マンション管理コラムColumn

管理組合運営

第52回:第3者管理とは?その前にすべきこと

第52回:第3者管理とは?その前にすべきこと

【設問】

高経年高齢化マンションの増加と共に、管理会社による第三者管理方式が安易に提示され始めた。これには一見管理組合にとっては労力が省け楽になるように見えるが、「違法性強い状態での通帳と印鑑の同時保管」等をはじめ、「利益相反性」の問題や管理会社に不都合が発現した場合に管理方式を元に戻すのが難しいのでは等も指摘されている。

このような管理会社による管理者方式の前に、管理組合の二つの老いのもとでの管理組合の運営についてアドバイスをして欲しい。

【回答団体】
・一般社団法人埼玉県マンション管理士会
・NPO日本住宅管理組合協議会

 


【一般社団法人埼玉県マンション管理士会】

1,昭和57年(1982年)中高層共同住宅標準管理規約において「理事及び監事は、○○マンションに現に居住する組合員のうちから、総会で選任する」と役員の選任・資格要件を定めてきたが、平成23年(2011年)改正を期に役員の資格要件を、当該マンションへの居住の有無に関わりなく区分所有者であるという点に着目して、「理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する。」と改正された、この改正の背景にあるものは、今日の区分所有者の高齢化―役員のなり手不足の兆候であった。そして平成28年(2011年)改正では、外部専門家を役員として選任できることを想定して、「理事及び監事は、総会で選任する。」と区分所有者の資格要件を外す改正を提議した。さらに今日では役員の担い手が不足していたリゾートマンションやワンルームマンションでは、 以前から管理者として、外部の第三者に管理者や役員を委託する第三者管理方式の導入例が散見されたが、ここ数年はファミリータイプで急増している。最も多いのが理事会を置かずに管理会社に管理者を委託するパ夕-ンとなっている。

2,管理組合、そして役員の役割はなにかという事から管理会社による管理まで行きついて第三者者管理を考えると問題が浮かび上がってくる。管理組合の目的は、管理の適正化と資産価値の最大化を図ることであり、それを担うのが役員という事である。管理組合の目的の達成には、必ずしも区分所有者が役員を担う必然性はない、第3者であっても問題はない。

今日進行している管理会社による管理方式には、利益相反の束縛から逃れることができないという課題を抱えている。株主のために利益の最大化を求める管理会社と資産価値の最大化を求める管理組合が並び立つのは難しい。にもかかわらず管理組合は理事会を廃止し、わずらわしい理事会活動から解放されるからと管理会社にマンション管理を委ねる道に入る。いったんその道を選ぶと元に戻るには大変な力が必要であることは間違いないでしょう。

3,区分所有者全員で構成する管理組合を全員で管理運営するという役員輪番制の弊害部分が背景にあるのではないかと推察し、区分所有者がすべて管理運営に関心を持っているとは考えられない。また、理事会中心の管理組合運営において1年乃至2年の任期で管理組合の運営に関心を持っても継続性は得られないまま役員の任期は終わる。かくしてこのような繰り返しの中で管理運営に興味を失ってゆくのではないだろうか。組合役員の選出についての試案ではあるが、それには組合員全員で構成する管理組合の運営を、管理組合の運営に関心のある、やる気のある組合員で運営することを原則とすべきではないか。管理会社管理に委ねる前に輪番制をやめ、立候補制に変え、役員には報酬を支払い、役員の目的は、管理の適正化と資産価値の最大化という目的を持っているが、この目的のために管理の主体は管理組合であるという認識を強く持って役務を担ってもらうことが必要ではないだろうか。

以上

 


【NPO日本住宅管理組合協議会】

事例からみる自立管理の重要性

A管理組合から、「理事は輪番制であるが、それを回避する組合員がおり、また理事会に出席しない理事もいる。そこで協力金をとりたいが、いくらくらいがよいか」という相談がありました。後日、対面での相談で、その悩みを具体的に聞きました。一通り聞いた後、コミュニティの実情や理事会からの広報の実施状況などについて訊きました。

「団地内ですれ違っても挨拶を交わさないし、夏祭りなどのイベントなどもまったく実施していない」「広報も出していない」とのことでした。

理事会から、広報(管理組合ニュースなど)を発信していないので、管理組合が日々何を行なっているのか、住民はまったくわかりません。総会の出席は委任状の提出が多く、会場出席率も低い状態です。

顔を合わせても挨拶を交わさないというのは、マンションという、集合住宅に住むという基本を共有されていないということです。なにごとも挨拶から始まります。

顔を合わせた時に、「おはようございます」「寒いですが、体調はいかがですか」「お子さん、大きくなりましたね」「カメラをお持ちですが、どんなものを撮るのですか」などなど、挨拶は次の会話のステップで、相互の状況などを知る機会です。

このような会話だけでも、互いに親しみを感じ、同じマンションに住む仲間としての地震などの災害など、いざ、という際の共助は、日頃のお付き合いがあってこそです。詰まりコミュニティを作り上げておくことは、マンションにとってとても大切なことです。

 

A管理組合の理事長さんと、そのようなことを話しながら、アンケートの実施を提案しました。

「アンケートなど行ったことがないので、うまくいかない」といいます。「やってみなければわからないし、成功するようにアンケートを作りましょう」と提案し、その設計を考えました。

