マンション管理コラムColumn
管理規約
第60回マンション関連法の改正について
【設問】
マンション関連法の改正について
【回答団体】
・NPO埼玉県マンション管理組合ネットワーク
・NPO日本住宅管理組合協議会
【NPO埼玉県マンション管理組合ネットワーク】
区分所有建物、特にマンションにおいては、老朽化と居住人口の減少という「2つの老い」が大きな課題となっています。これらの問題は、孤独死の増加や住民の非居住化、さらには管理組合の理事の成り手不足といった現象を引き起こし、管理組合の運営に深刻な影響を与えています。そのため、マンションのライフサイクル全体を見通した上で、適切な管理と再生を円滑に進めることが求められています。
こうした背景を受け、第217回国会において、老朽化したマンションの管理や再生を円滑に進める目的で、23年ぶりとなる「建物の区分所有等に関する法律」の大幅な改正が行われました。この法律改正により、マンション管理の現状に即した新たなルールが整備されました。主な改正点は以下の通りで、新しい規定は令和8年4月1日から施行されます。
法律改正の主なポイント
- 規約の設定・変更・廃止に関する決議要件の見直し
規約の設定、変更又は廃止は、集会において区分所有者の過半数の者であって議決権の過半数を有するものが出席し、出席した区分所有者及びその議決権の各四分の三以上の多数による決議によってする。 - 管理業者と管理組合の利益相反への対応
マンション管理業者が管理組合の管理者を兼任し、工事などの受発注者となる場合、利益相反が生じる可能性があるため、自己取引などについて事前に区分所有者へ説明することが義務付けられました。 - 管理不全部分への対応制度の創設
管理が不十分な専有部分については、裁判所が選任した管理人が管理を行える制度が新たに導入されます。 - 建物や敷地の一括売却やリノベーションの決議要件緩和
一括売却、一棟リノベーション、建物の取り壊しなどについて、建て替えと同様に多数決で決議できるようになり、それに対応する事業手続きも整備されました。 - 耐震性不足建物の特例措置
耐震性不足などで建て替えが必要な場合、特定行政庁の許可を得ることで、高さ制限の緩和といった特例措置が認められるようになりました。
地方公共団体による取り組みの強化
さらに、地方公共団体の役割も大きく見直され、以下の措置が新たに取り入れられます。
- 危険な状態にあるマンションへの対応
外壁の剥落など危険な状態にあるマンションに対し、地方公共団体が報告徴収や助言指導、勧告、さらにはあっせんなどの措置を講じることが可能になりました。 - 区分所有者の合意形成支援
区分所有者の意向を把握し、合意形成を支援する民間団体を登録する新たな制度が創設されました。
これまで、民間の建物に関しては「自治体が関与するべきではない」とされてきました。しかし、外壁崩落による廃墟マンションの増加や、建築基準法違反となる事例が目立つようになり、対応の必要性が高まっています。特に、アスベストを含む建物が崩壊することで、近隣住民に肺がんや肺気腫などの健康被害を及ぼすリスクが指摘されています。このような事態を放置すれば、行政の責任が問われるため、早急な対応が求められています。その結果、今回の改正に地方公共団体の取り組み強化が盛り込まれました。
今後の展望
今後、区分所有建物であるマンションは、区分所有者と行政が密接に連携することで、街づくりに大きな影響を与える存在となることが予想されます。新たに制定された法律を有効活用し、住みやすい環境を維持・再生していくことが重要です。これにより、人口減少や建物の老朽化といった課題に対応しながら、持続可能なコミュニティの形成が図られることが期待されています。
【NPO日本住宅管理組合協議会】
1.マンション管理・再生のための改正法
マンションの管理と再生を円滑化するための改正法について、その背景、必要性、および具体的な改正内容の主な焦点は、建物の老朽化と居住者の高齢化という「2つの老い」が引き起こす、管理不全や建替えの困難化といった深刻な課題に対処することにあります。
改正法は、区分所有法、マンション管理法、マンション再生法といった関連法規にまたがり、集会決議の円滑化、管理不全マンションへの対応を強化する財産管理制度の創設、そして建替え以外の多様な再生手法(一棟リノベーションや敷地一括売却など)の導入を推進しています。
これにより、国民の1割以上が居住するという重要な居住形態であるマンションの、ライフサイクル全体を通じた適切な管理と再生を目指しています。
○「2つの老い」への対応
「マンションの管理・再生の円滑化等のための改正法」は、一部を除き令和8年4月1日の施行が予定されています。
この改正法は、マンションをめぐる「2つの老い」(建物と居住者の高齢化)の進行によって生じる様々な課題に対応するために必要とされています。
○高齢化の進行
マンションストック総数は約713.1万戸であり(2024年末時点)、国民の1割超が居住していると推計されています。そのうち、築40年以上のマンションは約137万戸(全体の2割)を占め、今後10年で約2倍、20年でやく3.4倍に急増する見込みです。また、築40年以上のマンションの住戸では、世帯主が70歳以上の割合が5割以上に達しています。
○課題の深刻化
