マンション管理コラムColumn

管理組合運営

第51回:管理業務全面委託のマンションの新任会計担当理事の役割

第51回:管理業務全面委託のマンションの新任会計担当理事の役割

【設問】
輪番制でマンション管理組合役員となり、会計担当理事になりました。当マンションでは、委託契約により、管理費等の収納、管理帳簿の作成、決算書類等、管理会社が実行・作成しており、会計担当理事として直接実務を行うことはないように思われます。また管理会社が作成している各種書類の様式が、普通の会計様式に比べて分かりにくいものになっているように感じられます。新任の会計担当理事として留意すべき事項等について教えてください。

【回答団体】
・NPO埼玉マンション管理支援センター
・一般社団法人埼玉県マンション管理士会

 


【NPO埼玉マンション管理支援センター】

(1)標準管理規約では、会計担当理事は、管理組合の役員として、理事長、副理事長、理事、監事とともに置くことになっています。(標準管理規約第35条)そして、「会計担当理事は、管理費等の収納、保管、運用、支出等の会計業務を行う。」(標準管理規約第40条3項)とされており、管理組合の金銭を管理する重要な役割を担っています。

管理会社に業務委託をしている管理組合では、会計業務は管理会社が実施するため、会計担当理事といっても他の理事と変わらない場合が多いようです。しかしながら、管理会社はあくまでも業務委託先であり、その最終責任は委託元である管理組合(会計担当理事)にあります。管理会社任せにせず、管理会社が作成する月次報告等をチェックするといったことは会計担当理事の重要な役割です。

具体的なチェック項目例としては、①現金・預金残高を通帳等と照合する、②未収金、長期滞納の存在と回収見込みはどうか、③修繕積立金は総会の承認に基づき運用されているか、取り崩しはないか等があげられます。不明な点等があれば、管理会社に説明を求めます。

(2)管理組合会計では、真実性の原則、正規の簿記の原則、明瞭性の原則、継続性の原則、保守主義の原則、単一性の原則といった一般的な会計原則の他に、管理組合会計に特有の会計原則として、一般会計(管理費会計)と特別会計(修繕積立金会計、駐車場会計、共用部分の専用使用料等の会計)とに区分されます。

また、マンション管理会計の特徴として、会計基準は定められていません。管理会社に会計業務を委託している管理組合では、その管理会社の方式(会計ソフト等)による会計書類を作成しており、様式も様々なのが実態です。現行の様式で分かりにくい点等があれば管理会社・理事会と相談し、上記会計原則に従い、慎重に検討して、よりよいものに工夫・改善していきましょう。

(参考) 「標準管理規約」の会計に関する部分:第7章 第56条~第65条                     以上

 


【一般社団法人埼玉県マンション管理士会】

これへの回答としては、私が出席したある理事会で会計担当が、管理会社に「管理業務報告書」の会計報告書について質問していたので、参考になるかもしれませんので新任さんにご紹介します。

1.「管理業務報告書」の中で会計報告書の中身は以下でした。

A.管理費会計: (貸借対照表・月次収支報告書)

B. 修繕積立金会計:(貸借対照表・月次収支報告書)

C. 未収金一覧表

D. 収入明細表

E. 支出明細表

 

2.A、Bの「貸借対照表」は前月末時点の組合の現金資産と負債の額です。銀行別預金額、未収入金、前払金など項目別金額と総額が記載されているので確認しましょう。また、資産と負債の総額は一致します。負債の部に次期繰越金が表示されています。これは月次収支報告書の前月末の繰越金額累計を転記しています。

→ 会計担当は、通帳の数が多いので整理したいと言っていました。

 

3.「月次収支報告書」は、年間予算と前月末累計実績及び残高です。月別も同じように並んでいます。予算と実績の進捗率に注意しましょう。(表に記載が無い場合は、自分で記入します)。予定通りの進捗率か?期末に赤字にならないか?を見ます。また、正しい勘定科目で仕分けされているかも注意です。月別収入と支出は、Dの「収入明細表」、Eの「支出明細表」で確認できます。わからなければ請求書明細で確認してもよいでしょう。

→ 会計担当は、支出に漏れがないか、金額に間違いが無いか確認しました。また、前月に積立金会計に入れる支出が管理費会計に入っていたので修正されたか確認しました。

 

4.Cの「未収金一覧表」で月別発生額と累計を確認します。3ヵ月以上の滞納者は個人別の専用の管理ファイル作成をお勧めします。

→ 会計担当は、滞納者への当月督促実施の有無、次に3月以上の滞納者には、規約による利息と、更に内容証明郵便費用など督促に要した費用も加算しているか確認しました。

 

5.管理会社の会計事務が正しいのは当然ですが、人の手で行われている部分も多く担当者が伝票を手元置いて処理を忘れたり、仕分け科目を間違えたり、或は組合の修正要求を会社に伝えていなかったりも出てきます。

この事例の理事会では、収支報告書から数字が消えたり、次月で他の仕分けで現れたり、そもそも初歩的な記載ミスもあり、終了した工事の支出がなかなか計上されないとかで管理会社に問いただしても、納得のある回答を得られませんでした。それらも一つの原因で管理会社の変更をしました。日本最大の管理会社の一つでしたが、人がやる事だということを忘れないことが大事です。

6.会計の予算作成で、管理会社によっては、積立金会計に予備費とか、○○関係費という実質的予備費を高額で計上しています。予算作成の手間が省けますが、本来積立金は大規模修繕などの費用で、支出に総会承認が必要なお金です。計上には、必ず具体的な使用目的と予算を明確にすべきでしょう。私は、できないならば計上すべきではないと思います。そうしないと管理会社主導の理事会では、お金が知らずに抜けて行くかもしれません。

 

7.「管理費会計はキュキュウ」に。「積立金会計は余裕を持って」が基本だと思いますが、多くの管理組合で、この逆が行われているのを見ます。緩い管理費会計は支出が甘くなります。

 

8.管理組合の会計は、【予算主義】で、総会で決めた予算書により執行されます。また「収支報告書」は、【発生主義会計】で、入出金という事実が発生した時点で計上します。そのため月次の「収支報告書」では、原則「管理費等」は毎月決まった引き落とし日に入金が計上され、入金されない「未収入金」は資産・負債の増減を表す「貸借対照表」で確認します。実際に動いたお金の支払日、入金日で計上する(現金主義会計)ではありません。

工事の場合は工事の引渡し日に計上します。その時点で支払うという事実(義務)が発生するからです。

 

  • 「新任会計担当理事の役割」と言うのがこのQ&Aのテーマですが、毎月の会計資料の頁数はわずかです。それを、理事会の1回だけ目を皿のようにして見ましょう。また、知っている人に遠慮なく聞きましょう。半年もすれば、管理会社の担当者より自分のマンションのことを知ることになります。そして管理会社が作るより血の通った、組合の現実に即した予算案が作れるようになるでしょう。

以上

 

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