マンション管理コラムColumn
居住者間のマナー
第18回:マンション居住のルールを守らせるには
マンションの一角にゴミの収集場所が設けられ、出し方のルールを決められてい るが、特定の方がそのルールを守らず、当番制による収集場所の掃除も行ってもらえない状況にある。
また、マンション敷地内でゴミやたばこのポイ捨てが横行している。
ルールを守らせ、当番制の掃除も行わせるよい方法はないか。マンション管理規約に掃除を義務付けたり、ポイ捨てを禁止するような規約を設けることは違法か。
【NPO法人埼玉マンション管理支援センターの回答】
ごみの出し方は各市でルールが定められており、それに基づき各マンションで個別のルールを設定して管理している。いずれのマンションでもごみの出し方については、ごみやタバコのポイ捨ても含め、問題を抱えているはずである。
あるマンションでは、資源ごみ(ビン、カン)の回収日には2名の当番を定め、年間スケジュール表を各人に配り、掲示板にも通年張ってある。それでも無視する人は結構いる。また、巨大ゴミを手続きせずに出し、警告を無視する住人もいる。
こういった場合の対応では、ゴミ置き場の扉及びゴミ置き場の中に「ゴミの出し方、分別の仕方」などを書いたカラーの注意書きを張るとか、又、賃貸借を取り扱う不動産仲介業者に、契約時に「ゴミの分別などについて」の文書を手渡してもらい、賃借人に注意を喚起することも1つの方法である。仮に、契約者が外国人の場合であれば、外国語訳した文書を作成してもらうことも必要であろう。
「マンション管理規定に掃除を義務付けたり、ポイ捨を禁止するような規定を設けることは違法か」
管理規約に定めることは別に違法ということはないが、管理規約では、基本的又は包括的に規定し、具体的には使用細則に規定する方がよいのではないか。(財)マンション管理センター策定の「使用細則モデル」の第13条(ごみ処理)のところで少し具体的な表現で禁止項目を追加するとか、第9条(敷地及び共用部分等でのその他の禁止行為)に盛り込むとかすることは有効である。訴訟になった場合は、使用細則に規定が有るか無いかもポイントとなる。
設問の「特定の方」の中には、「日本人、若者、高齢者、外国人など」多様な人格が当てはまってくると思うが、仮に生活習慣等の違いから外国の方々が居住のルールを理解していただけないとした場合でも「ルールを守らせる」ということは日本人であろうが、外国人であろうがまったく同じであり、対応に差をつけられないのが実情である。まずは、ルールを理解する日本人が模範となって示すことから始めるほか名案はない。
ただし、日本語がわからないなど言葉やコミュニケーションに障害がある場合には、丁寧に説明し、理解してもらうことが必要であることは当然である。
<参考> (財)マンション管理センター策定「使用細則モデル」
第9条(敷地及び共用部分等でのその他の禁止行為)
区分所有者は、敷地及び共用部分等において、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
一 建物の保存に影響を及ぼすおそれのある共用部分の穿孔、切削又は改造
二 広告物の掲示又は設置その他の建物の外観の変更を伴う使用
三 共用部分の庭、階段、廊下等、緊急時の避難通路となる場所への物品の設置並びに放置、又はその他の排他的使用
四 所定の駐車場、自転車置場並びにバイク置場以外の場所への駐車又は駐輪
五 その他敷地又は共用部分等の通常の用法以外の使用
第13条(ごみ処理)
区分所有者は、対象物件において、次の各号に掲げる事項を遵守しなければならない。
一 所定の時期、区分及び方法に従ってごみ集積所にごみを出すこと。
二 清掃事業者又は廃棄物収集運搬業者の指示に従い粗大ごみを処理すること。
【NPO法人匠リニューアル技術支援協会埼玉支部の回答】
ルールを守らない「特定の方」がどういった方々であるかの問題はあるが、ここでは、日本語の不得意な方を想定して回答することとしたい。
