マンション管理コラムColumn
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管理会社等
第57回:管理委託料の値上げを要求された。どうすれば良いか
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【設問】
高い管理委託料を払っているのに、何も対応してくれない。そんな中値上げを要求された。物価高の時代やむを得ないと思うが、値上げをするならきちんと業務を行って貰いたい。しかし、対応は後手後手になっている。どうしたら良いか。
【回答団体】
・NPO 埼玉県マンション管理組合ネットワーク
・NPO日本住宅管理組合協議会
【NPO 埼玉県マンション管理組合ネットワーク】
1.諸物価高の時代であり、人件費も当然に値上げされ、これに伴い様々なコストの管理費用の増加が起きています。管理会社からの値上げ通知に対してどのように対処すればよいでしょうか。管理会社にとっても、継続的に適切なサービスを提供するためには、利益を確保することが不可欠です。管理会社からの通知には、値上げの詳細な理由や増額幅が記載されています。
その内容が合理的かどうかを確認し、他のマンションと比べて管理全般につきどの程度の差があるかも調査することも重要です。
例えば、清掃員の契約時間を短縮し、隔日勤務やゴミ出しの日のみ等に契約を変更など交渉の余地があるのであれば、値上げ幅を押さえられるかもしれません。
2.次に、他の管理会社と比較検討することを検討してください。管理会社が値上げを行う場合、競合他社の見積もりを取ることで、今の管理会社が適切な料金を提示しているのかを判断することができます。競争ある市場では、他の会社がより良い条件を提示している場合もあります。複数の管理会社から見積もりを取ることで、今の管理会社の値上げが妥当かどうかを 冷静に判断できるでしょう。管理組合としての最終的な判断は、「値上げを受け入れるか、管理会社を変更するか」という選択に迫られます。値上げが適切であると判断した場合は、そのまま管理会社との契約を継続するのが妥当でしょう。
3.管理会社変更の場合、現在の管理会社が提供するサービスに不満がある場合、新しい管理会社に切り替えることで、管理費の削減や、サービスの質が向上することが期待できます。
新しい管理会社は、契約を獲得するために競争力のある条件を提示することが多いため、管理組合にとって有利な契約を結べる可能性があります。また、新しい視点での管理業務の改善が期待できる点もメリットです。
4.管理組合が自ら運営を行う
管理会社とは管理委託契約せずに、管理組合が主体となって運営を行うことで、コスト削減や効率化が期待できます。設備点検を管理組合が直接契約することで、中間マージンを省くことができ、コストを抑えることが可能です。
5.管理組合が主体となることで、住民間のコミュニケーションが活発化し、マンション全体の運営が円滑に進むようになるでしょう。管理組合が主体となる運営を行う際には、住民全体の協力が不可欠です。大きな戸数のマンションでは、理事会の他、事務局を設置し、組合員の中から事務担当者を募り、報酬を支払い、運営を任せる組合も存在します。管理組合が主体となる管理運営の未来は、住民全体が協力し合う事で、絆が深まりコミュニティの形成に繋がります。
6.管理会社を利用しない場合でも、特定の業務についてはプロフェッショナルの力を借りることで、より効率的に運営を行うことができます。設備のメンテナンスや法務的なアドバイスを外部専門家に依頼することで、リスクを最小限に抑えつつ、効率的な運営を実現することが可能です。住民全体の意見を反映し、透明性のあるプロセスで進めることが求められます。
最終的には、自分たちの住むマンションなので、専有部分に居住する方々の「生命、身体、財産は自分達で守る。」と言う意識改革も芽生えるでしょう。
【NPO日本住宅管理組合協議会】
この数年来、管理会社は管理委託料の値上げを要求することが目立つようになりました。それまでは管理組合の剛腕な理事長によって「叩けば安くなる」というような交渉が生きていましたが、それが行き詰まっていることを示しています。
「合理的な値付け」がよくわからないのが実態ですが、逆に値上げを認めないと、管理会社は逃げていくことになりかねません。今や管理会社のほうが管理をしてあげているとばかりの勢いになっています。
これを少しでも打開するには、管理会社との委託契約書をよく読むことです。加えて、そのとおり業務が遂行されているかのチェック(監査)が求められているのです。
ある管理組合では、管理会社との委託契約書をはじめ、その業務などの監査をNPO法人に依頼しています。通帳と残高証明書はもちろん小口現金、理事長印、銀行印、保守点検台帳、共用部営繕工事実施記録、管理日誌、月次収支報告書、理事会・総会支援業務書対照表、計画修繕工事契約書・工事完了報告書、貸借対照表、未納金明細・督促状況書類、備品購入管理台帳、総勘定元帳、仕訳伝票、日常修繕費管理台帳などを2日間に渡って点検します。
この、管理会社に対する牽制とも言える作業は報告書を書くのに1週間以上かかるなど大掛かりな取り組みとなります。
この点検の報告書は総会議案書に掲載されるので管理会社の担当者は緊張しますし、点検する側も抜け漏れがないよう、慎重に書類を点検し、不明点は担当者や管理員、場合によっては管理会社の会計担当者に説明を求めます。
これによって過去にやるべき排水管に関する工事が期中に実施していないのに支払ったことが判明するなど、いくつかの問題も見つかっています。
契約通りに業務を遂行し、それに対して約束通りに支払うという、当たり前のことを双方が行うこと。このような緊張関係の欠如が安易な値上げや不誠実な対応につながっているのではないかと考えます。
管理組合は、緊張を生み出すための実効性のある監査などを通して管理会社を牽制してみてはいかがでしょうか。
相談などで多いのは、契約書どおりに業務を行なっていないとか、手抜きとも見られる行為。また、モーターの交換や消火器の交換などで2倍の見積書を平然と出すなど、不誠実な対応もあります。
管理組合は、自分達でできることは自分たちで行い、ムダな費用を管理会社にもたらさないようにするなどの取り組みも考える必要があると思います。
それでも費用が高いと思う場合は、他の管理会社から見積もりをとるなども必要になるかもしれません。