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第36回:設計会社・施工会社の選定について

第36回:設計会社・施工会社の選定について

一部の設計コンサルタントが不適切な行為を行なったという話を耳にしたが、具体的にどのようなことなのか知りたい。また、施工会社にも不適切行為を行う会社があるのかを知りたい。それぞれを選定する際に、いくつかの会社に見積もりを提出してもらい、その中から選定しようと考えているが、その入札はどのように行なったらよいのか。


【NPO日本住宅管理組合協議会埼玉県支部の回答】

バブルがはじけた20年ほど前、新築の需要が大幅に減りました。新築を対象にしていた設計コンサルタント会社(設計コンサル)は途方にくれましたが、いくつかの設計コンサルは、マンション改修工事に救いを求め、それがとても都合のよい果実であることを見出し、自分たちが新築で行なっていた談合が、もっとうまく使えることを発見したのです。

手口はいくつかある
管理組合に提出する見積もりは、通常の20%程度は低い金額にします。その時、仲間の設計コンサルもほぼ同様の金額で提出するよう求めます。まったく関係のない設計コンサルは100%の見積もりを提出しますから、管理組合からは高いとみられ、それだけで外されることになります。
残った低い金額の設計コンサルの2社が選定対象になり、どちらになっても裏で繋がっているので、それが繰り返されるので、交互にいい思いをするわけです。
20%程度の費用をどうするかといえば、仲間の施工会社にそれ以上を上乗せさせて見積もりに反映させるのです。

設計コンサルは施工会社の選定に関与しますから、そのような談合が成立してしまうのです。つまり、不適切コンサルタント問題は、施工会社も絡んでいるから成り立つわけです。
不適切コンサルが入り込むと、管理組合は不要な割高の工事費を払うことになります。管理組合を愚弄した犯罪的行為であり、絶対に許してはいけないのです。

ある不適切コンサルが行なった談合の事例
横浜の管理組合の事例ですが、不適切コンサルが建物の調査を行い、その報告書の最後のページに修繕費用が示されていました。その後、施工の見積もりが3社の施工会社から提出されたのですが、ある施工会社の金額が不適切コンサルの報告書の数字と全く同じでした。
管理組合は悩んだ末に、NPO日住協にお越しになりました。それらの手口を説明したところ、すべてを理解されました。

管理組合が気づかない案件も多々あると思いますが、十分に留意して選定することが必要です。
ただし、設計監理方式は危ないという前提で、新しい設計方式を謳っている団体等が多く出てきていますが、新手の不適切コンサルである場合もあり注意が必要です。

NPO日住協がなぜ、このような手口を知っているかといえば、管理組合から資料をいただいていることと、善良な施工会社からも、不適切コンサルからの具体的な要求金額(実際は工事金額の何%ということが多い)を相談しつつ教えてもらっているということです。つまり、具体的な証拠を握っているわけです。

大規模修繕工事は、第三者が設計と監理をすることで手抜き工事等を防ぐことができます。それには設計監理方式が適切な方法です。ところが設計監理方式を、悪意を持って利用している不適切設計コンサルと施工会社は犯罪的行為であり、管理組合の利益は二の次、三の次、いや、何も考えていないでしょう。
管理組合は、可能な限り一つになって、不適切設計コンサルの退場を促す必要があります。そして、マンションの大規模修繕工事が健全に行われるようにしなければならないと考えます。

以上


【NPO匠リニューアル技術支援協会埼玉支部の回答】

新聞掲載事例ではマンション管理新聞(2017.2.5発行)に、具体的データは明らかにはされていませんが、指摘事例が掲載されているのが下記内容です。

Ⅰ.新聞掲載不適切事例

1)最も安価な見積金額を提示したコンサルタント会社に業務を依頼したが、実際に調査診断・設計を行っていたのは同コンサルタントの職員では無く施工会社の社員であった事が発覚した。
コンサルタントの施工会社選定支援により同施工会社に内定していたが、発覚が契約前だったため契約は見送られた。
なお、同コンサルタント会社のパンフレットには技術者が多数所属と書かれていたが、実質的には技術者でない社長と事務員一人だけの会社だった。

