マンション管理コラムColumn

管理組合運営

第40回:新型コロナ感染期の管理組合総会・理事会開催時の注意点

第40回:新型コロナ感染期の管理組合総会・理事会開催時の注意点

【設問】新型コロナウイルス感染期に管理組合の総会、理事会を開催する場合の 注意点を知りたい。

【回答団体】
・NPO埼玉マンション管理支援センター
・NPO日本住宅管理組合連合会
・NPO埼管ネット

 

【NPO埼玉マンション管理支援センターの回答】
1.通常総会を区分所有法又は標準管理規約の定めに則り開催することについて。
会場が今までのようには、座席が確保できず定員の1/2~1/3にし、参加者の感染防止のため3密を避ける工夫もしなければならなくなります。
(集会の招集)区分所有法第34条2項の「管理者は、少なくとも毎年1回集会(総会)を招集しなければならない。」との規定のとおり管理者に義務付けられた毎年1回の集会(総会)の招集が行われます。
また、管理者の事務報告(区分所有法第43条)も集会で行うことになっています。第43条(事務の報告)「管理者は、集会において、毎年一回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。」との規定があります。
【事務の報告】とは、管理者の事務に関するもの、管理者の業務全般で具体的には管理組合の運営および建物管理の両面における当年度の業務計画に沿って実行した業務の成果や結果、地震や台風などの突発事項等の業務計画外事項、および当年度予算の実行報告、収支決算、次年度業務計画、また次年度予算等の報告がこれに該当します。裁判で原告または被告となったときの区分所有者への報告義務もあります。
通常総会は、マンションの各階からX名程、新旧の役員の方々が出席し、総会を開催し、組合員には委任状、議決権行使書を事前提出いただき書面投票することを考えるべきと思います。
新型コロナウイルス感染症拡大予防に関する、国・地方公共団体のガイドライン(標準的対策)に則り、管理組合理事会は総会・理事会の開催時のウイルス感染防止策を以下のように立案し、参加者の安全を図ることとしました。(参考にして下さい。)

○参加者向け対策
参加組合員の定員を1/2~1/3に減じ、組合員間距離を確保する。
入場時の非接触検温の実施
会場入り口部分に消毒備品を設置、来場時の手指消毒の徹底
会場内はマスクの着用を義務付ける。

○施設環境整備
共通エリア、総会会場の什器・備品のアルコール消毒
出入り口、窓等の開口部の解放、換気を実施

○会場運営スタッフの感染予防策
運営スタッフの非接触検温の実施
運営スタッフの手指消毒の実施
運営スタッフのマスクの着用を義務付ける。

○以下に該当する場合は当日の参加を見合わせていただきたい。
発熱・咳・喉頭痛を含む風邪のような症状や体調不良の方
現在ご家族や職場を含む身近な方が自宅等での待機を要請されている方

2.通常総会を開催せずに書面による決議を行うことについて
新型コロナウイルス感染拡大を防ぐために、組合員の健康・安全を考え、総会を開催しないで、書面投票だけで議案を議決してしまうことを考えますが、確かに、区分所有法第45条「この法律又は規約により集会において決議すべき場合において、区分所有者全員の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議をすることができる。」と定めています。
書面決議等は集会(総会)の決議を代替する効果はありますが、区分所有法第34条2項の「管理者は、少なくとも毎年1回集会(総会)を招集しなければならない。」との規定のとおり、集会(=総会)が開催されていませんので管理者に義務付けられた毎年1回の集会(総会)の招集が行われたことにはなりません。
また、管理者の事務報告(区分所有法第43条)も集会で行うことになっています。第43条(事務の報告)「管理者は、集会において、毎年一回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。」との規定があります。事務報告が行われたことにはなりません。通常総会の開催を行わず、書面決議を行っても総会自体が無効となります。

