マンション管理コラムColumn

管理会社等

第61回談合問題について

第61回談合問題について

【設問】
談合問題について

【回答団体】
・NPO埼玉県マンション管理組合ネットワーク
・NPO日本住宅管理組合協議会

 


【NPO埼玉県マンション管理組合ネットワーク】

2025年3月4日に、マンションの大規模修繕工事に関連して談合の疑いが浮上し、公正取引委員会が「独占禁止法違反」(不当な取引制限)の容疑で工事会社に対する立ち入り検査を実施しました。独占禁止法の正式名称は「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」であり、その目的は公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的に自由に活動できる環境を整えることです。

自由経済社会では、公正かつ自由な競争を促進し、事業者が独立した判断で経済活動を行える状態を築くことで、一般消費者の利益を確保し、国民経済の健全な発展を目指しています。この法律は、企業が遵守すべきルールを定めています。市場メカニズムが適切に機能することで、事業者は自身の創意工夫によってより安価で優れた商品を提供し、消費者はニーズに合った商品を選ぶことができるようになります。このような競争を維持・促進する政策は「競争政策」と呼ばれています。

 

○マンションの管理に対する関心が重要

大規模修繕工事においては、専門知識を持たない住民に高額な工事費を請求する業者が存在するという指摘が以前からありました。専門知識のない住民にとって、適正な工事金額を見極めることは困難です。管理組合が委託した管理会社や設計監理会社の業者が行う見積もり合わせや入札では、工事業者が事前に受注業者や額を決定していた可能性があります。立ち入り検査が行われたのは、首都圏にあるマンション修繕を請け負う工事業者です。

管理組合が発注し、複数の会社の提案を比較検討する「見積もり合わせ」のケースが実施されていたためです。公正取引委員会が疑っているのは、独占禁止法第3条で禁止されている「不当な取引制限」に対する違反の「談合」です。

「談合」とは、事業者や業界団体の構成メンバーが相互に連絡を取り合い、競争を避けて価格を引き上げたり、リベートや割り戻しといった密約を交わすことを指します。

○大規模修繕工事を巡る談合の実態

大規模修繕工事では、管理組合に対する協力会社として、下請けの傘下会社数社が見積もりを提出するシステムが存在します。その後、最終的に工事を発注する工事会社を一社選定し、工事見積もりをコントロールして工事費をつり上げる手法が用いられることがあります。実際には、見せかけの入札を行い、根回しの優位性を持つ企業が工事を受注するシナリオに陥ります。工事を受注した後、設計コンサルタント会社に工事費の何パーセントかをリベートとして支払う流れです。

リベートは、紹介手数料やコンサルティング料など、様々な名目で行われ、すべてが管理組合が負担する工事費に含まれています。つまり、管理組合は知らず知らずのうちに大きな損失を被ることになりかねません。管理会社から「前回から12年経過しました。そろそろ大規模工事の時期です」と言われても、その情報を鵜呑みにせず、本当に今必要な工事なのか、先延ばしにしても影響はないかを再検討することが重要です。

長期修繕計画には「12年サイクルで実施」とされていますが、これは特に根拠のあるものではありません。国土交通省のコメントによれば、「大規模修繕の実施は、劣化状況に応じて管理組合が判断することが大切」であり、建物の劣化状況も地域や環境によって異なるため、ケースごとに修繕の時期を見極める必要があります。

○自主性・主体性・自立性が求められる時代

管理委託契約を締結している管理会社が修繕時期を決定することはできません。管理会社が提案してくるのは、結局のところ自社に工事案件の仕事を持ってくるためのものであると考えられます。本来、工事の時期、設計会社、施工会社は管理組合が決定するのが当然ですが、専門的な知識を持たない方が多いため、管理組合は管理会社の提案に従ってしまうことがしばしばあります。管理会社は委託を受けているため、設計コンサルタント業務も受け持つことを狙っていることがあります。そのため、管理会社が大規模修繕工事のコンサルタントを請け負うことは、管理組合にとって不利益な状況を引き起こす危険性があります。