2)設計会社が、施工会社の候補の5社の内、特定の1社が工事の見積金額が低くなるよう、同社にだけ少ない数量の工事内容を伝え、当該1社が施工会社として内定したが、契約前に当該事実が発覚したため、管理組合が同設計会社に説明を求めると当該設計会社は業務を辞退した。
このため別の設計事務所と契約し直したところ、辞退した設計会社の作成していた工事項目・仕様書に多数の問題点が発覚し、全ての書類を作り直す事となった。

3)一部のコンサルタントが格安コンサルタント料金で受託し、自社にバックマージンを支払う施工会社が受注出来るように不適切な工作を行い、割高な工事や過剰な工事項目・仕様の設定に基づく発注を誘導するため、結果として管理組合に経済的損失を及ぼす事態が発生している。

4)上記の情報から推測すれば施工会社もまた設計会社に加担して不適切行為を行う事が判明する。

Ⅱ.不適切コンサルタントを排除する発注方式について

1)設計・監理方式案
調査診断・設計・施工会社選定・工事監理を一括して委託する方式
①コンサルタント・施工会社選定でセカンドオピニオンを採用する。
第3者のマンション管理士、またはコンサルタント会社等に委託する。
委託予定のセカンドオピニオン選定は、経験マンションの評価を聞く。
②設計と監理を分けて別会社へ発注する。
監理会社が別の場合は設計図書を照査する事で費用は増えるが、設計が適正であるか否か、過剰または過少設計がないか、仕様書や予算書が適正かどうかの判断が出来る。
③施工会社選定はコンサルタント会社へ委託せず、選定中の情報も伝えない
*セカンドオピニオンの経験と情報量が少ない場合は選定に偏りが出る場合もある。
*管理組合交流会等へ積極的に参加し各社の評判を聞く事が大事。

2)設計・監理方式を採用せず必要なところだけを専門家に委託する案
調査診断・設計・施工会社選定・工事監理を一括して委託せず、各業務を分割して必要なところを専門家に依頼する事で不正を防ぐ。
*各業務に分けるため数社を選定する必要があり、選定が難しく時間もかかる。

3)責任施工(設計施工)案
調査診断から設計・施工まで1社に発注する案
*会社の技術力で工事内容が決まるため、工事内容に対する評価がしにくい。
*請負会社の品質等管理能力よって品質に差が出ることと長期保証は得にくくなる。

4)施工会社選定で多重下請け構造の会社では無いところを選ぶ。

Ⅲ.管理組合に必要な重要事項

1)大切なのは住民の積極的な参加。
より多くの住民が関与し、チェックを行う。
修繕に詳しい一部の住民だけが関与していると不正が入り込む事例がある。

2)セカンドオピニオン・設計コンサルタント・施工会社を選ぶにも他管理組合事例を調査し不正を行わない人・会社を選ぶ必要がある。この選定にも安心して相談できる第三者を探し出す事が重要。

3)コンサルタント選定条件では、入札方式(見積が一番安い会社に決定する〉ではなく、適正価格を提示するところに発注する事が望ましい。つまり安値で受注してバックマージンで不足を補う会社は選ばない。

4)管理会社へも過大な助力を要請せず、管理組合が自主的に活動して情報収集及び検討を重ねること。

5)管理会社へ工事を発注する場合
管理会社は本来管理が専門の会社であり、工事に関しては専門では無く、工事を発注しても一括下請けが殆どで分離発注が出来ない。そのため、一般的に工事費は割高になる。但し、管理組合が信頼でき割高な工事費でも管理をしているので保証期間中のアフターが安心できるのであれば排除は出来ない。

Ⅳ.不適切コンサルタントに関して2017(平成29)年1月に国交省が出した通知内容

「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口に周知について」に①現状の課題②課題解決に向けた取り組みの実現③相談窓口の活用及び相談窓口が記されています。
必要な方はインターネットで情報を入手して下さい。

