マンション管理コラムColumn

建物の不具合

第8回:住戸内排水管の老朽化のため漏水事故が発生

第8回:住戸内排水管の老朽化のため漏水事故が発生

築30年のマンションです。先日住戸内(専有部分)の排水管からの漏水事故が発生し、下の階の方が損害を受けました。幸い、漏水させた住戸の方がすぐに謝り、損害を補償したため、大きな騒ぎにはなりませんでした。しかし、当マンションの築年数を考えると同じような事故が再び発生する可能性は高いものと思われます。
住戸内排水管の管理は各居住者の責任で行うものではありますが、こういった事故や、それを原因とするトラブルの発生を防ぐために、管理組合として何か取り組めることはあるでしょうか?


【NPO埼玉マンション管理支援センターの回答】

築33年のAマンションでは、築24年頃から水漏れ事故が発生し始めました。

初めは、1階の天井からの漏水でした。原因を調べるために2階の排水管を見てみましたが、排水管自体には異常はなく、水は更にその上から排水管を伝わって落ちてきていることがわかりました。そこで、3階も調べてみましたが、ここの排水管自体にも異常はありません。更に調べていって、最終的に、4階の排水管の接続部分に開いていた小指ほどの穴が原因だということがわかりました。つまり、4階で発生した漏水が1階に被害を及ぼしていたのです。

この際の調査は、各階住戸のキッチンのガス台をはずし、壁コンクリートを壊して、パイプシャフト内の排水管を調べるという大掛かりなものでしたが、費用は、組合で掛けていた保険から支払うことができました。

その後、短期間のうちに風呂場が原因の漏水事故が数箇所で発生し、さらにはメーターボックスからの漏水、給湯器からの漏水と続きました。一番ひどかったのは、居住者が外出中に起こった洗濯機からの漏水事故でした。その一件だけで、復旧工事・工事中の仮住居費・家財損害などに合計327万円が必要となってしまいました。しかし、これら費用も、すべて保険でカバーできました。

Aマンションの理事長は、保険を掛けていて良かったと言っています。管理組合でまず対処すべきは損害保険に加入しておくことであるのは間違いありません。

しかし、この事例のように、古いマンションでは次から次へと漏水トラブルが起こる可能性が高くなります。その都度応急処置で済ませても、またいつ同じトラブルが起こるかわかりません。Aマンションでも、3年前から水廻り設備の更新工事を始めたそうです。

古いマンションでの水廻り設備の更新工事で問題になりやすいのは、給排水管の設置場所を変更するかどうかです。古いマンションの多くは、給排水管がコンクリートに直に埋め込まれていたりします。また、そうでなくても、パイプスペースがせまく、新しい給排水管を設ける場所がないことも多いです。更に、給排水管を交換するために内装を壊す必要が生じることもあります。これらの理由から、古い給排水管はそのままにして、別の場所に新しい給排水管を設置しなければならないことも少なくはありません。水廻りのトラブルが多くなってきたマンションの管理組合は、長期修繕計画を見直すなど、早めに対策を考慮しておく必要があるでしょう。

 


【NPO法人匠リニューアル技術支援協会埼玉支部の回答】

マンションの住戸内(専有部)の排水配管は、区分所有法では個人の資産とされ、管理組合の責任範囲外です。しかし、排水配管は、住戸内排水配管と共用部分排水配管とがひとつになって初めて排水設備としての機能を果たすものです。また、個人の資産といわれても、部屋の床下にある排水配管を個人で管理することは現実問題として難しいことです。

管理組合によっては、契約する損害保険の特約で、住戸内の漏水事故についても対応できるようにしているところもあります。しかし、漏水事故を実際に起こさないことが一番大切です。そのためには、管理組合として、排水配管の状態を調べることが必要です。

調査のポイントは、①劣化の状況(残存余命はどのくらいか)、②不具合原因箇所の特定(漏水原因は「限定的な箇所」か「排水配管全体としての傾向」か)です。なお、この調査は客観的な評価ができる者に依頼し、「工事を受注するための調査」にさせないようにしましょう。

調査後は、その結果に応じて、「劣化対策工事」又は「取替工事」について検討することになります。その際、特に「取替工事」で問題になるのは、排水配管の置かれている「位置」です。排水配管は、いずれも床下や水廻り設備付近の壁の中に隠すように設置されていますので、排水配管の「取替工事」では、各部屋の床を剥がし、壁を壊して、配管を入れ替えることになります。すべての床を剥がすわけではありませんが、一般的には、台所流し台・洗面台・浴室・洗濯機排水口・トイレと、最低5箇所は該当しますから、かなりの広さです。このため、多くの場合、排水配管の取替自体より、床や壁の解体・復旧の内装工事のほうに費用がかかります。

これだけの工事を室内ですること、また、共用部分排水配管の一部は住戸内にあることを考えると、排水配管の工事は、住戸内・外を一括して、管理組合の責任で行ったほうがよいでしょう。

そのほか、管理組合として取り組むべきことは、住戸内のリフォーム工事への対策です。住戸内リフォームをする際に住戸内の配管類も更新してもらえれば、費用の節約になります。壁紙の張替えや床のフローリング化などを行う時は、必ずその部分の配管を新しく取り替えることをルールとする「住戸内リフォーム工事の指針」を作成しておくことは有効です。

いずれも即効性はありませんが、マンションの排水配管設備の維持管理には大切なことです。時間をかけてじっくりと取組りみましょう。

 


【社団法人埼玉建築士会の回答】

築後30年の間、少なくとも排水管の洗浄処理はされていると思いますが、一度も改修を行っていない場合、マンション全体の排水管が、漏水事故を起こしたものと同じような状態であると考えられます。30年くらい前の設計では、排水管は下階の天井裏に設置されていることが多く、今後、天井から排水が漏れるという事故が多発する可能性が高いと思われます。住戸内の管理は各区分所有者の責任ではありますが、配管類については、個々の対応ではなかなか難しい面があります。これについては管理組合として取組んだ方がよいでしょう。

まずは、事故の原因を調べることが必要です。漏水事故の原因としては、配管本体の亀裂や、配管内の汚れによる接合部のはがれなどが想定されます。実際に事故を起こした現場の写真を調べるとともに、組合員に協力してもらい、住戸内の床や天井の一部を解体して配管の状態を調べる「サンプル調査」を行いましょう。

サンプル調査の結果がよくなければ、その結果を組合員に説明した上で、全住戸の調査を実施する必要があります。そして全住戸調査の結果をもとに、改修・取替えなど、具体的な対応策を検討することとなります。

実際に工事を行う場合、排水配管系統全体のことを考えれば、住戸内の配管だけでなく、パイプスペース内などにある共用部分にあたる配管についても施工する必要があります。共用部分の配管工事中は、多くの住戸で排水設備が使えなくなりますので、これに協力してもらえるよう各組合員にしっかりと周知するのも管理組合の大切な役割です。

なお、今回の話は排水配管についてですが、給水配管も劣化が進んでいる可能性があります。特に、蛇口から赤水が出るなどの症状がある場合、給水配管からの漏水事故が発生する可能性もあります。せっかく調査や改修を実施するのであれば、排水配管のみにとどまらず、配管類すべてについて調べておいた方がよいと思います。

また、配管系統全体を考慮した調査や改修は、設備工事関係のみを扱う業者でなく、建築工事全般を取り扱う業者に依頼したほうがよいでしょう。

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