○民法第108条の観点

民法第108条には、「同一の法律行為について、相手方の代理人として、または当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなされる。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない」と書かれています。

この観点から、大規模修繕コンサルタントを管理会社に任せることは、利益相反のリスクをはらんでいるといえます。コンサルタントは区分所有者の利益を最大化するために公正なアドバイスを提供する義務がありますが、管理会社や請負業者との関係性によってその公平性が損なわれる可能性があります。管理会社が工事のコンサルタントを行う場合、「設計コンサル契約」を締結する必要があります。さらに、設計コンサルタントも競争原理を働かせ、数社から見積もりを取得する必要があります。

この提案を行わずに工事を一方的に勧めることは、管理組合に不利益をもたらす温床となりかねません。したがって、透明性の確保と適切な情報開示を管理会社に求めることが重要です。


【NPO日本住宅管理組合協議会】

マンションにおける談合は、主に大規模修繕工事や給・排水管設備の改修工事など、多額な費用が必要な工事(修繕積立金)を狙って行われます。管理組合の理事や修繕委員に知識などがないことをいいことに、悪巧みをしてお金を狙うわけです。

○誰が談合を主導するのか
談合を主導するのは、設計事務所(設計コンサルタント)や管理会社などで、彼らは施工会社に対し談合に加わるよう求め、談合グループを形成します。そして彼らは、仕様設計が明らかになった適切である見積価格を不正に釣り上げます。
作為、捏造、やらせ、犯罪的不正行為であるとも言えます。それによって管理組合に提出された数社の施工会社の見積もりは、特定の一社の施工会社を除き、最初から割高な価格が設定され、管理組合は、そのなかの最低価格であるA社を選択(談合グループ内では、このA社をチャンピオンと呼びます。)するように仕組むわけです。ところが、その最低価格は本来の価格よりも上乗せされて設定されており、上乗せ分はA社経由で、談合を主導する設計事務所や管理会社に還流されることになります。これが談合の簡単な仕組みです。
不適切な設計コンサルタントや管理会社は、コンサルタント料を低く抑えた金額で見積もりを提出し、管理組合がそれを選択するように仕組みます。その後、前述のように施工会社からキックバックされるので、コンサルタント料は結局は高いものになるというわけです。
また、不適切コンサルタントの中には、管理組合との契約書に「施工会社を紹介する」といった内容を入れたりもしています。管理組合は「それは都合がよい」と、勘違いをするわけですが、紹介先の施工会社からキックバックをもらう算段なので、十分に気をつける必要があります。
本来の設計監理方式は施工と監理を分離し、仕様どおりに、かつ質の高い施工を行うことを重視しています。コンサルタントはそのための仕様設計及び工事監理を行うので、コンサルタント側が施工会社を紹介するといったことはあり得ないのです。
談合は、談合を主導する会社(個人の場合もある)と、そのたくらみに加担する施工会社によって成立します。したがって不適切なコンサルタントは、別の管理組合の大規模修繕工事でも同じように談合を主導し、次は別の施工会社B社がチャンピオンになるよう、談合グループ内から不満が出ないようコントロールし、談合をビジネスモデル化、商習慣化し、管理組合の修繕積立金を食い物にし続けるわけです。
先ほど、談合の成立は談合を主導する設計事務所や管理会社と、それに加担する施工会社によって成立すると述べましたが、もうひとつ管理組合の脇の甘さも、談合を助長している面があることに注意すべきだと思います。とは言え、管理組合が脇の甘さを払拭できるかはとても難しいことかもしれません。
大規模修繕工事に関する知識に乏しい管理組合は、多くの場合、管理会社にそれらを任せてしまいがちですが、これも談合を産む一つの要因になっています。「管理組合はおとなしい」と思われないよう、適切な知識の習得も必要です。不正行為によって管理組合は、大事な資金を騙し取られないための日頃の心構えと学習が大切です。

