マンション管理コラムColumn

管理規約

第29回:理事長の許可なく専有部分を勝手に民泊あっせん業者に空き部屋として登録したり、シェアハウスを運営していることについて

第29回:理事長の許可なく専有部分を勝手に民泊あっせん業者に空き部屋として登録したり、シェアハウスを運営していることについて

10階建てマンションの503号室を昨年9月に投資目的で購入したオーナーは外国人です。購入して間もなく専有部分の大改造工事に着手し、工事最中にやっと専有部分の改造の許可申請書を提出してきました。理事長は、改造内容が申請書どおりか確認するためにオーナーと連絡を取ろうとしましたが、なかなか連絡が取れず室内立入り調査ができないうちに室内の改造工事が完了してしまいました。
新年早々、外国人と思しき人たちが503号室を入れ替わり訪れるようになりました。オーナーの妹が近くに住んでいることがわかり、兄に代わり妹から改造内容の説明を受けたところ、①室内を5つに間仕切りし、②洗濯室をシャワールームに改造、さらに③民泊のあっせん業者(IT企業)に5部屋として登録した、との驚くべき内容でした。

一方、301号室は別の外国人オーナー。3階居住者の目撃情報によれば複数の外国人が1~2か月程度で入れ替わっているとの事。どうやらシェアハウス(脱法ハウス)を運営しているようです。管理組合が警察や消防署に相談しても、オーナーは日本語が通じず事態は一向に改善しません。

管理規約では、(専有部分の用途) 「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。」と定められているので、規約違反の使用方法だと思うのですが、場合によっては原状回復を求め、シェアハウスの運営も中止させたいのですが、管理組合としてどのように対応すべきか教えて頂きたい。


 

【一般社団法人埼玉県マンション管理士会の回答】
貴マンションの管理規約は標準管理規約第12条(専有部分の用途)「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。」に準拠した管理規約となっています。民泊は簡易宿舎扱いとなっているので明らかに規約違反となります。
2016年1月27日に大阪地裁がマンションの管理組合が申し立てをした民泊の仮処分に対して、民泊の差し止めを命じる判決が出されました。このマンションの管理規約には「専有部分を専ら住宅として利用する」との条項があったとされています。
しかしながら、2017年の通常国会に提出すると言われている民泊新法には「民泊は住宅扱い」とする案も検討されているようです。そうすると、今までの「専ら住宅として使用」に適合するということになり、民泊禁止条項としての根拠として十分とはいえなくなる恐れが出てきました。
民泊利用を明確に禁止した管理規約を作成して注目された、管理組合「ブリリアマーレ有明」の規約を紹介します。この管理組合はまず
1.シェアハウスの定義(①直接・関節を問わず複数の者から居住(シェアハウス)、宿泊又は滞在(民泊)の対価を徴収するもの、②これらの為にする改築、改装等)を明確にした。
2.(専有部分の用途)の項に禁止条項を明確に打ち出した。
冒頭の条項に加えて、
①区分所有者は専有部分を直接・間接を問わず「シェアハウス」に供してはならない。
②理事長は専有部分がシェアハウスに供されていると認めた時はその中止を要求できる。
③理事長はその区分所有者に利用状況の確認が出来る。
④確認の結果また外観、近隣住戸、賃貸情報等からシェアハウスに供されていると判断した際は立ち入りの請求が出来る。
※マンション民泊に共通する問題として次のようなことがあげられると思います。
・玄関はオートロックなのに宿泊客が自由に出入りしているという安全上の問題。
・宿泊客が廊下やエレベータで大声を出して騒ぐなどのトラブル。
・民泊は区分所有者全体の共同の利益に反する。
503号室に関しては、
①現在の法律では民泊は簡易宿舎の定義に入り保健所の許可が必要です。
ですから届出の無い503号室は旅館業法違反で法の裁きを受けるべきと考えます。
(通告を求めている警察署もあります)
② 5部屋に改造の届出申請が無ければ無許可になります。
5部屋ということは建築基準法にも違反があるのではないでしょうか?
② 彼らは日本で生活が出来ています。全て日本語で質問し、通告してはどうでしょうか?
質疑応答の記録は取る必要があります。(後日、訴訟を起こしたときの証拠物件になります。)

