マンション管理コラムColumn

管理組合運営

第56回:理事の成り手不足が挙げられている。魅力ある理事会にするために

第56回:理事の成り手不足が挙げられている。魅力ある理事会にするために

【設問】 
毎年、理事の成り手不足が挙げられるが、理事になりたいという区分所有者が現れる様な理事会作りをどの様に構築すれば良いか。

【回答団体】
・NPO埼玉県マンション管理組合ネットワーク
・NPO日本住宅管理組合協議会

 


【NPO埼玉県マンション管理組合ネットワーク】

管理組合を運営する執行機関としての理事会を運営する役員の成り手がいなく困っている管理組合が増えています。この様な中、如何に理事の成り手を増やすかを考えます。
1.輪番制としている管理組合にとっては「高齢」を理由に、理事辞退が多く、役員の成り手不足が深刻な問題となっています。
役員の成り手不足に対して役員を免れる為に、「組合運営協力金」と言う名目で一定額支払えば、役員免除と言う組合もあります。
果たしてこの制度は、管理組合の執行機関として妥当な制度か、疑問に感じます。権能なき社団としての位置付けにある民主主義を守る以上は、平等、公平、公正に協力して貰えるような環境を作り出すべきではないでしょうか、共用部分も大切な自分たちの資産です。資産維持の保持、形成を皆で図って行くコミュニケーション作りが必要です。

2.役員は輪番制で、無報酬、ボンランティアでやっているという管理組合も多いです。この様な中、報酬を規約に盛り込んだり、理事会細則を作成し、報酬を支払う管理組合も多くなっています。
輪番制を2年交代にする。常任役員を選任することで、継続性、連続性を保ち、管理組合運営に関与し、自主性、主体性を持って組合運営を維持して行くシステムの構築作り、消防訓練、防災訓練や炊き出し訓練等を通じてコミュニケーション作りも大切です。
この中で、単に報酬を小遣い目的で、理事会に参加しても、何も発言なし、又は、管理組合を自分の支配下に置こうとする組合員が現れると組合機能が失われてしまいますので、立候補、再任の理事候補には、今後の組合に対してのビジョンを簡単に述べてもらい、その上で組合員に選択してもらい民主主義を守る事も必要になってきます。

3.区分所有者の2親等まで相続人対象者となる直系卑属の親族を役員に就任して貰う。
組合員の中から民法上2親等以内の成人した直系卑属の親族を対象に、当該マンションに同居、非居住に拘わらず、役員を募集し、報酬を支給し、概ね1年をめどに役員に就任して貰う(再任を妨げない)
特に居住の区分所有者が緊急時の場合、速やかに連絡が取れ対応の出来る親族の方が相応しいでしょう。
これは、将来的に区分所有者が保有する専有部分の相続対策を睨んだものであり、対象となる部屋を相続放棄することなく、管理費、修繕積立金が滞りなく入金して貰うためです。そうする事により、各戸居住専有部分の資産価値も保たれるようにするためです。

4.区分所有者が亡くなられた場合も、速やかに相続手続きが為される様、日頃早い段階から相続人となるであろう方に、組合運営に協力して貰い、滞りなく当該部屋を相続して貰える事が大切です。マンション管理組合と各戸の相続人と情報を共有して、スムーズに管理運営の目的が果たせるよう意図的な面もあります。

5.新旧理事会の引き継ぎはマニュアル化しておくことにより、適切な情報共有と資産の円滑な引き継ぎが実現され、マンションの持続的な成功に寄与します。これは、管理や資産価値の向上に影響を及ぼし、住民の生活品質を向上させることが目的です。
さらに、組合内のコミュニケーションが構築され、組合員の協力的で調和のとれた環境を享受します。このような引き継ぎプロセスは、マンションの持続可能な発展を促進し、住民の幸福と資産価値の繁栄に寄与します。そして新旧理事会は、未来のリーダーシップに対する堅固な基盤を築くため、誠実な協力とスキルを提供する必要があるのです。

