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第55回:修繕積立金の不足について

第55回:修繕積立金の不足について

【設問】
マンションの高経年化に並行し、居住者も高齢化する中、修繕積立金の徴収額を上げようとしても、金銭的負担から難しく、問題が改善しないというケースは全国的に多いと考える。こういったマンションへの解決策や、このような状態に陥らないための対策についてご教示頂きたい。

【回答団体】
・NPO 埼玉県マンション管理組合ネットワーク
・NPO日本住宅管理組合協議会

 


【NPO 埼玉県マンション管理組合ネットワーク】

1.国土交通省の令和5年度マンション総合調査にて、全国のマンション管理組合4270管理組合を対象に1589件(回収率37.2%)調査した処、修繕積立金について、513件の32.3.%で修繕積立金が不足していました。(2023年10月国交省調べ)新築時から30年間(築30年までの間)に必要な修繕工事費の総額を、30年均等で積み立てた場合に必要となる毎月の積立金額を試算したところ、20階建て未満のマンションでは1平方メートルあたり月額170円~235円、20階建て以上では同240円を目安としています。 積立金は、当初は低く設定し、段階的に引き上げていく「段階増額積立」と、原則、計画当初の設定額で一律に徴収する「均等積立」があります。

2.マンションを分譲する際に、当初の徴収額を低く抑えることで入居者を増やしたい業者側の思惑もあるとみられます。また、徴収額を引き上げる場合には住民が参加する総会での議決が必要となりますが、負担が増加することから合意形成が難しいこともあります。
マンションに住み続け資産価値を維持していくためには管理組合で今後の資金不足を防ぐため、住民間で時間をかけて問題意識を共有することが大切です。

3.長期修繕計画は30年先までの計画修繕ですが、その先40年先までの修繕計画を作り直して必要な費用を算出したうえで、「修繕積立金」を段階的に値上げする方法もあります。
また、管理会社と委託契約をしている場合、「国土交通省指針では、12年~15年が大規模修繕サイクルなので、御管理組合はそろそろ、その時期です。との提案がなされますが、修繕は管理組合自体が決める事です。今の時代は、18年と言うサイクルを提唱している大手マンション管理会社もあります。
管理会社の収益目的のために「工事」の提案がなされても、これを真に受けず「参考程度に聞いておきます。」に留めて置けば良いでしょう。

4.修繕サイクルを伸ばすことにより、積立金がストックされ、将来的な資金計画も楽になります。仮に、積立金が工事見積額に達していたとしても積立金が0円となる事は避けるべきです。それは、「いつ関東直下型地震が来てもおかしくない。」と言われている地震が来たとき、大規模修繕が終わり、直後大きな地震が来て、外壁にクラックが入ったなら、また直ぐに補修しなければならなくなります。
管理組合としては、いざと言う時にも資金を備えるべきで、毎月支払う「管理費」の負担を抑え、年度末には管理費会計(一般会計)の余剰金を修繕積立金(特別会計)に計上できる方針を示し、住民が積立金や修繕工事への関心を持って貰うことが必要です。

5.マンションの資産価値を維持して行くためには、住民間で時間をかけて問題意識を共有し、建設的な計画を促すための目安を設定が大切です。そうすることにより積立金を見直すきっかけになります。それぞれのマンションで事情は異なるので、まずは住民側が自分のマンションに関心を持ち現状をしっかり理解することが大事です。


【NPO日本住宅管理組合協議会】

マンションの長寿命化とそれを前提にした管理のあり方を前提に考えることが必要です。計画修繕はもちろん、建物や設備等を日常的に点検し、適時・適切に修繕や改修を行うことでマンションの長寿命化につながります。それには、必要な資金の確保が大前提となります。もちろん不要なことは省き、必要なことは何なのか、また、当該マンションの居住価値を高めるために必須なのはなにか。そのためには組合員に対するアンケートが有効です。その上で、みんなで話し合いを重ねることが大切です。

そのような情報を理事会だけがもつのではなく、組合員全体に知ってもらうこと。管理組合の実態はもちろん、あるべき姿を組合員に提供して共有することで理解が深まります。問題を明らかにし、できるだけ早期に対応することこそが、よい解決策を見出す大元です。

よくあるのは、修繕積立金を低く抑えることだけを是とし、長期修繕計画の見直しを適切に行わずに、資金不足に陥ってしまい、大規模修繕工事で必要な修繕ができず、貯まっている積立金に合わせた工事内容にせざるを得ないということです。
もちろん、不要な工事をやる必要はありませんが、やっておかなければならない工事はありますから、まずは長期修繕計画の見直しを数年ごとに行うこと。そのための委員会を常設することからはじめたいものです。

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