まず、疑問に思うことであるが、この管理組合の理事等役員の中に居住する外国人に対して、その母国語により管理運営を説明できる役員がいるのであろうか。また、管理組合では、その外国語での管理運営に関するパンフレット等を用意し、入居時に書面で説明をできるシステムになっているのであろうか。
あるいは、入居している外国の方々が日本語を理解しているのか、管理運営等に関して身振り手ぶりででも説明する時間をもっているのであろうか。
国際化社会といわれる昨今、多くの外国人が日本を訪れ生活している。こういった中で、外国人が居住するマンションの管理組合では日常的に外国人居住者を交えてのコミュニケーションの機会を設けることが必要であるが、多くの管理組合ではそれら機会を設けることが出来ていない。そのような場合には、管理組合だけで対応することなく、外国人を支援するNPOや各種団体等と連携していくことも必要である。
団体等から言葉やコミュニケーションのとり方などのアドバイスを受けたりして、管理組合の意向や居住のルールを外国人居住者へ伝達する方法の構築が先決である。
管理規約等で、規定を作成しても、肝心の相手方が理解できない状況ではお互いが不愉快な思いをするだけであり、なんら改善されないのである。
今回のテーマに限定することなく、日本人にしろ外国人にしろ、一つの建物に共同して生活するマンションの場合には、どのようにコミニュケーションを深めていくかが最も重要なことであると考える。
【一般社団法人首都圏マンション管理士会埼玉県支部の回答】
ルールを守らせる為の特効薬はありません。
管理組合、理事会がこの不適切な状況をどの様に把握し、どの様にしたいのか、共同生活の中で快適な住環境を保持し、安心安全で暮らし易い生活を維持する為のル-ルの確立を図りたい等、明確な目標なり問題意識を共有される事が大事です。其の上で現在の規約、ル-ルが有るのであれば其れを守ってもらう様に行動、努力される事です。
具体的には
1)管理組合、理事会が住環境の確保の為に、規約、ル-ルの遵守の為に強くて固い決意と姿勢をもって臨むことが必要になります。
2)共同生活の中でのル-ルを守る事の重要性を強調される事が大事です。
3)繰り返し粘り強い啓蒙、広報活動を継続して実施していく事です。
4)又其の運用の仕方を工夫される事です(例えば当初は穏やかな表現から段々厳しい表現に、規約には予防措置や排除措置も有ります。これで効果を挙げた実例が有ります)。
5)守らない方々が特定の方であればポストに勧告書を投函するとか、理事数名で訪問して話すとかの行動も必要に成ってきます。
6)外国の方々には、温泉等で入浴ル-ルがイラスト入りで説明文が掲載されていますがその様なものを参考にして(其れに日本の慣習も含めて)作成用意し(居住者多い順に2~3ケ国)掲示、回覧、訪問、(効果の程度に応じて対応する)を実施していく事です。
7)当番制に成っているのであれば理事会で6ケ月~1年間の(週単位での担当者)当番表予定表を作成して各戸に配布し、順番の記載ノ-トと一緒に掃除道具(ホウキ、塵取り等)も順送りして行く方法等も有ります。(未実施であれば理事長や理事が注意する)
マンションの管理や良好な住環境の保持には、組合員の関心と参加が必要になります。其の為にはコミュニケーションの強化や啓蒙活動等に時間と労力をかけ地道な普段の活動が欠かせません。
そのマンションの実情に合わせた独自の規約の設定、変更及び廃止はマンション区分所有法第31条に規定されていますし、また、共有部分の管理等については、同法第18条1項及び2項により別段の定めをする事が出来ます。
掃除の義務付けや、ポイ捨ての禁止等の規約を制定する事に何ら問題はありません。手続きとしては、総会の特別決議(3/4の決議)で出来ますが、現行の規約、ル-ルを再確認されて、現行規約の活用運用の遵守をされ、其れでも効果がなく、また規約に不備な点、実情(時勢に対応しない)に合わない等の問題があったときに設定や変更を検討されたらと思料いたします。その時は強行規定に抵触しない事や公序良俗に反しない範囲での対応になります。