※シェアハウスの問題点について
居住スペースとしての安全性の問題です。住宅については、個室に採光や換気のための窓を設けることなどの建築基準法上の制限があるほか、火災報知機の設置など消防法上の制限もあります。さらに共同住宅については、遮音性能や避難経路の確保などの多くの制限が加わります。
301号室に関しては、
① シェアハウスそのものを、生活の本拠として使用している状態では、止め立ては出来ないでしょう。管理組合として、他の区分所有者等も含め入居者名簿の整備をすることが必要でしょう。
② 日本語が通じないとのことですが、301号室を購入時に不動産業者が関わっていると思います。その不動産業者を通じて立ち入りの請求をもとめてみてはいかがでしょう。
③ 無届改造工事や違法改造があればストップも可能かもしれません。

民泊、シェアアハウスともども管理組合の規約改定が必須ですので「ブリリアマーレ有明」の規約を参考に早めに改定されることをお勧めします。
以 上


【NPO匠リニューアル技術支援協会埼玉支部の回答】
503号室の民泊の問題については、民泊によりマンション居住者でない第三者が出入りする使用態様は、居住者の生活の本拠が無く、騒音問題や防犯防災上の問題が発生したり、ゴミ捨てのマナー違反などが発生する場合は、他の居住者の平穏を損なうこととなり、住戸使用には含まないとみなせます。従って、「専ら住宅として使用するもの」とされる規約に反し、区分所有法第6条1項の「区分所有者の共同の利益に反する行為」に該当するとして、使用を禁止することができると考えます。
この場合は、標準管理規約第66条(義務違反者に対する措置)、第67条(理事長の勧告及び指示等)に基づき、必要な措置をとることになります。
まずはじめに、区分所有者に対して、妹さんを通じてなり、内容証明郵便なりで改善を申し入れることが必要です。

ただし、他の住戸の使用態様が、事務所や営業施設など住戸以外の使用が容認されている場合は、上記の考え方が適用されない場合があるので、注意が必要です。
また、民泊特区である大阪府の場合に、管理組合の考え方により、「専ら住宅」規定であっても民泊が認められるとする判断もありますので、国の動向、自治体の動きも確認しながら、管理組合として早めに規約改定を行うなどして、民泊禁止の意思表示を行うことが必要と考えます。

さらに、民泊禁止の規約変更を行う場合は、裁判等になった場合に、現状の専有部分の改造等を認めてしまてっていると、既得権益として「組合員の権利に特別の影響を及ぼす」ことに該当しかねないため、標準管理規約第17条(専有部分の修繕等)の規約に基づき、承認された工事でないことを、明確にしておくことも必要と考えます。

301号室のシェアハウスの問題は、実態がつかめていないため、脱法かどうかも分からず判断ができません。外国人対応のできる弁護士等に相談するなどして、実態を調査することが必要と考えます。
シェアハウスの問題は、適法な事例もあり(港区で管理組合が敗訴した判例)、全てのシェアハウスを制限するには、管理規約で部屋数の制限などを設け、シェアハウスによる使用を禁止する旨を明確にすることが必要と考えます。
なお、この場合も、規約変更する場合、503号室の場合と同様に、既得権益の問題が発生するため、注意が必要です。

以上


【川口市の回答】
貴マンション管理組合規約では、専有部分の修繕・模様替えに関する細則については、(承認の取消し等)「理事長は、区分所有者が次の各号の一に該当する場合は、理事会の決議に基づいて区分所有者に承認の取消し及び警告を行い又は中止させ、又は原状回復を求めることができる」と定められています。
一 承認申請と異なる専有部分の修繕等を行ったとき。
二 専有部分の修繕等が法令、規約、この細則又は総会の決議に抵触したとき。
503号室オーナーは専有部分の修繕・模様替えに関する細則(承認の取消し等)の条文のとおり、専有部分の修繕等が法令、規約、この細則の定めに違反していることは明白です。管理組合として理事長の勧告及び指示を行い、原状回復を求めるべきです。

また、(専有部分の用途)「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。」と定められています。
301号室オーナーは、専有部分を専ら住宅として使用しているとは言えず、第三者に賃貸する営業目的として使用しており、規約の定めに違反しています。

区分所有者の共同の利益に反する行為に対し、管理組合全体として対応すべき問題です。
理事会、総会の場で問題提起をし、解決するための意識浸透を図ることが大切です。
マンション管理士等の専門家の協力を仰ぐことも有効な手段です。

マンション管理士等の専門家と無料で相談できる窓口がある自治体もありますので、お住まいの地域の自治体に確認してください。

以上

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