マンション管理コラムColumn

費用負担

第38回:不在区分所有者の管理費等の滞納について

第38回:不在区分所有者の管理費等の滞納について

当マンションは販売当初は、全員区分所有者が居住しておりましたが、築10年を過ぎた頃から、駅からの利便性も良いので賃貸化が進みはじめました。
現在50住戸のうち5住戸が賃貸されておりますがそのうちの2件が、管理費などの滞納をしております。1住戸はすでに50万円も滞納しており、現在支払い督促の手続きを進めております。もう1件は滞納が6か月分になると、3か月分の支払いがされますがまた3か月を滞納して同じようなことが繰り返されております。
今後も賃借化が進むと思われるので、不在区分所有者の管理費等の滞納を防止する良い方法があれば教えて下さい。

回答団体
【NPO埼玉県マンション管理支援センター】
【NPO埼管ネット】
【NPO日本受託管理組合協議会埼玉県支部】

【NPO埼玉マンション管理支援センターの回答】
一般的に、管理費や修繕積立金など(以降「管理費等」という)は、区分所有者が管理組合に納付するのが原則です。
管理組合が、管理会社に管理業務を委託している場合は、管理委託契約書・重要事項説明書に「管理会社の滞納督促についての概要」が記載されております。通常は、滞納後3か月間は管理会社が支払い遅延・滞納督促(以降滞納督促という。)を行い、その後は、管理組合が行うことになっています。
一方、自主管理の場合は、滞納が発生すると管理組合の理事長が直ちに督促手続きを取ることが重要です。

※1:一般的に、理事長が1年任期の管理組合では、何も手を打たないうち任期満了となりこれの繰り返しで、滞納が蓄積して行きます。
※2:管理費等の滞納は、支払い期限から5年で消滅時効になります。

区分所有者が賃貸に出す理由は、高齢化が進みその住戸を使用しない、投機・収入を目的として賃貸化などいろいろな理由があります。
不在区分所有者が管理費などを支払わなくなるのは、意図的に支払い遅延したり、途中から資金繰りが悪くなり遅延せざるを得なくなるなどいろいろな理由が考えられます。

一般的に居住区分所有者の管理費などの滞納に比べて不在区分所有者の滞納に関する問題解決には、多大な時間と手間が費やされます。
そのため、区分所有者が賃貸借契約を結ぶ時に管理費などの滞納に対する対策を講じておく必要があります。

例えば、管理規約や使用細則で、「代位支払い」や「連帯債務」の規定を条文化して、その手続きのための申請書類・契約様式などを作成しておく。

1:区分所有者と賃借人と管理組合理事長との三者で、「区分所有者が管理費などの支払いを滞納した場合、直接賃借人が払う」ような支払い代位の誓約書を結ぶ。
2:区分所有者と賃借人が連帯債務とする契約書などが考えられる。
3:また、区分所有者とその親族などを連帯債務者とすることも可能だと思います。

『滞納督促手順に関する参考文献』
(1):国土交通省の「標準管理規約」のコメント
「滞納管理費回収のためのフローチャート」
(2):マンション管理センターの
「管理費等の徴収及び滞納処理細則モデル」及びコメント
(3):管理会社の滞納督促手続き集
(4):マンション管理に関する専門雑誌
(5):最高裁判所の「ご存知ですか?簡易裁判所の少額訴訟」
(パンフレットなどは、各裁判所の民事部に有ります。書き方なども相談に乗ってくれます。)
(6):最高裁判所の「ご存知ですか?簡易裁判所の支払い督促」
(パンフレットなどは、各裁判所の民事部に有ります。書き方なども相談に乗ってくれます。)
(7):その他区分所有法第57条―第60条の訴訟については、専門家である弁護士に相談されることを
お薦め致します。

【NPO埼管ネットの回答】
Q)不在区分所有者の管理費等の滞納について
①支払督促手続中 ② 滞納が6ヶ月になると、3か月分は振込みにより支払うが、また、3か月分滞納発生の繰返しが続く。滞納防止方法は・・・?

A)
① 支払督促の手続申請が遅かったようにも思うが、継続して粛々と裁判上の手続(支払督促)を進行させ、債務名義を獲得し家賃差押等をし、早期に滞納金回収を図る。
② 不動産会社を介して、振込で3ヶ月分支払いをしている。→ 口座振替支払に移行させ、不動産会社を介さず、直接本人との取引を推進させる。その方が、振込手数料も削減でき、効率的である。(規約がどのようになっているかは不詳だが・・・)
また、この滞納者は、3か月分をまとめ(手数料節約?)、遅れ遅れであるが、支払うと云う、計画的悪意(知っていて滞納を繰り返す)者であるように理解せざるを得ない。
滞納防止方法としては、上記の者は、振込手数料を数ヶ月分纏めて支払い、節約する方であるから、遅延損害金や違約金についても敏感な筈である方なので、標準管理規約(第60条2項)に順じ、「管理組合は、滞納者に遅延損害金を徴収することができる」規定があれば、滞納の都度、滞納元金プラス遅延損害金と違約金を含め請求し、督促を諦めずに継続するよう請求すると効果的である。実務的には、大変だろうが、相手が相手だけに、極め細かな対応をせざるを得ないであろう。今後共、滞納金管理については、常に、ウオッチしつつ、諦めずに、回収に心掛けて欲しい。

