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管理組合運営

コラム:~民法改正と管理組合運営の注意点~

コラム:~民法改正と管理組合運営の注意点~

◇民法改正の経緯
改正法は平成29年(2017年6月2日)「民法の一部を改正する法律」として公布され、平成32年(2020年4月1日)から施行されます。
現行民法は、明治29年(1896年)に公布され、これまで部分的に変更はあったものの大規模な改正は行われておらず、120年ぶりの本格的な改正と言われています。
今回の改正においては、平成21年(2009年)10月に法制審議会から法務大臣に対して「民法(債権関係)の改正に関する要綱」として答申されましたものが、その内容です。
同年3月の第189回国会に法律案として提出され、2年後の29年6月に成立しました。

◇民法の構成
民法とは、個人間の財産上・身分上の関係など、市民相互の関係について規定する私法の一般法です。第一編総則、第二編物権、第三編債権、第四編親族、第五編相続と5つの内容から構成されています。今回の改正は第三編債権関係が中心です。

(Ⅰ)債権の総則部分
①意思能力制度の明文化
意思能力制度とは
意思能力を有しない者がした法律行為は無効となること。
意思能力は、行為の結果を判断するに足るだけの精神能力。たとえば、認知症を患って行為の結果を判断することができない者は、意思能力を有しない。
□ 現 状
自らが締結した売買契約の無効を主張して、代金の返還等を求めることができることにより、判断能力が低下した高齢者等が不当に不利益を被ることを防ぐことが可能。
高齢化社会が進展する中で意思能力制度の重要性はますます高まっている。
※ 類似の制度として、高齢者等の保護を図る成年後見制度がある。成年後見制度の利用のためには、事前に家庭裁判所の審判を得ていなければならないが、意思能力制度は事前に家庭裁判所の審判を得ていなくとも利用が可能。
※ 意思能力を有しなかった者の原状回復義務の範囲は、現に利益を受けている限度にとどまると解されている。
□ 問題の所在
判例・学説上は、異論なく認められ、実際にも活用されているが、民法に明文の規定はない。
■ 改正法の内容
民法を国民一般に分かりやすいものとする観点から、意思能力を有しない者がした法律行為は無効とすることを明文化(新3条の2)
※併せて、意思能力を有しなかったものが相手方にする原状回復義務の範囲は、「現に利益を受けている限度」にとどまる旨の規定を新設(新121条の2Ⅲ)

②消滅時効の見直し
消滅時効とは
権利を行使しないまま一定期間が経過した場合に、その権利を消滅させる制度
(意義)
・長期間の経過により証拠が散逸し、自己に有利な事実関係の証明が困難と
なった者を救済し、法律関係の安定を図る。
・権利の上に眠る者は保護しない
■ 改正法の内容(消滅時効の規定の変更)
・職業別の短期消滅時効はすべて廃止
・商事時効(5年)も廃止
・権利を行使することができる時から10年という時効期間は維持しつつ、
権利を行使することを知った時から5年という時効期間を追加(新166条)
→いずれか早い方の経過によって時効完成
・人の生命・身体の侵害に対する損害賠償請求権については、「知った時から5年」 「権利を行使することが
できる時から20年」 長期化する特則を新設(新167条、新724の2条)
・従前の定期給付金制度というのはなくなり、一般債権の一つとして同じ扱い(5年)となる。
・定期金債権の消滅時効 債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使す
ることができることを知った時から10年間行使しないとき。前号に規定する各種債権を行使す
ることができる時から20年間行使しないとき時効によって消滅する。(新168条1項)

③「時効の中断」規定の変更
ア)時効障害の呼称は従前の「中断」から「完成猶予」及び「更新」と改めそれぞれの効果毎にその発生事由を分けて規定化した。
イ)時効の「完成猶予」の事由に、債権者と債務者の「協議を行う旨の合意」が加えられた。この協議の合意による完成猶予は、当初完成の日とされている時から5年以内の限度で繰り返すことができます。
※用語の説明
「完成猶予」 時効期間の満了が先送りされること
「更新」 それまでの期間の経過に拘わらず、新たに時効期間が開始されること

④管理組合が有する債権
管理組合が有する債権としては、組合員に対する管理費・修繕積立金(以下管理費等という。)の債権に係る消滅時効については、管理費等は民法169条に規定する定期給付債権にあたり,同条所定の5年の短期消滅時効が適用されるとされていたところ,今回の改正で従前の169条の規定は削除されました。これは,管理費等を含む定期給付債権について,特別扱いを止め,一般の債権と同様の規律に服させることとするものです。現行民法においては判例によって月ごとに支払われるものであるときは、現行民法169条が適用されることが明らかにされていましたが(最高裁判決平成16年4月23日)、同条の廃止により改正民法166条(債権者の消滅時効)が適用されることになります。

改正民法が施行されますと、債権の消滅時効については、これまでの一般債権や定期金債権といった債権の種類による区別が廃止され、原則的な類型に一本化されます。
次に、債権は「権利を行使することができる時から10年間」行使しない時(改正民法116条1項2号)に消滅時効を迎えるほか、新たに「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき」(改正民法166条1項1号)も消滅時効を迎えることになります。
マンション管理組合は、通常区分所有者が管理費等を滞納し始めたすぐの段階から滞納区分所有者に対して権利行使可能なことを認識していますから、管理費等が支払期限を過ぎた段階から、改正民法116条1項1号の5年間の消滅時効期限がスタートすると考えるべきでしょう。

