マンション管理コラムColumn

管理会社等

第49回:管理委託契約内容の条項が守られていない

第49回:管理委託契約内容の条項が守られていない

【設問】
管理員が、基幹業務以外の業務に含まれている「清掃業務」をきちんと行われていないし、ゴミ置き場の整理も行われていない。フロントマンにきちんと行う様申し入れたが変わらない。どうしたら良いか。

【回答団体】
・NPO埼玉県マンション管理組合ネットワーク
・NPO日本住宅管理組合協議会
・一般社団法人埼玉県マンション管理士会

 

【NPO埼玉県マンション管理組合ネットワーク】
管理組合が、管理会社と管理委託契約を締結した場合、民法では委任契約について「当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる」と定義しています(民法643条、)
管理組合が、管理会社に対し、業務委託契約を締結する場合、次の内容があります。

基幹事務(1)管理組合の会計の収入及び支出の調定(2)出納(3.マンション(専有部分は除く。)の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整
基幹事務以外の管理事務
(1)理事会支援業務(2)総会支援業務(3)その他   ①各種点検、検査等に基づく助言等   ②甲の各種検査等の報告、届出の補助   ③図書等の保管等

3管理事務以外の管理業務
管理員業務(受付業務含む)
(2)清掃業務(3)建物・設備管理業務

があります。
 この中で、日常生活において、居住者と接触する機会が多いのは、3の業務を行う、「管理員」となります。
 日常業務の中での業務は管理委託契約書の中に、「業務の区分及び業務内容」が表記されています。
 また、多くの管理会社は、別表により清掃業務仕様書に日常清掃の「清掃対象区分」「清掃仕様」が詳細に項目別に明記されています。
 これを基に、管理員業務、清掃業務が行われることになります。
 4管理委託契約条項に記載のものは、管理員又は、清掃員は必ず実施する項目ですから、実施しなければ契約違反となります。管理員も、実施項目を形だけ行い、手抜き清掃をして、終了と言う清掃員もいれば、熱心に誠意を込めて、ふき掃除、掃き掃除を行ってくれる清掃員もいます。
 5 最近の清掃員の雇用形態として、管理会社の直接雇用ではなく、管理会社の子会社が派遣会社を作り、清掃員を再委託している場合が多く見られます。
 結果、清掃員は、管理会社との直接雇用契約ではない為に、誠意ある職務の遂行が為されない。と言う苦言も多くあります。
 やはり、直接雇用であれ、再委託契約であれ、管理会社との業務委託契約の業務仕様である以上は、管理員業務、清掃員業務は「しっかりと職務を遂行して貰わなければ困ります。」と理事会を通じてなり、フロント担当者に申し入れてみて下さい。
 但し、管理員、清掃員も高齢化し高所の危険な業務、「照明の点灯、管球類の交換」は除く、と言う付帯条項がある契約が多くなっていますので、ご注意をお願いします。  以上

 

【NPO日本住宅管理組合協議会】
 基幹事務は、
①管理組合の会計の収入及び支出の調定
②出納
③マンション(専有部分は除きます)の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整
の3つを言います。
 管理組合はそれらについて、管理会社に委託し、管理会社はそれを受託して「管理委託契約書」を双方によって締結します。具体的内容は双方で話し合い、契約書と仕様書などに「なに(どこ)を」と「どのように」「いつ(いつ頃)」行うのか、それが「いくら」なのかなどを示します。
 今回の質問は、基幹業務以外の「清掃」を委託しているようですが、それについても管理委託契約書に明記されていると思われます。したがって、その旨を管理会社に申し入れることが必要です。しかし、今回の件は契約書に盛り込まれていないのでしょうか。だとするとそれ自体が問題です。
 また、以下のようなこともありますから、参考にしてみてください。

管理組合の事例を示します。
 あるマンションでは、まだ築浅だった当時、共用廊下の天井などに蜘蛛の巣があちこちにありました。管理会社に「清掃」を委託をしていましたが、蜘蛛の巣の清掃は行われていませんでした。居住者から度々『清掃が行き届いていないではないか』という不満の声が管理組合に上がっていました。理事会は管理委託契約書等を精査し、清掃範囲に含めるべきであることを管理会社伝えました。何度かのやり取りの後、管理会社は清掃範囲であることを認め、現状のままの委託費で、都度、蜘蛛の巣の除去を行うことになりました。
 管理組合は管理委託契約書を冷静に見つめ、しっかりと管理会社と話し合った結果でした。
1〜2年後には、蜘蛛は巣を張らなくなり、その部分の清掃は必要なくなったそうです。

もう一つの事例。
 この例は居住者の感覚的な事例です。あるマンションの敷地には多くの木々が生育しており、春の桜の花びらに始まり、秋になると楓の葉や柿の葉、欅などの葉が落ちます。Aさんは枯葉は全部を掃き捨てず、少し残すことで敷地内に情緒や潤いが残る、と主張。Bさんたちはすべての花びらを掃き捨てるべきであると反論。
 当初、AさんとBさんたちそれぞれが、清掃員に指示をしたために混乱が起きていました。
 管理組合は清掃等についての居住者アンケートを実施し、その結果、敷地内の清掃は従来どおり決められたローテーションで行う。その後の花びらや落ち葉は、次の清掃日まで残るのは当たり前のこと。Aさんの主張も、またBさんたちの言い分にも対応できることになりました。花びらや落ち葉は造花ではないので、掃いても掃いても落ちてくるのが自然であることなどについて多くの居住者で話し合いができたことが成果だったと当時の理事さんは語っています。