Ⅴ.国土交通省が指摘する不適切コンサル事例

1)利益相反の事例
設計コンサルタントが自社にバックマージンを支払う施工会社が受注できるように不適切な工作を行い、割高な工事費や、過剰な工事項目・仕様の設定等に基づく発注等を誘導するため、格安のコンサルタント料金で受託し、結果として、管理組合に経済的な損失を及ぼす事態。

Ⅵ.不適切コンサルタントよる弊害

1)割高な工事費
2)過剰な工事内容
3)不明朗な工事発注
4)甘い工事監理
5)不適切コンサルタントの拡大再生産
6)真面目なコンサルタントの減少
7)業界全体の信用が失われる


【一般社団法人埼玉建築士会の回答】

1.コンサルタントによる不適切な行為と施工会社の関わり

不適切な行為として、コンサルタントが工事費用の予算案等作成する際に、割高な工事費に設定し、特定の施工会社に高値で受注させることにより、リベート等を受け取るといったことが考えられます。当然のことながらこのような行為は、コンサルタントだけでなく施工会社も同類であり、不適切と言わざるをえません。

2.新築工事設計と異なる改修工事設計の特有の状況について

コンサルタントという表現についてですが、建築士事務所等がその対象となる場合も多いのですが、建築士事務所としての業務は主には設計監理業務となります。しかしながらマンション大規模修繕工事においては、設計監理業務以外にも業務があり、建築士事務所であるかないかに関わらず、このように表現されることが多くあります。

実際のマンション大規模修繕工事の際には、管理組合は必要なパートナーをコンサルタントとして選定し、サポートを受けながらマンション大規模修繕工事を遂行していくケースが多くみられますが、パートナーとしてコンサルタント業務を行うことについては、資格等必要なく、建築士等を持たない者であっても、建築士事務所登録をしていなくても業務を行うことはできると考えられています。したがって、建築士事務所以外の職種であってもコンサルタントとして業務を行っている例はあると思われます。

建築士資格者の業務独占の範囲は、建物等の設計監理業務であり、建物の大きさ等により設計できる資格範囲が定まっていますが、これらについてはあくまでも新築や増改築等の設計監理が対象で、建築確認申請等が伴っていることが基本であり、マンションで行われている大規模修繕等については対象になっていません。ただし「大規模修繕」と「大規模の修繕」は意味が違い、「大規模の修繕」のコンサルタントを行う場合は、設計監理等の業務であり、建築士資格と建築士事務所登録等が必要と思われます。
(確認申請等が伴う場合は、申請書類の設計者欄あるいは監理者欄に設計監理者の名前と資格種類と番号等の記載が必要なので、ここで有資格者が判別がされます。)

3.建築士事務所登録をしているコンサルタントの場合

ここで注意が必要なのは、管理組合がコンサルタントとして、建築士事務所に限らず様々なジャンルの中から選定、依頼をするケースもある中で、建築士事務所の中から選定した場合です。
修繕、改修設計であり建築確認申請等不要のマンションの大規模修繕工事であっても、建築士事務所の登録の上で改修や修繕の設計監理を業務として行う以上は、その建築士事務所や建築士等は、建築士法等の法令を遵守するのは当然であり、また、担当する技術者も当然のことながら一級建築士等の有資格者が行うことが本来であります。

しかしながら不適切な建築士事務所の中には、例えば事務所のスタッフは多くても資格者は管理建築士のみ、あるいは限られた少数の者しか有資格者がおらず、実際には無資格者が建築士事務所の名の下で、多くのマンション改修等の業務を行っている例も見受けられます。
建築士事務所は有資格者でなくても、事務所を開設することができます。その場合、建築士でない者は各建築士を管理する管理建築士の統括のもとで業務を行うことになります。建築士でなくても有資格者の管理監督の下であれば、技術者として業務を行うことは可能ですが、あくまでも管理建築士や資格者等の管理の下でというのが前提であり、ここを大きく逸脱していることもあります。
建築士法にも設計時の説明努力等が明記されており、建築士は設計を行う場合には、適切な説明を行うよう努力する義務がありますが、管理建築士や建築士は一切関与せず説明も行わず、無資格者が説明を含めた業務全般を行っている例が見受けられます。
建築士事務所として開設した以上は、建築士法等に従い業務を遂行するのが当然で、有資格者を管理建築士に定めて事務所を開設したあとは、無資格者が自由に業務を行えるということではありません。
建築士事務所の選定の場合には、建築士事務所登録をしているというだけでなく、担当技術者そのものも有資格者であるかどうか確認した方が良いでしょう。この場合の有資格とは建築士事務所ということであれば、施工管理技士等でなく建築士資格であることが前提です。