(Ⅱ)債権総論部分
①法定利率の見直し
民事:年5%(現行404条)
※制定当時の市中の金利を前提としたもの
商事:年6%(商法514条)
※民法の法定利率が5%であることを前提としたもの
※商行為(営業資金の借入れ等)によって生じた債務に適用される。

法定利率の適用場面
① 利息を支払う合意はあるが約定利率の定めがない場合の利息の算定
例)利付き消費貸借
② 約定利率の定めがない金銭債務の遅延損害金の算定
例)損害賠償などの遅延損害金

→ 法定利率は、明治期における民法・商法の制定以来、見直しがされていない。
→ 昨今では、市中金利を大きく上回る状態が続いている。

■ 改正法の内容
法定利率の引下げ(新404条Ⅱ)
・施行時に年3%とする。
緩やかな変動制の導入(新404条Ⅲ~Ⅴ)
・法定利率を市中の金利の変動に併せ緩やかに上下させる変動制の導入
・3年ごとに法定利率を見直し。貸出約定平均金利の過去5年間の平均値を指標とし、この数値に前回の変動
時と比較して1%以上の変動があった場合にのみ、1%刻みの数値で法定利率が変動(法定利率は整数にな
る。)
商事法定利率の廃止(現商法514条の削除)
・商行為によって生じた債務についても、民法に規定する法定利率を適用

(Ⅲ)債権各論部分
①売主の瑕疵担保責任
◎問題の所在-1(瑕疵担保責任の全般的な見直し)
○買主の権利
商品の種類を問わず、引き渡された商品に欠陥があった場合に買主がどのような救済を受けることができるのか(修補等の請求をすることができるのか等)について、国民に分かりやすく合理的なルールを明示するべきではないか。
○「隠れた瑕疵」の用語
「隠れた瑕疵」という用語も、その内容に応じて、分かりやすいものとすべきではないか。

◎基本的な改正の方向性
○買主の権利
特定物か不特定物かを区別することなく、売主は売買契約に適合した目的物を引渡す義務を負い、修補等の履行の追完をすることができることとするのが適切
損害賠償や解除は特別の法定責任とは位置付けず、債務不履行の一般則に従ってすることができることを明示するのが適切(加えて、損害賠償の範囲は「信頼利益」に限定されず、要件を満たせば「履行利益」まで可能となる)
商品に欠陥がある場合に代金の減額で処理される事案も多いことから、買主に代金減額請求権を認めるのが適切
○「隠れた瑕疵」の用語
判例は、「瑕疵」は「契約の内容に適合していないこと」を意味するものと理解→判例の明文化
※「隠れた」とは、契約時における瑕疵についての買主の善意無過失をいうと解されているが、上記改正法の考え方の下では、当事者の合意した契約の内容に適合しているか否かが問題であるため、「隠れた」の要件は不要。

■ 改正法の内容
○買主の権利(新562条~564条)
買主は、売主に、①修補や代替物引き渡しなどの履行の追完の請求 ②損害賠償請求 ③契約の解除 ④代金減額請求ができることを明記
○「隠れた瑕疵」の用語(新562条)
「隠れた瑕疵」があるという要件を、目的物の種類、品質等に関して「契約の内容に適合しない」ものに改める。

◎問題の所在-2(買主の権利の期間制限)
瑕疵担保責任の追及は、買主が瑕疵を知ってから1年以内の権利行使が必要(履行済みと考えている売主の保護)とされているが、買主の負担が重すぎるのではないか。(現570条、566条)
※「権利行使」の意味
判例は、「裁判上の権利行使をする必要はないが、少なくとも売主に対し、具体的に瑕疵の内容とそれに基づく損害賠償請求をする旨を表明し、請求する損害額の算定の根拠を示すなどして、売主の担保責任を問う意思を明確に告げる必要がある。」としている。
■ 改正法の内容
買主は、契約に適合しないことを知ってから1年以内にその旨の通知が必要(新566条)
※「通知」としては、不適合の種類やおおよその範囲を通知することを想定
※別途、消滅時効に関する規律の適用があることに注意が必要。

(Ⅳ)債権その他の部分
①委任契約に関する改正民法
基本的に内容変化なく、現行民法における委任の実務を維持
現行民法の委任契約に関する条文は以下の14条で構成され、そのうち648条、651条で一部規定改正があり、644条の2及び648条の2の2条文が新設されました。
643条(委任) 644条(受任者の注意義務) 645条(受任者による報告) 646条(受任者による受取物の引渡し等) 647条(受任者の金銭の消費についての責任) 648条(受任者の報酬-1部規定改正) 649条(受任者による費用の前払請求) 650条(受任者による費用等の償還請求等) 651条(委任の解除-1部規定改正) 652条(委任の解除の効力) 653条(委任の終了事由) 654条(委任の終了後の処分) 655条(委任の終了の対抗要件) 656条(準委任)
新設条文: 644条の2(復受任者の選任等)、648条の2(成果等に対する報酬)

②区分所有法 委任規定の準用
区分所有法第28条(委任の規定の準用) この法律及び規約に定めるもののほか、管理者の権利義務は、委任に関する規定に従う。

このコラムは以下の資料を引用しました。
【参考資料】
法務省民事局 『民法(債権関係)の改正に関する説明資料』 -主な改正事項-

<NPO法人 埼玉マンション管理支援センター>

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