管理会社には具体的に指示をする
 さて、今回の質問の清掃箇所や範囲が具体的にどのようなのかによって、取り組み方は異なるかもしれません。きれいに掃くべき箇所にゴミが残っているということであれば、具体的にその場所に理事と管理組合がフロントや清掃員を集め、具体的に指示を出すことが大切です。
「しっかり」とか「きちんと」といったことばは、受け手によって価値観やことばの解釈が異なりますから、現場のゴミが残っている状況を双方で確認しながら、どの程度除去してほしいのかを具体的に伝えることで理解してもらえるかと思います。
 ゴミ置場の整理も同じように、具体的に指示することが必要です。

 

【一般社団法人埼玉県マンション管理士会】
A 管理会社に対する不満でしょうか。
 マンション管理会社は管理組合からの委託を受けて、マンションの運営管理にあたっています。その運営管理が杜撰でいい加減だと気持ち良く生活できないだけでなく、マンションの資産価値にも影響してきます。
 特にマンションのゴミ置場については、衛生上、美観上においても重要な個所となります。
 管理会社との付き合い方について清掃業務中心にいくつかご説明させていただきます。

管理委託契約(「全面委託」「一部委託」)
 管理委託契約前に“重要事項説明会”にて、管理委託内容(基幹事務・基幹事務以外の業務、費用、契約期間)の説明を管理会社が行い、総会の決議を経て委託契約が締結されますが、清掃員(管理員)については、「勤務時間・日数・業務箇所」の表示のみで業務の明細まではなかなか行われません。
 実務上“清掃業務”については、契約書に記載された「勤務日日数・時間内」において、現場状況(管理組合の要望)に合わせ、詳細の打ち合わせを行います。
※清掃業務については、“専任の清掃員”とする場合と、“管理員業務に含む”場合とがあります。

担当者(フロントマン)
 前に述べた「業務の明細」については、管理会社フロントマン(又は専任の指導員)より着任した清掃員(管理員)へ現場において指導がなされます。
 清掃はどのようにするか確定したルールがありませんが、綺麗に保つというゴールだけがあります。しかも、その綺麗さはどのくらいかという基準もありません。
 したがって、現場で一つずつ確認して、どこをどのようにどのくらいの頻度で清掃するかを委託者(管理組合)と受託者(管理会社)がそれぞれ確認していくことが大切ですがその窓口となるのがフロントマンです。
 フロントマンへ「清掃計画の提案」を依頼し、実務に照らし合わせてみましょう。
 担当者(フロントマン)にもよりますが、管理会社が巡回指導する体制がしっかりしている場合は清掃もよくなります。
 対応が悪い場合は、管理委託契約書の〔別表3〕の仕様書でやるべきことを細かく書いて指導すると対応は良くなるでしょう。
 それでも担当者に問題があり、やってもらえない場合は、担当者の交代またはサブ担当を要求しましょう。
 但し、何もかも管理員(清掃員)が行うものではなく、住民が行わなければならないこと(ゴミの分別、保管場所、出せる日時等)もあるので、管理組合において広報等にて徹底することが重要です。
(管理会社からの提案があるか、期待する内容と勤務時間等)

管理会社変更等
 清掃員(管理員)の対応が悪い場合、状況の確認および交代の申し入れをしましょう。その際はその問題点を確認しておきます(入居者における問題の場合もある)。
 問題があるにもかかわらず交代しない場合、フロント担当者任せ、組織として管理組合運営をバックアップする社内体制ができていない場合は、管理会社の変更を検討するようになります。
 管理会社として“清掃業務”以外の対応についても注意しましょう。(報告・連絡・提案等)
 管理会社の変更については、別の記事をご参照ください。

失敗実例
入居者のゴミ分別ができておらず、清掃員勤務時間の大半が“ゴミの分別”で終わってしまう。(入居者の問題)
清掃資材が劣化(箒の穂先、モップ替え糸が殆どない)、適切な清掃資材が準備されておらず作業に時間がかかってしまう。(管理会社の現場状況把握ができていない)
中規模マンションにおいて、毎年管理会社を変更するも、管理組合の要求が強く(清掃仕様詳細において対応できる管理員が次々と辞退)、受託する管理会社が無くなってしまった。
管理会社からの「管理員人件費の値上げ要求」を断り続けたところ、まともな管理員が着任せず基本的な業務をこなせない。(管理組合の問題、管理会社撤退)

その他
管理会社への連絡窓口は、理事長(理事会)となります。管理委託契約は管理組合との契約ですので、個人的に気が付いた場合は理事会へ申し入れしましょう。
高年式小規模マンションにおいては、収益が上げられないことにより受託しない管理会社も増えています。管理組合の収支を考慮した委託費(場所・仕様)を検討することが必要です。

まとめ
 清掃に対する苦情は、管理会社と管理組合、清掃員(管理員)の立会確認による解決が必要です。
 問題点を明確にしておく。フロント担当や清掃スタッフ(管理員)を代えてもらえば解決する問題なのか、管理会社の対応や方針そのものに問題があるのかにより管理組合の対応が変わります。
 人を代えれば済む問題であれば、管理会社に人員の交代を打診します。管理会社そのものに問題があると思われる場合には、思い切って管理会社の変更も選択肢に含めてみましょう。
相談にあたっては、マンション管理士等の専門家を活用されると問題点確認もスムーズです。

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