3.通常総会の開催を管理規約に定めた期間から延期することについて
通常総会の開催時期について、標準管理規約第42条第3項「理事長は、通常総会を、毎年1回新会計年度開始以後2か月以内に招集しなければならない。」と定めています。
しかしながら実際には、災害発生の場合等には、やむを得ず期間内に総会を開催できないこともあり得ることです。今回の感染拡大についても、これに準じて、総会を開催するリスクや組合員の安全等も勘案して、期間内の開催が可能か否かが検討されるべきものと考えられます。

4.通常総会開催の延期の決定機関について
緊急事態の対応として、やむを得ず期間を超えて総会を延期せざるを得ないと判断する場合には、管理組合の業務に当たる執行機関である理事会で通常総会の開催を延期することを決議することになります。総会の開催を先送りすること、及び総会の延期については、理事会において決定することができます。理事会は総会提出議案を定められる以上(標準管理規約第54条1項4号)、その時期についても定めることができます。組合員には、緊急時の組合員の安全、安心のために、やむを得ない対応であることを理解してもらう広報を行う必要があります。

5.通常総会を延期する場合に必要な手続きについて
一例として、次のような手順が考えられます。
1)理事会を開催し、緊急時のやむを得ない対応として、通常総会を延期することと併せ、その間の管理組合の運営は次のように行うことを決議する。
ア 総会で後任役員が就任するまでは現役員が職務を行うこと(標準管理規約第36条3項)
イ 総会で次期収支予算が決定されるまでは、今期収支予算に従い、予算執行すること(標準管理規約第58条3項)
ウ 管理会社との委託契約については、従前契約と同一条件での暫定契約を締結すること((一社)マンション管理業協会発行「マンション管理会社の感染症等流行時対応ガイドライン」を参照)
2)組合員に対し、理事会で決議した事項(通常総会を延期すること、ア、イ、ウ)を通知する。※通知と同時に通知内容を掲示板等に掲示することとする。
3)理事長は、通常総会の開催を延期すること等に関する組合員からの問い合わせ、異議等については真摯に対応する。
4)その後、総会を開催できる状況になった場合には、可及的速やかに総会を開催し、前期役員が継続して職務を行ったこと、前期収支予算に従い通常の業務を執行したこと、管理会社との委託契約については、従前契約と同一条件での暫定契約を締結したことを報告するとともに、改めて、新役員選任、収支予算、委託契約更新について決議することが必要です。

6.通常総会の開催を延期した場合の法的問題について。
区分所有法においては、前述1.のとおり管理者又は理事が少なくとも毎年1回集会を招集しなければならないとされ、集会において毎年一定の時期にその事務に関する報告をしなければならないとされていますが(区分所有法第34条2項、第43条、第47条 12項、第66条)、法務省民事局からは「今般の新型コロナウイルス感染症に関連し、前年の集会の開催から1年以内に区分所有法上の集会の開催をすることができない状況が生じた場合には、その状況が解消された後、本年中に集会を招集し、集会において必要な報告をすれば足りる」との見解が示されています。(法務省HPから)

7.通常総会を延期した場合の管理会社との委託契約更新の方法について
緊急時の対応として、理事会で、従前契約と同一条件での暫定契約を締結することについて決議する方法が考えられます。<5. 1) ウ (一社)マンション管理業協会発行「マンション管理会社の感染症等流行時対応ガイドライン」を参照>
この場合には、理事会決議より暫定契約を締結することについて、管理会社と事前に協議し、理解を得ておくことが大切です。その後、総会を開催できる状況になった場合には、管理会社と従前契約と同一条件での暫定契約を締結したことを報告するとともに、改めて、委託契約更新について決議する必要があります。<5. 4)参照>

8.理事会の開催について
理事会の役員(理事、監事)数は組合員数の1/10~1/15程度である。マンションの住戸規模にもよりますが、区分所有法45条の規定により、理事会役員全員の合意が得られれば、書面決議ができます。事前に理事会議案書を役員に配布し、議決権行使書による理事会決議が成立します。理事会開催による役員の方々の新型コロナウイルス感染を防止するためにも役員が一同に会することは避けたいものです。

