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第34回:長寿命化にこだわった大規模修繕工事の取り組み方
本資料は平成29年10月21日 川口市で行われたマンション管理基礎セミナーの第二部「長寿命化にこだわった大規模修繕工事の取り組み方―新狭山ハイツにおける取り組みから」の概要です。新狭山ハイツは、狭山市の郊外にある民間の分譲マンションで、中層5階建32棟(PC構造)、戸数770戸で、築44年です。新狭山ハイツにおける「長寿命化を考える3つのきっかけ」についてご紹介します。
長寿命化を考える3つのきっかけ
その1:第2回大規模修繕工事を契機に長期修繕計画の見直しとそれを計画管理する仕組みづくり(平成9年)
平成8年に実施した第2回大規模修繕工事の際に修繕総合コンサルタントと出会い、施工品質へのこだわりの重要性を学び、工事後、その観点を重要視し、「長期修繕計画見直し専門部会」を立ち上げ、数年かけて、長期修繕計画の抜本的な見直し作業を行なった。その前提を「現状の修繕積立金を維持しながら、長く住み続ける(建替えせずに)」ことにおき、計画期間は築60年、工事周期は12年とした。また、計画を作りっぱなしにせず、計画管理していくために「中期修繕委員会」を設置することにした。
その2:専有部給水管更新工事を契機に長寿命化に向けて1歩踏み出す(平成17年)
平成16年に実施した「給排水設備改修調査」において、専有部給水管の劣化が進みつつあることが判明し、平成17年に長く住み続けるなら専有部ながら一斉に更新する必要があるとの認識のもと、修繕積立金で対応することを発案。しかし、専有部の工事に修繕積立金を充当することには異論が出ることも想定されたことから、「中期修繕委員会」のもとで、修繕積立金から充当しても長期的に心配がないことをシュミレーション(長期修繕計画の見直し作業)し、提示した。その際、長期修繕計画の計画期間を築70年、工事周期:16年に変更している。また、専有部給水管の更新は原則露出配管とし、床下配管実施済者には露出配管相当費用を払い戻し、希望者には差額分の負担をお願いすることにした。こうした対応で混乱なく合意形成が行われ、工事が実施された。
その3:第3回大規模修繕工事を契機に施工品質を重視し大規模修繕工事の周期を18年に延長(平成27年)
平成21年に着手した第3回大規模修繕工事の実施においては、施工品質へのこだわりから施工業者の選定にあたっては、主要工事の保証期間を大幅に延長できるようにした(シーリング等の防水工事:5年を15年、躯体補修:5~10年を15年、内外壁塗装:5年を15年)。そのため、工期を1年でも済む工事を小グループにより3年をかけることにし、熟練の職人集団が工事に対応できるように配慮した。 第3回大規模修繕工事後の平成26年度、新たな長期修繕計画案を策定。計画のポイントは、「築80年を賢く繕いながら住み続ける(現状の修繕積立金のままで)」ことを前提に。大規模修繕の周期は18年。最終年の残金は建物・設備の取り壊し、更地費用への充当を想定した。この長期修繕計画は平成27年度、「住民説明会」を経て「管理組合の総会」で承認している。
新狭山ハイツでは、述べてきたように段階的に長寿命化を目指してきました。その背景には施工品質に関する実証的な研究が進み、施工品質を重視することでそれが可能になることを理解できるようになったからです。また、長寿命化対策はハード面にとどまらない、新狭山ハイツでは、近年、空き室対策として、新狭山ハイツに住むことの魅力を訴求する「ブランディング・プロジェクト」に積極的に取り組んでいます。ソフト面の対応も重要との認識です。紙面の都合でその紹介は割愛しますがご関心のある方は下記のホームページにアクセス(http://www.go-sayama.net)してみて下さい。
最後に、長寿命化に向けての一連の取り組みのなかで関係者が意識してきた「合意形成」にからむポイントを参加者に下記の6つの質問のかたちで投げかけ、セミナーを終えました。
①管理会社まかせにしていませんか。 ②専門家まかせにしていませんか。 ③コンサルタント費用をもったいないと考えていませんか。④元の施工会社、大手の施工会社だから安心と施工会社を選んでいませんか。 ⑤工事費用を安くすることばかり、工期を短くすることばかりを考えていませんか。⑥工事の品質を考え、ちゃんと仕様を作成していますか。
NPO法人匠リニューアル技術支援協会代表理事:毛塚宏
(平成8~9年:新狭山ハイツ管理組合理事長、平成15~26年:中期修繕委員長)