マンション管理コラムColumn

管理組合運営

第12回:身寄りのない組合員が亡くなった場合の管理組合の対応について

第12回:身寄りのない組合員が亡くなった場合の管理組合の対応について

 身元引受人のいない独り暮らしの高齢者が今後益々増えていく。そのような中で、高齢の組合員が亡くなった場合に管理組合としてどのような対応が必要となるのか。

また、最近、独居老人が亡くなってしばらく経ってから発見されたということをよく耳にするが、そういったことにならないようにするためには管理組合としてどのような対応が可能なのか教えてください。


【NPO埼玉マンション管理支援センターの回答】

組合員たる区分所有者が死亡し、その相続人がなかなか現れない場合の管理組合としての対応の仕方としては、

①当該区分所有者の相続人が誰であるか調べる。
・被相続人の死亡の記載された戸籍の謄本取得

②戸籍謄本を取得して、相続人がいることが判明した場合
・法定相続分(民法第900条)に従って、相続人全員に管理費等を請求する
・相続人が不払いの場合は、差し押さえ

③戸籍謄本を取得しても、相続人がいることが明らかにならない場合や、戸籍上の相続人全員が、家庭裁判所に相続放棄(民法第915条)の申立てをした場合
・管理組合としては、利害関係人として、被相続人の最後の住所地又は相続開始地の家庭裁判所に相続財産管理人の選任の申し立てを行う

④特別縁故者もいない場合には、被相続人の財産は、国庫に帰属することになる。
・管理組合としては、国が区分所有者となった場合には、管理費は全額回収できる。

※ 相続人が戸籍上明らかでない場合の、相続人等の確定、清算の手続きにはかなりの期間を要するので、未回収の状況はしばらく続くことになる。

また、「独居老人が亡くなってしばらく経ってから発見された」 ということにならないようにするためには、管理組合としてどのような対応が可能か?

①管理の必要上、「居住者名簿」は多くのマンションで徴収しているが、変更等について、あまり更新されていないケースが多いので、「居住者名簿」の更新を徹底する。(プライバシーや、個人情報保護法との問題があり、居住者名簿の記載事項について、検討が必要)

②管理組合と自治会が協力して、新聞や郵便がポストに溜まっている部屋の人に声をかける等コミュニティ作りを行う。

③管理組合の了解のもと、管理会社の管理員等に、毎日定時に「安否確認」の電話又はインターホンで連絡をとる。

※ 以上のような対応策は考えられるが、システムとして確率するた めには、責任の問題もあり、管理組合単独の対応は難しく、行政・ 自治会・管理組合・管理会社等が連携して、対応策を検討する必要があると思います。

 


【NPO匠リニューアル技術支援協会埼玉県支部の回答】

1.相続問題等が発生しますが、管理組合の範疇でなく、相続財産の管 理者に相談することが先決です。またそれも即時決定するわけでなく、管理費等の未納の新たな問題が発生する場合があります。
死亡した管理組合員に財産がある場合、逆に債務を負っていない場合はある意味で時間の経過で解決します。

2.組合員が債務を抱えていて、相続権者が相続放棄した場合、管理組合の管理費等の滞納も処理できない場合があり、解決に相当な手続きと労力・時間がかかります。

3.管理組合の事前の対応策の構築が先決です。個人情報保護法が誤解 されて、管理組合員の緊急時の連絡先(家族を含め)の通知を拒否する例が多くなっています。管理組合個人だけで解決対応にも限りがあります。緊急時に対応するのは、管理組合員の遠くの親戚でなく、共同生活帯であるマンション・団地の管理組合は、即時に対応できる自治会・隣人そして地域のネットワークを持っています。その活用が生きる知恵です。

4.そのことを、各組合員に充分広報する必要があります。管理組合等の共同体の有効活用への情報活動をすることです。管理組合員にとって、病気を含めて命の問題が最優先事項のはずが、「個人情報・プライバシー」の名の下に断ち切ろうとしています。

5.管理組合が保管する管理組合員名簿における項目に、緊急時の連絡先の明示とともに、その連絡先にも、「管理組合通信」のような情報を発しておくことです。いざという時ばかりでなく、平時からコミニュケーション、広い意味でのセーフテイネットワークをもっておくことです 。

6.管理組合の取組みも単独では限界があります。自治会(地域の自治会も含めて)、民生委員等の打合せの機会を設けて、居住者「高齢者・高齢の単身者等」の情報を共有化することです。
地域のなかでの管理組合という位置づけをすることです。そうした中で行政の扶助、支援等の知恵もだされるでしょう。
管理組合員が組合運営活動だけでなく、住む人である管理組合員との 交流や親睦の機会を増やし、参加し、管理組合員の問題点・課題や検討事項をそうしたイベントの中から発見していくことが、遠回りでも時間がかかっても、今回の問題提起の事例に役立つかと考えます。

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