【参考文献】 以下の情報を引用しました。
(公財)マンション管理センター
「新型コロナウイルス感染拡大における通常総会開催に関するQ&A」 2020.3.27
法務省 HP 「マンションの管理組合等における集会の開催について」2020.4

 

【NPO日本住宅管理組合連合会の回答】
総会は参加を制限をするなど、ごく少数で開催するなどした管理組合が多いようです。
理事会は集会所の広さによっては、とくに十分な対策をとって行う必要があります。

管理組合を訪問して感じるのは、「密閉」「密集」「密接」の、いわゆる「3つの密」を避けるように工夫している場合と、それが中途半端になっている場合があることです。
訪問をしたときに、換気ができていない集会室のでの打ち合わせでは、やや危険を感じることもあります。さらに、対面する理事さんとの距離が近く、不安を感じることもあります。
管理組合の総会を始め理事会や委員会を開催するときに注意したいのは次のことです。

「密閉」を避けるには、換気をしっかりと行うこと。
「密集」を避けるには、部屋の広さに応じた人数になっているか。
「密接」を避けるには、人との距離をきちんととること。

飛沫感染や接触感染に注意することで、感染リスクは低減できると言われています。そのためには、「密閉」「密集」「密接」の、いわゆる「3つの密」を避けることをマンション居住者に定期的に啓発することが欠かせません。
エレベータの乗り降りでタッチするボタンなど、感染リスクのある部分の接触は、爪側の第二関節で押したり、階段や手すりはテュッシュペーパーなどを使い、それを丸めてしまい、後で適切な場所に捨てます。

集会所の入り口に消毒用アルコールや非接触型の体温計を設置している管理組合もあります。さらに「密接」を避けるように透明アクリル板で飛沫が人にかからないように、きめ細かな対策をとっている管理組合もあります。
マスクの着用は欠かせません。
集会所は換気を十分にすることが必要です。換気は対面する2方向のドアや窓を開放することで換気が十分になります。多くの管理組合で、不十分さを感じます。

コロナウイルス感染防止に関して、“彩の国「新しい生活様式」安心宣言“が埼玉県のホームページにありますので、参考にしてください。

 

【NPO埼管ネット】
初期段階に個々の管理組合が取り組むべきことは、地域の自治体、政府機関、専門家組織団体が発信する情報をいち早く入手し、新型コロナウィルスへの感染拡大防止に配慮した行動を取るために、実行可能なルール(出席者の健康状態の確認・集会場所の換気・マスクの携行・手指や使用した机椅子などの消毒)を定め居住者全員で実行することが肝要です。
通常総会を行うためには次年度の活動計画などの様々な資料を作成するための作業期間が必要ですが、感染期に各理事役員が長時間の作業を行うことにより三密となる状態をつくることは避けたいものです。緊急避難措置として通常総会や理事会の開催は規約に拘らずに、開催時期を延期することも時として必要です。また、議案についても長時間の議論を要するものは極力避け、議決権行使書・委任状の提出を促し、直接総会に出席することを極力控えて頂くことを事前に居住者へ周知することが必要です。
一方、理事会活動は新型コロナウィルス感染拡大を恐れて一切の活動を停止する訳にもいきません。感染期に対面で理事会を開催する場合には、あらかじめ審議する議案を限定し、45分程度の短時間で会議を終了させることにより三密を避ける行動につながります。
そのためには事前に議案毎に少人数で分科会を開き、個々の分科会担当者と理事長が情報を共有した上で他の理事へ意見を求め方針を定めるなどの対応を行うことが必要になるのではと考えます。
また、これからの理事会の在り方について、新型コロナウィルスが終息するまでには数年は掛かることを念頭に置き、「オンライン会議による理事会」或いは「オンライン会議を併用した理事会」を正規な理事会会合とするために「Web会議システム運用規則」等を作成し理事会の持続可能な開催方法の道を探ることも必要ではないかと思われます。

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