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第30回:大規模修繕工事の失敗に学ぶ
本資料は平成26年11月29日 川口総合文化センターで行われましたマンション管理基礎セミナーの第二部「大規模修繕工事の失敗に学ぶ」で配布されたレジュメです。
セミナーは国土交通省が5年ごとに行うマンション総合調査の結果の中から、直近の平成25年4月発表の資料「建物問題」を取り上げ、その原因と対策について行いました。以下はその概要となります。(マンション総合調査結果は国土交通省のHPに掲載されています。)
【大規模修繕工事を実施する前後の建物】(ページ2)
初回の建物調査診断の実施時期に当たる平成12年(2000年)~平成16年(2004年)に分譲された建物は、ひびわれ、漏水・雨漏り、鉄筋露出・腐食、剥落に関する故障率が高く、中でもひびわれは顕著である。
●建物がつくられた時期(1998年~2002年)の経済情勢等
マンション業界では土地はバブル期の半額、住宅金利2%、金融公庫の融資額拡大等々により1994年~2002年は第6次マンションブームであった。建物規模は超高層化・大規模化となり、機能は耐震化・断熱性能・防犯性能・システムキッチン・コンシェルジェ・共用施設等々と向上し、戸当りの床面積は23区70㎡前後、23区以外は80㎡前後へと広くなり、この時期のマンションは”安くて、広くて、安心・安全・快適性能”と三拍子が揃っています。
経済・建設業界では、バブル崩壊後の不況の底入れ宣言が2002年、総合建設業の技術職の大リストラ1994~2004年、建設技能労働者過剰1998年~2005年、(国土交通省 平成25年 建設業活動実態調査の結果)等等、この時期の建設業界はリストラ・ダンピング・倒産と混迷を極めています。
●故障が多い原因
以上より建物がつくられた時期(1998年~2002年)はデベロッパーとマンション購入者は恩恵に浴し、建設業界は憂い喘いでおり、故障率高さの一因として作り手の影響が故障に繋がっているように思います。
●初回の大規模修繕工事時の故障対策
以前に建てられたマンションと比較し床面積が20%程度広い、共用施設がある、不具合の数量が多いことなどより10%以上の負担増が掛かると考えられます。ですから、大規模修繕に際しては、建物調査診断でしっかり実態を把握し、工事予算を確保し、確実に不具合を補修するようにしてください。
【大規模修繕工事後の建物】(ページ3)
ここでは「建物問題」の故障発生量の傾向を見やすくするために漏水・雨漏り調査結果をピックアップし解説します。大規模修繕工事の間隔は平均12年で実施されていますので、昭和44年以前のマンションでは大規模修繕工事は4回目となります。各大規模修繕工事時点及び中間点の故障発生量は段階的に増加し、昭和44年以前の数値は40%を超え、次回5年後の漏水・雨漏り調査結果で昭和44年以前の建物の50%超えは確実視される。
●故障が増加する原因
ページ4では、2012年10月より2014年7月までの業界紙(建通新聞社)の大規模修繕工事の施工会社公募内容(694組合、50戸以下38%、100戸以下28%、150戸以下15%、150戸以上19%)の分析結果を基に説明。
原因1:同時発注、同一工期により職人不足を招いている。
原因2:工期が短く、過剰生産傾向にある。
ページ5では国土交通省 平成25年末現在の全国マンションストック戸数より大規模修繕工事量を分析。
原因3:段階的に増加したマンションのストックは、12年ごとに新規大規模修繕サイクルに組み込まれ2層目87.2%、3層目91.8%、と増加し、2016年より4層目34.5%が加算される。つまり、リニューアルでは補修未経験者(新規参入者)が段階的に増員され続けています。
原因4:アフターサービス品質の低さ。つまり保証期間及び定期点検期間は工事間隔12年の1/2程度であり保守保全が行き届かない。(保証期間はNPO匠の調査値)
ページ7では国土交通省のマンションの修繕積立金に関するガイドライン及び平成25年マンション総合調査の修繕積立金総収入結果より修繕積立金の健全性を解説。
原因5:段階増額方式は築20年以降よりガイドライン値を下回り、築30年前後で増額は足踏み状態となる。つまり築24年目の第二回大規模修繕工事より予算不足に陥っている。
今後、60歳代以上の世帯主の増加、年金支給額の減額、労働者の年収の減少、消費税等の増税などを考慮すると築30年以降の修繕積立金の段階増額は困難を極める。
原因6:原因1~5を制御する設計コンサルタント(管理会社他)の能力不足が顕著である。