)昇降式で月額5,840円です。使用台数の減少後の金額では建替え費は賄えません。

管理組合にとっても最も重要な懸案事項と思います。しかし高額な費用を要するのに組合員の関心は薄く将来のことは考えていないと思われます。

機械式駐車場の運営について、妙案があれば教示願います。

【回答団体】
・一般社団法人埼玉県マンション管理士会
・NPO日本住宅管理組合協議会

 


【一般社団法人埼玉県マンション管理士会】

1.機械式駐車場の運営(案)

機械式駐車場収入は管理費や修繕積立金と区分して経理してください。

ほとんどのマンションが行っている駐車場収入の管理費会計への繰り入れを改め、以下の事項に留意して独立した会計にしてください。(管理費会計、修繕積立金会計、機械式駐車場会計)

1)全戸1台あるマンションの場合

①機械式駐車場はマンションの資産との考えから駐車場を使用しない組合員からも協力金を徴収します。

②機械式駐車場使用料金と協力金は、国土交通省が提唱している修繕積立金ガイドラインの金額に建て替え費用をプラスして算出します。とくに徴収額は、2段ピット式、4段横行式など設備によって建て替え費用も異なりますので注意が必要です。

2)全戸1台を止め減台する場合

①条例によって設置しなければならない附置義務台数が定められている場合があります。市に確認して減台を計画してください。

②減台によって利用できない組合員が出てくることもあるので、減台数は十分調査し費用対効果が見合うよう計画してください。

③減台した場合、非使用者より使用料を徴収することは難しいので空き区画が発生しないように注意する必要があります。空区画が10%以上になった時は資金計画の再検討が必要となります。

④減台によって全戸1台がなくなった場合、マンション売買には駐車場はなしとなり、査定価格が低くなります。

全戸1台ないマンションでも減台は住戸数の何%にするか、附置義務台数を考慮して少なくとも40%を下回らないようにしてください。なお、どこのマンションもそうですが建替え資金を検討していないようです。建替えは機械式の種類にもよりますが1パレットあたり100~150万円、耐用年数15~20年とされています。従いまして資金計画はゆとりを持つことが重要です。そのためには機械式駐車場専門委員会を立ち上げ広報活動を通して、組合員の合意形成を図ることが肝要です。必ず建て替え等の検討をしなければならい時がきます。資金不足にならないように早めの対策が必要です。

以上

 


【NPO日本住宅管理組合協議会】

ある管理組合では、入居時から駐車場使用料がタダで、それを理由に購入したという例もあるようです。このマンションでは広い駐車スペースとその地下に機械式立体駐車場があり、塗装の塗り替え等のメンテナンス費用に多額の費用が使われています。なのに、タダなのです。

質問の内容も、駐車場使用料がタダのマンションも、長期修繕計画書を見直すことが求められています。

マンションの設備とその維持・保全をしっかりと確認し、設備に対する費用が見合っているのか、その費用は誰が、どのようなカタチで負担をするのかなどを明確にする必要があります。

一方、駐車場は地方自治体との約束である付置義務によって一定程度の駐車台数が決められていますから、管理組合の意思だけで撤去することはできませんし、撤去するにしても多額の費用が必要です。

 

機械式駐車場の維持に必要なこと

機械式駐車場の場合、子どもが機械に挟まれて死亡するといった事故もあり、とくに安全面を優先して保守点検することが絶対的な条件といえます。

年間のメンテナンス費用だけでなく部品の交換、そしてよくある苦情のひとつが一定期間を過ぎた場合、部品の保管期間を過ぎ、部品がないので全体の更新が必要である、とメーカーから言われたということです。

とくに20年ほど前から、車を手放す居住者が徐々に増え、駐車場の空きが目立つようになっているマンションもあるようです。

前述しましたが、マンションを建てる際に、駐車の数を自治体から求められる付置義務があり、駐車場を減少させようとしても、自治体との話し合いが必要です。以前は当初からの付置義務を動かすことを認めない自治体もありましたが、近年、その姿勢が変わりつつあります。

平面化のニーズは、車の所有者の減少と機械式駐車場の維持費用の負担が高額であることから、管理組合収支の改善策の一つとして変化が起きているわけです。

その際、マンションの将来展望をしっかりと見定めておく必要があります。本当に駐車場を少なくして良いのか、地下を埋め戻すのか空洞のまま鉄板を張るのかといったことを含め、撤去費用についての検討を十分に行う必要があります。

工事費用と撤去後の管理組合収支をシミュレーションし、メリットなどを検討することをお勧めします。

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