6.専門的知識を有するもの(マンション管理士等)を「外部役員」として登用する。
外部役員と言っても、理事の場合、議決権が発生するので、区分所有者でもない人間が、建物及び敷地共有者でもないのに、むやみに議決権を与える事は、予算準拠主義による管理組合の会計において、無責任な発言も予想される。従って、理事の依頼はなるべく避け、議決権のない、監事に就任して貰う事が望ましいでしょう。ここで、監事の総会招集権も一考しなければならなくなりますが、規約変更して、「外部委託の監事はその権限において、総会を招集するときは、理事会の承認を得なければならない。」
とすれば良いでしょう。

7.第三者管理方式
区分所有者以外の専門家、専門業者(管理会社)へ管理を委ねる。
区分所有者以外の第三者を選任して、管理を委託する方法なので、理事と言う役職は免除されるものの、他人任せになるので、特別会計である積立金の減少を招く虞もあり、リスクも多いです。
区分所有者でもない人間に自分たちの大切な資産を預けると言う事になりますので、内部監査や外部監査を置く事も必要性が出て来るでしょう。
滞納問題が発生しても、しっかりと回収出来る体制が必要です。建物及び付帯設備の維持管理をして行く上で簡単に管理会社へ第三者委託を任せるのは資産の減少を招くリスクが多いです。
株式会社である管理会社は自社の利益を第一に考えます。そこに管理委託先の組合の毎月定期給付される管理費は、管理組合の資金目当てであると考えて良いでしょう。
管理組合の自己防衛を図るための組合員、区分所有者も法的知識も付けておくことが大切です。
また、資産価値の保全が出来る経営能力のある専門的知識を持った組織に任せるべきと考えます。


【NPO日本住宅管理組合協議会】

当該マンションのビジョン(将来展望など)をつくることが欠かせません。ビジョンがあってこそ長期修繕計画の見直しが活きます。管理規約も同様で、ビジョンを反映させて見直すことができます。そのための常設の委員会を設置して、ビジョンの策定を考えるなどは効果的です。

理事会の役割として重要なのは、管理組合のあり方やあるべき姿を描くことです。しかしこれは少し時間がかかりますから諮問委員会に任せるという方法もあります。

埼玉県内に「環境改善委員」という諮問委員会を設置しているマンションがあります。住民の意向調査を実施したり、建物や設備などの他のマンションでの事例や調査研究も行い、数年先からさらに先のマンション像を考えて理事会に答申しています。

マンションの現状はもちろん、マンションのあるべき姿などを委員会と理事会が有機的につながり、組合員もそれを共有するという仕組みが欠かせません。

埼玉県内の100戸、築40年ほどの団地の例です。当初、「理事は輪番で決まるが、理事をやらない人がいるので、その人には協力金をとりたい」という相談でした。数日後にお会いし、さまざまなお話を伺いました。当方からは、コミュニティーの状態についてお聞きしました。「顔を見ても挨拶はしない」し、名前も知らないと言います。アンケートを行ったこともないと言います。
当方から伝えたのはアンケートの実施です。「絶対に集まらない」と言いましたが、やる前から無理というのではなく、うまくいく方法を考えましょうという提案を受け入れてもらいました。
内容は、冒頭に管理組合の置かれている状況を明確に示すこと。理事の成り手が不足していること。輪番制が崩れかけていること。協力金を取ることが目的ではないが、そうすることも検討していること。そしていくつかのアンケートに答えてもらいます。
「輪番がまわってきたら理事になりますか」という質問などを入れたアンケートを作成し、全戸配布しました。
数週間後にその結果がもたらされました。回収率は80%を超えました。これは、最後はドアノック作戦で回収することを勧めた結果です。輪番が来たら理事になってもよいとの回答も50%以上ありました。

当初の相談である協力金をとること、それはいくらが妥当なのかといったことで動いたとすると、この管理組合の組合員の協力度合いはさらに低下したのではないかと感じます。
役割はみんなで考え、みんなで管理組合の仕事を支えていく仕組みが必要です。

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