建物の老朽化に伴い、外壁剥落等の危険性、集会決議の困難化、組合役員の担い手不足、そして修繕積立金の不足(計画に対して不足していると回答したマンションが36.6%)といった課題が深刻化しつつあります。
○管理不全マンションへの対応
適切な管理・再生が行われず、居住者や近隣住民の生命・身体に危険を生じる管理不全マンションが発生しており、行政代執行(解体等)には多大な時間的・金銭的コストを要する恐れがあります。
これらの背景から、新築から再生までのライフサイクル全体を見通した、管理・再生の円滑化を図るための措置が必要とされました。
2.改正法の概要
改正法は主に「管理の円滑化等」「再生の円滑化等」「地方公共団体の取り組みの充実」の3つ柱で構成されています。
A.管理の円滑化等
(1)集会の決議の円滑化(区分所有法)
①所在不明区分所有者の母数からの除外:裁判所が認定した所在不明者を、全ての決議の母数から除外するする制度が創設されます。
②普通決議の要件緩和:修繕など区分所有権の処分を伴わない事項の決議は、集会出席者の多数決(過半数)で行うことができるようになります(現行法は全区分所有者の多数決)。
③共用部分の変更決議の要件緩和:原則は4分の3を維持しつつ、瑕疵による権利侵害のおそれがある場合や、バリアフリー化に必要な場合には、多数決割合が3分の2に引き下げられます。
(2)マンション等に特化した財産管理制度の創設(区分所有法・マンション管理法)
①管理人の専任制度:管理不全の専有部分や共用部分、または所在等不明区分所有者の専有部分について、裁判所が管理人を選任して管理させる制度が創設されます。管理人は、裁判所の許可を得て、所在等不明区分所有者の専有部分を売却することが可能であり、売却代金は供託されます。
(3)管理計画認定制度の拡充(マンション管理法)
①新築時の管理計画作成:既存マンションのみが対象であった現行制度を拡充し、分譲業者(デベロッパー)が新築時に管理計画を作成・認定申請し、管理組合に引き継ぐ仕組みが導入されます。
②目標:管理計画認定の取得割合を現在の約3%から20%へ引き上げることを目標としています。管理計画認定制度の各項目は管理組合の運営にとって大切なものですから、チェックリストとして使うこともできます。
(4)管理業者管理者方式への対応(マンション管理法)
①利益相反への対応:マンション管理業者が管理組合の管理者(代表者)を兼ねる場合、自己または関連会社との取引(工事等の受発注)について利益相反のおそれがあるため、区分所有者への事前説明が義務化されます。
B.再生の円滑化等
(1)新たな再生手法の創設等(区分所有法・マンション再生法等)
老朽化マンションの増加を踏まえ、建替えだけでなく多様な再生手法を可能とします。これらの手法は建替え決議と同様に、多数決決議によって可能となります。
・建物・敷地の一括売却(建物敷地売却決議、建物取壊し敷地売却決議)
・一棟リノベーション(建物の更新)
・建物の取り壊し(取壊し決議)
①決議要件の緩和:原則は5分の4の賛成を維持しつつ、耐震性不足など一定の客観的事由がある場合には、多数決割合が4分の3に引き下げられます。政令指定災害による被災の場合は3分の2に引き下げられます。
②賃貸借等の終了制度:建替え決議等がされた場合に、金銭補償を前提として、賃借人等の同意がない場合でも賃貸借等を終了させる制度が創設されます。
(2)多様なニーズに対応した建替え等の推進(マンション再生法)
①隣接地等の権利返還:隣接地の所有権や底地権を、建替え後のマンションの区分所有権に変換することが可能となり、容積率確保のための隣接地等の取り込みを促進します。
②高さ制限の特例:耐震性不足等のマンションの建替え・更新をする場合、容積率の特例に加え、特定行政庁の許可による高さ制限の特例が追加されます。
C.地方公共団体の取組みの充実
(1)危険なマンションへの勧告等(マンション再生法・マンション管理法)
①地方公共団体の権限強化:外壁剥落等の危険な状態にあるマンションに対し、報告聴取、助言指導・勧告、専門家のあっせん等を措置します。
②公表制度:正当な理由なく勧告に従わなかった場合、地方公共団体はその旨を公表できるようになります。
③財産管理制度の申立て:方公共団体が、管理不全マンションに対して財産管理制度の申立てを行うことが可能になります。
(2)民間団体との連携強化(マンション管理法)
①支援法人の登録制度:区分所有者の意向調査や合意形成の支援を行う民間団体(NPO法人、社団法人等)を「マンション管理適正化支援法人」として登録する制度を創設し、官民連携による地域全体の支援体制を構築します。
②改正マンション関係法は、一部を除き令和8年4月1日に施行が予定されています。 ただし、「管理計画認定の拡充」については公布日から2年以内、「管理業者管理者方式への対応」等の一部規定は公布日から6か月以内の施行が予定されています。
まとめ:管理組合の主体性・自立管理が何よりも大切
以上がマンションの管理と再生を円滑化するための改正法についてのあらましです。これらを踏まえて、マンション標準管理規約も改正されますから、それを参考に管理規約の見直しの検討も必要になります。
しかし、何よりも求められるのは、管理組合の主体性であり自立した管理を行う姿勢と行動です。そのためには管理組合の運営を民主的で公正であろうとすることが大切です。その上でマンションの居住価値を向上させるために、区分所有者みんなで課題を共有して取り組むことが必要なのはいうまでもありません。