先ず、アンケートの冒頭に、「管理組合、理事会の実情(輪番を拒否する、理事になっても出席しないなど)」、「築50年を控え課題が山積している」「コミュニティをつくり上げる必要性」そのためにも「理事会に出席して積極的活動してほしい」、そのようなことを書いたのです。

そして、いくつかの質問のなかに、「輪番で理事になったとき、あなたはそれを受け入れますか」という質問をいれました。

それから1ヶ月余の後、理事長さんから、アンケートの結果を集計したので報告したいとの連絡がありました。

3人の方がお越しになりました。それぞれが今まで顔は見ていたけれど、挨拶を交わしたことがないということです。アンケートの実施は一人ではできないので、協力者をつくることをアドバイスしたのですが、理事長さんは「気合を入れて声をかけた」とのことでした。

椅子に座るなり、理事長さんは笑顔で、すごい結果なんです、と声を弾ませました。

アンケートの回収率は80%を、理事になってもよい、と答えたのは50%を超えていたのです。

こんな結果になるとは思っていなかった、と理事長さんも他のお二人も驚きを隠しませんでした。

「理事を断ったり、欠席を続ける理事に対する協力金をいくらにするか」、という相談をそのまま受けていたら、このような結果にはなりませんでしたし、管理組合の運営はさらに悪化していったと考えられます。もちろん、協力金をとることが必要な場合もあると思いますが、その前に考えたいことがあります。

管理組合の運営において、問題の表層にとらわれることが多いのですが、その本質を探り、その抜本的な改善などを図ることが求められます。多くの管理組合で、それがうまくいっていません。管理会社などに頼り過ぎて、管理組合の本質を見失い、徐々に自らを弱体化させていきかねません。

つまり、管理組合の自立した管理がとても重要であるということです。管理組合の運営主体は、区分所有者によって為されることが必要です。管理会社は手と足にはなりますが、中心を司るのは管理組合です。

そのためには、先ほど述べたように常に本質を追求すること。高齢者でも元気な方はおり、高齢を理由に理事の成り手不足というのは

もちろん、マンションの魅力づくりを考え、居住者の新陳代謝の促進を図ることも必要です。

 

第三者に管理を委ねたとしても、期限を設けて行うことが重要です。しかし、解約する総会を、その第三者が運営するわけですから、解約することは難しく、第三者の思うがままの管理になる可能性があります。

管理組合と委託契約をしている管理会社が管理者となった場合、少額の工事の発注はもとより、大規模修繕工事などの高額の発注を行うことは、利益相反に当たると考えられます。

つまり、管理組合の一般会計及び修繕積立金の中身を全て把握し、日々その収支を把握している管理会社は、管理者としては適当ではないと言えます。どうしても管理会社に管理者となってほしい場合は、委託契約を解除することが望ましいと言えます。

 

しかし、委託管理をしている管理会社が第三者管理を行うことを、管理組合が問題がないと考えて契約をするのであれば利益相反にはならない、というのが第三者管理を行っている管理会社などの言い分です。(下記に資料を付けました)したがって、そのことを十分に認識しておくことが重要です。

つまり、第三者管理のメリットだけではなく、デメリットについてもしっかりと検討しなくてはなりませんし、第三者管理を行う管理会社はその点を十分に説明することが求められます。

その場合、・管理者の管理権限の範囲 ・通帳/印鑑の保管を管理者に預けることを避け、管理組合の複数人で管理を行い、印鑑を押す書類等に目を通し、納得いかない場合は押さないと言ったこと。 ・管理者がその地位を離れるにあたっての引き継ぎ方法についても取り決めておくこと。 ・日々の業務における取引きの流れを把握し、利益相反になっていないかを監視すること。 ・監事の役割の重要性を認識し、第三者に監査を依頼する。第三者管理を行っている管理会社では、同じ企業内やグループに監査をさせていることがありますから、注意が必要です。いいことだけを喧伝する管理会社には注意が必要と言えます。

 

さて、相談に話を戻します。

A管理組合が気づいたように、自立した管理とコミュニティーは、マンション管理にとって欠かせない大切なことです。みんなが集まれるイベントなどを、無理なく行うことで、隣人関係も近くなり、マンション管理はもとより、いざという災害時などの共助にも役に立ちます。

管理会社に任せっきりにせず、管理組合が主体性と自立性を抱いて取り組むことをお勧めします。

 

■関係資料

「区分所有法」

・第三条 区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び付属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用(以下「供用部分」という。)をそれらの区分所有者が監理するときも、同様とする。

・第四節 管理者  第二十五条(選任及び解任) 区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によって、管理者を選任し、又は解任することができる。

2 管理者に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは、各区分所有者は、その解任を裁判所に請求することができる。

「民法」

・第5章(法律行為) 第3章 代理

第百八条(自己契約及び双方代理等)  同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としていた行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

2 前項本文に規定するもののほか、代理人と本人との利益が相反する行為については、代理人を有しない者がした行為とみなす。ただし、本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

ある管理会社は、外部管理者総会監督型をPRしています。しかし、区分所有法「管理者」には(組合員などの)限定がない。

民法 但し書き「本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない」

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