4.所属建築士と建築士事務所の義務

さらに建築士事務所である以上は、所属の建築士は業務を行う際には定期的に法定講習を受講する義務があり、建築士有資格者であっても、こうした法定講習を受講していないものが設計監理業務を担当するというのは、建築士法上問題があると思われます。こうしたことも法を無視した不適切な行為ともいえます。有資格者であっても、このような法令の順守が求められているのであり、建築士でないものは、建築士の管理の下で業務を行うことが当然です。
よく勘違いされるのですが、所属の建築士とはその会社の社員であるということだけではなく、建築士事務所登録をしているその事務所に、所属建築士として都道府県知事に届出されていることが前提です。建築士事務所登録をしていても、施工等の業務を合わせて行う兼業事務所の場合に、事務所所属の建築士でないものが建築士の名の下に設計活動に携わるには、所属建築士になることと法定講習の受講が義務となります。

したがって、不適切な行為とは、建築士事務所の場合でも、あるいは建築士事務所でなくても、当初に記したようにコンサルタントという立場で行われる行為自体に問題がある場合と、有資格者の所属する建築士事務所において法を逸脱して行われる行為とがあると考えられます。また不適切な行為をしている上に、建築士法等抵触しているという複合の場合もあると思われます。

参考までに建築士事務所については、いわゆる耐震偽装事件を受けた平成19年の法令改正の中で、建築士法第23条の6により、一年に一回都道府県知事に、設計等の業務に関する報告が義務となりました。この報告には所属建築士の氏名や各建築士ごとの業務実績、事務所の業務実績等の内容、管理建築士の意見概要等が必要とされています。これを閲覧等することで、実際の業務担当者が建築士の資格者か否か、あるいは建築士を名乗っていても、その事務所の所属建築士であるのか、あるいは定期講習未受講である等、本来は設計業務に携わるのに必要な内容を満たしていないなど、様々な状況を確認できるものと思われますので、活用するのも一方法です。

5.施工会社の選定にあたり

施工会社の選定については、見積合わせや入札等ありますが、入札と見積ではそれぞれ意味が異なりますので、そこを確認することも必要ですが、入札の場合であってもどのように入札するかというよりも、まずは施工会社の選定の方法については、事前に十分に協議し、そのマンションに見合った選定方法を確認していくことが大切かと思います。その中で入札なのか見積合わせなのかも選択されていくものと思われます。

入札の場合は金額のみで判断されることが基本ですので、マンションの場合には見積合わせが行われているケースが多いと思われます。見積等を徴取する場合には、どのような工事をしたいか、どのような範囲まで工事を行うか等を明確にした仕様書等の設計図書が必要であり、管理組合の意思が反映されていることが重要です。仕様書等の設計図書の内容については、管理組合に対して適切な説明を行うことが大切ですが、その説明者も、建築士事務所の場合には、建築士法に基づき、建築士が行うことが基本です。

見積参加していただく施工会社の選定にも様々な方法がありますので、推薦や公募も含めて検討が必要です。工事発注に必要な仕様書等については、見積を徴取するにあたり、各施工会社に配布し、見積合わせや入札等行うこととなりますが、各会社にその内容は同じ内容として伝達されることが重要ですので、質疑等出された場合には各社に回答することも望ましいと思われます。
さらに見積合わせにおいては金額内容だけでなく、その会社の内容や担当者の技術や経験等総合的に判断されることが多く、マンションにおいては最終的に面談まで行うケースも多いと思われます。

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