【NPO日本住宅管理組合協議会埼玉県支部の回答】
「支払い督促の手続きを進めている」とのことですから、滞納を起こりにくくする管理組合の体質づくりについて説明します。
管理費等の納入は区分所有者の義務であり、それが大前提です。納入ということばを使いましたが、管理組合そのものが区分所有者によってつくられている団体ですから、自分たちが使う費用を自分たちが納め、自分たちで管理をするというのが原則の第一です。

A団地は数ヶ月の滞納が皆無
区分所有者が分譲マンションに住むための原則を理解することが第一ですが、約500戸、築**年のA団地では、うっかり滞納(口座への入金忘れなど)はあるものの、数ヶ月もの滞納はまったくありません。
A団地では、コミュニティを重視した施策を長く続けています。夏まつりでは神輿を担ぐクラブをつくり、数十人もの人々が渋い祭り半纏を身に纏い、祭りを盛り上げています。子ども神輿も人気があり、団地の周辺を練り歩きます。
管理組合の運営では、常設の委員会を理事会の下部組織に設置し、常に数年後を見据えた懸案事項について検討を重ね、答申をしています。定期的な居住者アンケートを実施してニーズを把握し、新しい提案などについての意見を募っており、それらの集計結果も速報しています。アンケートから得たことは大規模修繕、給排水管設備、エレベーター更新などの工事に活かされますから、アンケートの回収率も高まるなど、よい循環が出来上がっています。
逆にアンケートは実施するが、そのレスポンスもなければ、どのように活かされているのかが不明だと、次のアンケートへの回答は低下するでしょうし、管理組合への不信につながります。
Webサイトも委員会によって運営されており、規約等や理事会・総会で決まったことなどが常に確認できるようになっています。
区分所有者は、A団地のきめ細かい活動を見ることができ、運営への理解を深めることが可能ですから、管理組合の原則と運営の乖離がなく、自分たちの義務を意識することなく当然のように守るようになります。

B団地は 会議がコミュニティをつくりあげている
築30余年500戸ほどの公団分譲のB団地では、数ヶ月の滞納をするとすかさず掲示版に住戸番号と氏名が公表されます。これが大きな抑止になっているのか、大きな滞納はありません。団地の掲示板ですから、外部の私たちが用事があって団地内に入ると、それを目にすることもあるわけです。
この方法については、個人情報やプライバシーを問題にする管理組合もあるようですが、誰かが専制的に行うのではなく、みんなでつくり上げた方法であり、みんなで住むマンションだからこそのマナーとルールなのです。ちなみにB団地の規約や細則には滞納をした場合、掲示することを明記してはいません。この団地の不文律なのです。

B団地では、自治会総会と管理組合総会が同じ日に長時間開催されますが、熱心に議論を重ねていると言います。月一回の理事会などの会議はローカルエリアネットワークシステムによって映像を各住戸に配信しており、緊張の中で会議をする仕組みになっていることも、会議の質を高めると同時に、その内容を区分所有者が理解できるのです。

大切なのは管理組合は何事にも逃げないで、しっかりと対応すること。逃げれば、それを見ている区分所有者も逃げるようになります。つまり、滞納は言い訳をすれば済むかのように、逃げるのです。これは滞納者の詭弁なのですが、管理組合の体質によってはまかり通ってしまうのです。

管理組合はしっかりと原則を訴えたい
コミュニティは祭りのようなイベントのみではなく、管理組合としてもっとも重要なのは会議にあると考えられます。会議には総会、理事会、委員会など、目的によって役割も異なります。

一方、滞納者へは早め早めの対応が必須です。時間が経てば経つほど、滞納金額は膨らんでいき、納められなくなります。
滞納した瞬間にその旨を通知し、理事会にお呼びするなどの仕組みを作っておくことも必要です。

管理組合の活動・運営を日々発信しよう
管理組合の運営状況を常に発信し続けていることが、管理組合に対する理解促進につながります。それによって管理組合への参画意識が醸成されます。管理費等の納入の意味やその使途などの会計報告は月次で行い、滞納があったというだけではなく、どのような対応対策を実施しようとしているのかなども、報告する必要があります。
管理組合の目的を収斂すると、それはマンションのビジョンにたどり着きます。そこを押さえつつ、管理組合の運営(会議・防災・祭りなどのイベントも)を考えるようにすることで、区分所有者・居住者全体の理解が深まります。
滞納を滞納問題だけにとどめるのではなく、管理組合の原則などに依る考え方を打ち出すことで、問題の矮小化にならず、かつ問題を敷衍して考えることにつながります。

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