○設計コンサルタントの選定
設計監理コンサルタントの選定こそが明暗の分岐なので、信頼できるコンサルタントをみつけることが重要なポイントとなります。
そのためには、大規模など多額な費用が必要となる工事に備えて、信頼できる団体などが開催する勉強会などに参加し、信頼できるコンサルタント探しに汗を流したいところです。
管理会社からの情報は自社に都合のよい情報を伝える可能性があり、管理組合にとって不利益を被りかねないこともあるので注意が必要です。情報収集はバランスを意識して情報源を選択する必要があります。

○不適切設計コンサルタント問題への提言
「不適切設計コンサルタント問題への提言」 ― マンション改修業界の健全な発展のために ― として2016年にマンションリノベーション協会の第25号会報に、一般社団法人マンションリフォーム技術協会 個人会員一同が発表しました。これを受けて国交省は、関連団体等に対して適切な対応を求めるなどをしました。
不適切な行為を行ったコンサルタント会社は「不適切な行為は改めた」などと発表し、率いている組織などのwebサイトなどにも同様のことを載せています。しかし、不適切コンサルタントや管理会社は、さらに巧妙に管理組合を騙し続けています。

○「設計監理方式が談合の元凶」、は論点ずらし・問題のすり替え!
大規模修繕工事の際、設計コンサルタントを入れた「設計監理方式」が談合につながっているとする見方があります。今回の談合問題では、新聞社から管理組合をよく知るという評論家的な人までが、そのような見解を発信しています。
しかしこれは論点をずらし、問題のすり替えであると言えます。談合は、大規模修繕工事をうまく運ぶための極めて合理的な設計監理方式を悪用した犯罪的行為です。談合を主導する会社や個人の犯罪的行為そのものに対して罰を与えることこそが必要なのです。
談合で問題なのは、大規模修繕工事の際の設計監理方式を悪用している人や会社です。問題のすりかえには注意が必要です。

設計監理方式は、次のようなメリットがあります。
①大規模修繕に必要な工事範囲・内容や、工事の優先順位等を客観的に判断してもらうことができる。
②技術面や経済面における的確な修繕方法を明示してもらうことができる。
③大規模修繕のための設計書(仕様 spec.)を作成してもらうことで、公正で公平に施工会社選定ができる。また、さまざまなアドバイスが期待できる。
工事の質を確保するための、管理組合の立場に立った適切な工事監理をしてもらうことができる。

管理組合の運営は管理組合が主体であるという認識と行動が必要であり、大規模修繕工事も管理組合が能動的に取り組むべきことです。そうしたもとで設計コンサルタントとしっかりと協議を行う必要があります。デメリットと言えるのかは別ですが、それが面倒だと考える理事さんもいます。しかし、一見面倒と感じるかもしれませんが、それこそがマンションの居住価値向上に欠かせない大切な時間であり、大切な修繕積立金を生かし、よりよい工事を行うための必須の時間でもあるのです。

○長期修繕計画とマンションのビジョンの策定
修繕積立金の根拠は長期修繕計画によって導き出されます。したがって長期修繕計画を適時・適切に見直すことが必要となります。その際できれば、マンションのビジョン(あるべき姿・将来展望)を多くの区分所有者によって策定すること。それを長期修繕計画の土台にするわけです。長期修繕計画を事務的・機械的に策定している例を見かけますが、それらはビジョンがないという事情が伺えます。
修繕積立金を大切に使うためには、先ほどから述べていますが、適切な設計監理コンサルタントと施工会社を選ぶことに尽きます。面倒だからといって管理会社などに任せず、余分な支出を避けること。一見、親切そうな管理会社のアドバイスは、マンションにとって本当に必要なのか、見極めることが必要です。このあたりが、多くの管理組合で取り組む必要があるのではないかと感じます。
繰り返しますが、管理組合は主体性と自立した管理が重要です。つまり、「自ら判断し」「自ら行い」「自ら責任をとる」ことを念頭に運営していくことをお勧めします。

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